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司は正人の話を黙って聞いていた。

「加代子が動かなくなった後はもう無我夢中で……研究室に置いておく訳にはいかないと思って、車を使って近くのコンビニに移動させたんだよ」

そこで司は疑問を持つ。

「移動させるならもっと見つけ辛い場所もあったはずだ。何であそこにしたんだ?」

「加代子を1人にしたくなかったから……すぐ見つかる場所に置いたんだよ」

正人の言葉から、司は高野の遺体が道端に放置されていた理由も同じなのかもしれないと思った。

その時、司はやってきた数台の車を確認し、ここを後にする事にした。

司は正人をそのままにし、屋上を後にしようと背を向ける。

「何処に行くんだよ?」

正人がそう言うと司は足を止める。

「自分のするべき事がある」

「加代子が死んだのに悲しくないのかよ!? 加代子を殺した僕が憎くないのかよ!?」

その言葉に司はどう答えようか考えた。

「あの時、実験で使った記憶が影響しているのかもしれない。そんな感情に浸る時間を持つ暇はないとしか考えられない」

その時、背後に気配を感じ、司は振り返る。

そこには仮面を被った男が銃を持って立っていた。

司は即座にこの男が凛の話していた死神だと判断する。

そして次の瞬間、男は銃を1発撃った。

しかし、その銃弾は司に向けられたものではなかった。

後ろを向くと、正人が胸を押さえ、血を流していた。

それから少しして正人は倒れた。

司は何が起こっているのか理解出来なかった。

ただ、前に目をやると仮面を被った者は司に銃を向けていた。

「お前……何者だ?」

「私は死神ですよ」

そこでまた司の視界が真っ白になる。


「私はあなたを殺しません」

その言葉に高野は驚いた表情を見せる。

「イレイザーはあなたを殺すように指示しましたが、私はあなたを殺すべきではないと考えています。なので殺しません」


司は体がふらつきながらも意識を戻した。

今、pHの記憶を思い出している暇はない。

しかし、司の視界はまた真っ白になる。


高野は険しい表情で口を開いた。

「シヴァウイルスのデータは残ってる」

「え?」

「ただ、来年の7月7日までは回収出来ないんだ」


次の瞬間、相手は銃を撃っていた。

しかし、その銃弾が司に当たる事はなかった。

そこで司は意識を集中させる。

人が銃を撃とうと思った瞬間から、実際に引き金を引いて銃弾が標的に着弾するまで、1秒に満たない程ではあるが僅かな時間が生じる。

その間に自らの体を銃の照準から外す程度なら誰でも出来る。

ただ通常はその銃を撃とうと思った瞬間というものを把握出来ないという問題があるため、気付いた時には銃を撃たれ、銃弾を受ける事になってしまう。

しかし、逆に言えばその問題さえクリア出来れば、銃弾を避ける事は可能という事だ。

相手はまた銃を撃ったが、それも司には当たらなかった。

同時に司は突進するように前に向かって地面を蹴る。

そして低い体勢で次の銃弾を避けると張り手をするように掌を相手の胸に当てた。

その攻撃で相手は吹っ飛んだが、それを追い掛けるように司はまた距離を詰める。

相手はまた銃を向けたが、司は手を振ると銃を弾いた。

同時にその手が相手の仮面にも当たり、仮面が外れる。

仮面の下の顔は須藤誠二だった。

司は誠二がこんな事をしている理由等わからなかったが、そのまま誠二の横をすり抜け、階段を下りた。

司が誠二の相手をしなかった理由は屋上から外に目をやった時、窪田達がやって来た事に気付いたからだ。

今、自分が取るべき行動は誠二の相手をする事ではなく、窪田達に見つかる前にここを離れる事だ。

そこで司は横へ倒れるようにわざと体勢を崩す。

同時に銃声が響き、近くの壁に穴が空いた。

誠二が後ろにいる事は確実なため、司は振り返る事なく先を急いだ。

しかし、階段を降りている状態で銃を撃たれると自然と上方から攻撃を受ける事になり、避けるのは困難だ。

現に先程も体勢を無理やり崩す形になり、ロスになってしまった。

そのため、司は階段を下りるのを止め、廊下を走る事にした。

今は講義を行っているため、廊下に学生はいない。

そこで司は高くジャンプした。

同時に今度は廊下に傷がつく。

誠二はどうやら足を狙って銃を撃ったようだが、それも司は読んでいた。

そして、ある程度距離が空いただろうと判断し、司は先程とは別の階段に向かう。

しかし、司は階段を下りずに反対に上った。

その理由はこのまま下りれば、イレイザーの者と鉢合わせになる事がわかったからだ。

司はしばらく行ったところで、ついてくる者がいなくなった事を確認し、一息吐いた。

隠れ家を出る時、司は何も武器を持たずに出てしまった。

そのため、素手でこの状況を切り抜けなければならない。

司はどのようにしてこの状況を切り抜けようか考えつつ、何者かが近付いてきている事を感じ、また移動を開始した。

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