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恋物語  作者: まきまき
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花火 後編

僕があの子に初めてあったときの印象は最悪だった。

こんな生意気な女がいるなんて…と呆れてしまうくらい最悪。

そのうえ、何だか自分と似ている。


だから、あの子を紹介した友達にも

「あの女は最悪だから止めろ」

と釘を刺した。


何であんな女を好きになるのか僕は意味が分からなかったし、なぜ友達が僕と会うときにあの子を連れてくるのか?なぜあの子をあそこまで美化して言えるのかも不思議だった。


僕が高校時代から付き合っていた彼女と別れた時に友達が、遊びに付き合ってくれる事になったんだけど、その時もあの子はいつもみたいに一緒に来ていた。

僕は彼女と別れたのが悲しくて、友達に愚痴っていたら

「大丈夫だよ。きっと彼女戻って来るから。それから、彼女の事を悪く言わないでよ。そうやって彼女の事を悪く言うのってその彼女と付き合っていた自分も悪く言うみたいだよ」

とあの子は僕に言った。


その言葉で僕のあの子に対する印象が180度変わったなんて言ったら単純なのかな?


あの子が席を外した時に友達が

「あの子連れてきてゴメンな。でも、今日はあの子が提案したんだよ。楽しく遊んで私の事にムカついてそれでちょっとでも気分が晴れればいいよねって言ったんだよ」

と言った。


自分が嫌われてるのを知っていて、その自分を犠牲にして僕の気分を紛らわそうなんて人間普通はいないよなって思った。


その日、僕とあの子は初めて連絡先を交換してたまに連絡を取るようになった。


相変わらず、売り言葉に買い言葉みたいな会話ばかりだったけど、僕にとっては男女の意識をせずにいろんな話が出来る唯一の人になった。


そして、僕は友達に申し訳ないと思いながらも理由をつけて内緒で二人で会うことも増えた。


けど、あの子と一緒の大学に通う友達に二人で会ったり連絡取ってるのがバレるのに時間はかからなかった。


「二人で会ったりしてるみたいだけど、二人は付き合ってるの?」

と友達が聞いてきたけど

「付き合ってないよ」

と僕はこたえた。

「本当?」

と聞く友達に

「本当だよ。でもゴメン。俺もあの子好きになった。だから、お前に負けたくない」

と僕は友達に言ったら

「俺も負けないよ」

と真剣な顔で言った。


それからしばらくして僕は車を買った。

仲間とドライブに行くときあの子に

「乗りなよ」

と誘った。

実はこれ、遠回しな告白だった。

あの子にずっと

「僕の助手席には彼女以外乗せない」

って言っていたから、助手席に乗せるってことはあの子の事が好きだって意味だった事に気づいて欲しかったんだ。

あの子は少し戸惑った顔したけど、すぐに助手席に乗ってくれた。


それから少したわいのない話をしたんだけど、僕はこの狭い空間で二人でいること、もしかしたらあの子も僕の事を好きなのかもしれないって気持ち、僕が好きだって言ったらどうするかな?とか考えていた。

そんな時にラジオから僕の最近好きな曲が流れてきた。

この曲は、女友達の事がスゴく好きなんだけどその子は自分の事を友達としかみてないから寂しい、もし自分が好きだって言ったらどうするかな?って歌詞なんだけど、今の僕と同じ感じがして友達に

「俺の事を歌ってるみたいだ。この気持ち分かるなぁ」

といっていた曲だったから、

「この歌詞の気持ち分かるなぁ」

ってあの子が突然言ったのにはスゴく驚いた。


あの子も同じ気持ち?

もしかして、僕の事を好きなのかも?

そう思って最大の勇気を振り絞って次の日に行われる花火大会に誘ったんだけど、

「地元の友達と行くから」

と言われたうえに、

「元カノ誘ってみたら?」

と言われてしまった。


あの子は僕の事を友達以上には見てない。


そう思い知った。


次の日、僕は元カノを誘う訳もなく、遠くから聞こえる花火の音を部屋で聞いていた。


あの子は地元の友達と言いながらも、本当はアイツと…いや、もしかしたら元カレが今も地元の友達だって言っていたから、ソイツと一緒に行って寄りが戻ったのかもしれないなんて事を考えていた。


数日後、偶然元カノに会った。

彼女は僕とやり直したいと泣いた。


僕は…ズルいことにあの子を忘れるために彼女と寄りを戻した。


けど、あの子の事が忘れられる訳もなく、結局僕はズルいことも続けられず彼女とはすぐに別れた。


彼女はいつでも待ってるから…って僕に言った。


それから僕は、友達以上に見てもらうために今まで以上にあの子と会う機会を増やした。


映画に食事にドライブ、時には何泊もあの子の家に泊まり込んでゲームした時もあった。


多分、周りの人には僕とあの子は付き合っているように見えていたと思う。

実際は違ってもそう思われるのは好都合だった。

だって、彼氏のいる女に男は寄ってこないだろ?


