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司は無事に着地した後、凛と零次に駆け寄る。

加代子が単独行動を取った理由として凛や零次を危険だと判断したからではないかと司は考えていた。

しかし、正人の話からそれはないと考え、司はまた凛達と行動を共にする事にした。

「司!」

「悪い、心配を掛けた」

「とにかく移動するよ!」

零次の指示に従う形で3人は車に乗り込む。

そして運転席に座る凛はすぐに車を走らせた。

「死神は須藤誠二だった」

「俺達も特定出来てたよ」

零次は負けず嫌いのような言い方だ。

「加代子を殺したのは正人だった。でも、正人も殺された」

それから司は何があったのかを順番に話した。

「シヴァウイルスのデータが明日回収出来るってどういう事なの? 明日になるまで何も出来ないの?」

様々な話をした中で凛はその部分が気になったらしい。

「俺もわからない。明日といっても日が変わってすぐなのか、昼間なのかも見当が付かない」

司の言葉を聞き、凛は焦っているような様子を見せる。

「ただ1つ考えられる事はpHは高野俊之を殺した犯人じゃないかもしれないという事だ」

「え?」

「pHはイレイザーの指示であっても自分自身で考えた結果、殺すべきだと思った人しか殺していない。その中で高野俊之は殺すべき人じゃないと判断していた」

司がそう考えたのにはもう1つ理由があった。

「pHの記憶が実験に紛れ込んだのは誰かが正人にデータを渡したからだとわかった。それが誰なのかはわからないが、俺がpHの記憶を持つ事になったのは偶然じゃなかったのかもしれない」

「でも、だったらあの……父を殺した記憶は何だったの?」

凛の疑問を司も持っていた。

そのため、その答えは既に探し、見つけていた。

「あれは偽りの記憶だった可能性がある」

「偽りの記憶って何よ?」

「人の記憶は当てにならないものなんだ。記憶違いもそうだけど催眠療法等によって呼び起こされた過去の記憶が事実と全く異なるものだったという話もある」

司は凛が理解出来ているか表情を確認しながら続ける。

「pHの記憶は自然に持ったものじゃない。それによって記憶の一部が壊れる事は十分ありえる。他のpHの記憶と比べた時、高野俊之を殺したかのような記憶だけ見え方が違う理由も壊れているからと考えれば納得がいく」

「でも記憶が壊れたにしても何であんな形に……」

「凛はpHが犯人と考えた上で話をしていたから、俺もそうだと考えていた。それが偽りの記憶を生み出した要因になったのかもしれない」

「そう……」

凛は何処か納得のいかない表情だった。

しかし、司はここで話を止めた。

どちらにしろ今の段階では推測の域を出ないため、これ以上話してもしょうがないと考えたのだ。

「ところで何処に向かっている?」

「何処にも向かってねえってのが答えだよ」

後部座席に座る零次が突然話し出し、司はバックミラー越しに目をやった。

「俺が利用してたシステム、死神……てか、誠二の持ち物だったみたいで、こっちの情報が筒抜けだったんだよ。それだけじゃなくシステムを全く使えねえ状態にもされたしね」

「大丈夫なのか?」

「餅は餅屋って事で、さっき情報屋にお願いしてシステムは使えるようにしてもらえたからとりあえず安心して。ただ向こうも情報収集とか出来る状態ではあるから長時間止まったりすると位置がばれちゃうんだよね」

司は当然、その事を知らなかった。

当初から予想していたものの状況は刻一刻と悪い方向に進んでいるようだ。

しかし、pHの記憶が確かだとしたら、明日中にシヴァウイルスをどうにかしないといけない。

そのため、このまま隠れて過ごすという訳にもいかないのだ。

とはいえ、司は今この瞬間にいくら考えても無駄だと考えると大きく深呼吸をした。

「昨夜は一睡もしていないんだ。少しだけ寝かせてもらう」

司はそう断りを入れた後、目を閉じた。

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