表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/77

72

凛は零次に銃を向けたまま、動けなくなっていた。

今、2人はお互いに何も出来ない状態だ。

凛は何か企んでいるであろう零次をイレイザーの本拠地に入れる事も出来なければ、当然銃で撃つ訳にもいかない。

反対に零次は凛と共にイレイザーの本拠地に入る必要があり、この場から動く気はないようである。

ただ凛には考えがあった。

このまま時間が経過すれば、そのうちイレイザーの者が誰か出てくるはずだ。

駐車場にいるという健斗が来てくれる可能性もある。

そうして来た者と協力すれば、零次に何もさせず、捕まえる事が出来るはずだ。

そんな事を考えていた時、突然ゲートが閉まり始める。

「……何なの?」

「あれ?」

一瞬、零次が何かしたのかと思ったが、そうではないようだった。

「何か起こってるみたいだね」

零次もこの事態を予測していなかったようで驚いている様子だ。

ゲートは少しずつ下がっていき、既にしゃがまなければ通過出来ない程だ。

その時、スライディングをするようにしてゲートの下を滑って出てきた者がいた。

そのまますぐに立ち上がり、その者が司である事がわかった。

「司……?」

その時、零次は司と距離を詰めると蹴りを繰り出す。

司は体を横にするようにして蹴りを避けると同時に前に出した方の掌を零次の胸に当て、吹っ飛ばした。

「動かないで!」

凛は司に銃を向けた。

そうした理由について凛もわかっていない。

零次の話はまだ半信半疑だ。

しかし、凛は司に恐怖を覚え、思わず銃を向けてしまったのだ。

司はゆっくりと凛の方を向いた。

「……記憶は戻ったの?」

質問に答える事なく、司は突進するように近付いてきた。

そして気付いた時には持っていたはずの銃が司の手に握られていた。

「凛ちゃん、どいて!」

零次はいつの間にかバイクに乗り、司を跳ね飛ばそうと近付いてきていた。

司は軽く横へ跳ぶようにして避けると、そのまま行ってしまった。

「凛ちゃん、後ろに乗って! 多分、ここ爆発するよ!」

「え?」

零次が何を言っているのか凛にはわからなかった。

「ここに自爆装置があるって噂を聞いてたんだけど、多分それが起動してるよ」

「そんなの……」

「とにかく行くよ。ヘルメット被って」

零次からヘルメットを投げ渡され、凛は被った。

「聞こえるよね?」

ヘルメットにはイヤホンとマイクが付いているようで、ヘルメットを被った零次と会話が出来るようになっていた。

「ええ、聞こえるわよ」

「じゃあ、乗って」

状況が掴めていないため、少しだけ迷いつつも凛は零次に従い、バイクの後ろに乗った。

それから少しして零次はバイクを走らせる。

「司もバイクで行くみたいだね」

誰かからバイクの鍵を盗んだのか、司もバイクに乗り、走り出していた。

その時、凛は健斗の姿を見つける。

「逃げて!」

凛の叫び声を聞き、健斗は何か起こっていると感じたようで車に乗ると凛達の後ろについた。

そこで凛は振り返る。

バイクや車の音に紛れ、別の音を聞いた気がしたからだ。

そして迫り来る炎を確認した。

「零次!」

「もう出口だから大丈夫!」

凛は前に顔を戻し、出口を確認する。

司は地下駐車場を出ると左折した。

当然、零次もそれを追って左折する。

同時に出入り口から激しく炎が噴き出し、辺りの建物を破壊した。

凛はまた振り返り、健斗が乗る車がそれに巻き込まれ、横転するのを見た。

「今は構ってる暇がねえから、行くよ」

健斗の無事は確認出来なかったが、今は零次の言う通り、先を急ぐ必要がある。

そのため、凛はまた前を向いた。

「pHが持ってたイレイザーの機密情報はこれだったみたいだね。イレイザーの排除が目的だったんだよ」

零次はいつものふざけているかのような話し方ではなく、真剣な様子だった。

「……今これをしたのはpHの意思なの? それとも司の意思なの?」

「さあ、どっちだろうね。どっちにしろ司にシヴァウイルスのデータを渡す訳にはいかねえかな」

その考えは凛も持っている。

「司は何処に向かってるの?」

「それについて色々と考えてみたんだけど、凛ちゃんの父さんは凛ちゃんにウイルスのデータを渡そうとしてたって事はねえかな?」

零次の質問を受け、凛は考えた。

とはいえ、そんなものを預かった記憶は当然ない。

父との記憶と言えば、一緒にスターダストタワーへ行ったぐらいだ。

「あ……」

そこで凛は気付いた。

「1年前、スターダストタワーに父と一緒に行ったの」

「そこって……」

「それで7月7日だけ利用出来るっていう金庫に2人の宝物を入れたのよ」

「何で今までそれを話してくれなかったの!?」

「司達には話したんだけど……」

凛は父の事を思い出す度に悲しい気持ちになってしまっていた。

そのため、必要以上に父の事を思い出さないよう努めていた。

しかし、今考えてみればそうした凛の行動は間違っていたといえる。

「確かに司はスターダストタワーの方に向かってるよ」

「絶対に止めないと……」

「わかってる、そのつもりだよ」

凛はここに来てやっと零次の話を信じ始めていた。

司は裏の世界で死神と呼ばれる存在だ。

そして凛の父である高野俊之を殺した犯人だ。

凛はそれらの事を認識し、自分が司を止めようと胸に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