でも、泊まり込んでゲームしてる時はツラい事もあった。

同じ部屋にいて衣食住をともにしてるのに、結局僕はあの子の手に触れることさえ出来なかった。


もしもここで欲を出して嫌われたら、二度とあの子と二人では会えない、そう思うと僕は我慢するしかなかった。


そんな生活をしているのを大学の友達に話したら、

「そりゃ、お前に気があるんだよ。そうじゃなきゃ部屋に泊まらせないだろ?」

と言われた。

「告白する勇気ないなら、女の子紹介してとか聞いてみて様子みてみたら?それで紹介出来ないって言われたら、じゃ俺と付き合ってよって言えばいいじゃん。もしも分かったって言われたら…仕方ないよ。でも、二人の友達関係は壊れないだろ?」

とソイツは笑った。


だから、僕はソイツの言う通りやってみたんだけど結局女の子紹介してもらう代わりに男を紹介する事になった。


僕は当然だけど、あの子も上手くいかなくて紹介はその一度きりで終わった。


年度末でテストにレポートと忙しくてあの子と連絡取らない日々が続いたある日、友達からあの子に彼氏が出来たと聞いた。

友達は泣きながら

「あの人なら彼氏になっても仕方ないよ。あれくらい好い人じゃないとあの子の彼氏にはなれないんだ」

と言った。

友達の話では、彼氏は同じ大学の先輩で法学部でテニスやってて顔も男から見てもかっこよくて、性格も穏やかで優しくて非の付け所がないぐらい好い人で、でもあの子と付き合うまでモテモテだったけど彼女作らなかった人らしい。


「あの子、騙されてるんじゃないの?」

なんて僕が言うと

「それはないよ。先輩から告白したらしいし」

と友達はまた泣き出した。



僕はまたズルいことにを始めた。

元カノの心を利用して会う事が増えてきた。

寂しさを埋めるために、元カノと肌を重ねる事も増えた。

でも、寂しさは埋まらないままだった。


しばらくしてあの子が彼氏と別れたと聞いて、僕はあの子に会いに行った。


別れた事がショックだったんだろうか?食事もキチンとしてないのか痩せてずいぶんと小さくなっていた。

あまりの姿に何も出来ず、僕は普通に話をして帰ってきた。


次の日、元カノに呼び出されて僕は元カノと会った。

「私は浮気したし、言える立場じゃないけどもう限界。もうあの子には会わないで」

と元カノは泣き出した。


僕は彼女にこんなにも我慢させていたのか、自分のしてきたズルいことがこんなにもツラい思いをさせてきたのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


そして、僕はあの子と会うことをやめて彼女と向き合うようになった。

彼女は小さな身体いっぱいで僕を愛してると伝えてくれた。

優しく包みこんでくれた。


その愛情と優しさを持つ彼女の事をまた好きになった。

そして、出来ることなら一生彼女の側で暮らしたいと思うようになった。


半年くらいして、僕は一度だけあの子と会った。

きっと僕はあの子に告白しないといつまでも心の中にあの子がいるまま生きるような気がしたから、区切りをつけようと思いを二人で会った。

僕はあの子に好きだった事を伝えた。

すると、あの子も僕の事をずっと好きだったと言った。

そして、お互いに似すぎてすれ違うのも一緒になった話をして、もしもあの夜に二人で花火を見ていたらどうなっていたかな?なんて話もした。

けど、あの子は肝心な事は気付かないのに他の事は言わなくても分かってくれる人だから、彼女と寄りを戻した事も彼女を愛してる事も理解してくれた。


そして、最初で最後のキスをして僕たちは別れた。


数年後、僕は彼女と結婚して今は可愛い子供たちに囲まれて暮らしている。


でも時々思う。

今、あの子は幸せなのか?

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