60
窪田は健斗と共に車で移動していた。
「確かな情報なんですかね?」
「わからない。今はどの情報を信じれば良いか、判断に難しいな」
情報が入ったのは10分程前だ。
「しかし、映像まで送ってこられたら確かめない訳にはいかない」
イレイザーに届いたものはまず司と凛がいる場所とその証拠ともいえる2人が映った映像だった。
「この場所、須藤誠二が所持しているようです。映像はその外で撮ったものみたいですね」
「須藤誠二……須藤誠の息子だったな。まさかこいつが死神とはな」
そしてもう1つ届いたものは誠二が死神だという情報だ。
「この情報、何処からでしょうかね?」
「神野司を殺さずに捕まえろと指示が出た直後というのが気になるな。それに3人で行動してるはずなのに1人映ってないだろ? 賢い奴だよ」
「……そうですね」
この情報を発信したのは恐らく零次だ。
窪田の説得によりイレイザーは司の殺害ではなく、確保を目的とするようになった。
当然、それに伴い凛も標的ではなくなった。
そうした変化があった直後にこの知らせは来たのである。
「俺達が味方になるとわかった瞬間に情報を知らせてくるなんてな」
とはいえ、窪田は司と凛を助けられるという事実がただ嬉しかった。
しかし、喜べない事もある。
上の者は司の確保だけでなく死神である誠二の確保も指示してきたのだ。
「上の者は何を考えているんですかね?」
「上手く利用出来れば戦力になると話していたが、まさか本気で考えているとは思わなかった」
この事には窪田も呆れてしまった。
「あ、あそこですね」
目的地に到着し、車を止めると2人は降りる。
そこには既にイレイザーの者がいた。
「もう中に入ってるのか?」
「いえ、ドアのロックを解除しているところです。あと、どうやら催涙ガスが噴出しているようなのでガスマスクを被って下さい」
「わかった」
指示に従い、窪田と健斗はガスマスクを被る。
「よし、開いた」
ドアが開くと同時に中からガスが溢れ出した。
「中に入るぞ。念のため何人かはここに残れ」
窪田を先頭にイレイザーの者は中に入った。
ガスマスクを被っているため、直接的な影響は受けないものの、ガスが充満している事で前が見辛くなっている。
窪田は慎重に道を確認しながら奥に進む。
「ドアがたくさんある。どうやら外れを引くと罠があるようだ」
ドアを突き破るように出た槍を見て、窪田は凛の無事を心配した。
とはいえ、気を付けなければ自分達も罠に掛かる危険がある。
「ドアに数が書いてありますね」
健斗が言う通り、各ドアには3桁の数が書かれている。
「何の意味があるんだろうな?」
「あ、これって素数が書かれたドアを開ければ良いんじゃないですか?」
「そうなのか?」
「古い映画で似たようなのがありましたよ。素数を辿れば奥に進めるはずです」
健斗は自慢げにそう言った。
しかし、窪田は別の方法で奥へ進む方法を見つける。
「正解のドアはドアノブに指紋が付いているはずだ。それを追えば良い」
「え?」
「俺達の目的は神野司や凛の後を追う事だ」
窪田はドアに書かれた数を気にする事なく、単純に司達の後を続いて行く事にした。
この窪田の案は今の状況では正解であり、素数を特定する時間を掛ける事なく、順調に奥へ進み出した。




