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警察から簡単な事情聴取を受けただけで麗美と勉は解放された。

麗美は携帯電話を使い、司や零次についての情報を集めた。

そして、ある事に気付いた。

「勉君、私は用があるから……」

「零次さん、危険なんですか?」

その質問に麗美は固まってしまった。

「え?」

「麗美さんも零次さんと同じ、裏の世界の人なんですよね?」

今まで勉はその事に気付いているような素振りを全く見せていなかった。

そのため、麗美は驚きを隠せなかった。

「何でわかったのかなー?」

「それは……麗美さんの事が好きだからです」

勉は顔を赤くしている。

それを見ていたら麗美まで顔が赤くなった。

「勘違いしないでね。別に情報集めようと思っただけじゃなくて……私も勉君の事、良いなって思ったから近付いたんだからね」

いざとなると好きだと言えない自分に軽く嫌気が差しつつ、麗美はそれしか言えなかった。

「ありがとうございます」

しかし、勉が嬉しそうに笑っていたため、麗美は安心した。

「それで零次さんは……?」

「あ、ちょっとこれから会いに行かないといけないんだよねー。歩いて行くしかないんだけど、それでも1時間ぐらいで行けるから……」

「だったら、僕の自転車で行きましょう」

勉はそう言うと自転車を持ってきた。

「車とかがあれば良かったんですけど、歩くよりは速いので……」

「でも、ちょっと危険かもしれないし、1人で行くよー?」

「いえ、僕も行きます!」

勉が大きな声を出したため、麗美は驚いてしまった。

「僕、零次さんとも友達になりたいと思っていて……何か役に立ちたいんです!」

そこまで強く言われ、麗美は困ってしまった。

しかし、考えてみれば麗美が裏の世界の人間だと知りながらそれを表に出さず、一緒にいた事。

謎が多く麗美も信用出来ていない零次と友人になりたいと主張する事。

それらは勉の強さみたいなものなのだろうと麗美は感じた。

そして麗美は決断した。

「零次が今何処にいるか教えるから、そこまで連れて行って」

「はい!」

警察がすぐ近くにいる事が少しだけ気になったが、麗美は自転車の後ろに乗った。

そして、勉は少しだけフラフラしながら走り出した。

「しばらくは道なりに真っ直ぐ行って、途中の大通りを渡ったら右に行くから」

ある程度速度が乗ったところで自転車は安定して走り始める。

「勉君?」

「はい?」

「私、今回の件が落ち着いたら、裏の世界の仕事……情報屋なんだけど辞めるからー」

「別に僕は……」

「多分、もうすぐずっと知りたかった事もわかるし、それで心置きなく辞めるからねー」

麗美は何処かのタイミングで裏の世界での生活に区切りを付け、表の世界での生活のみにしたいと思っていた。

そのタイミングというのが、もうすぐ来る事を予感しているのだ。

そこで麗美はある考えを持つ。

しかし、不謹慎だと思い、言わないことにした。

フィクション作品では危険な場所でこれからの話をしたりすると直後に死ぬという事がよくある。

とはいえ、根拠はないものの麗美はそんな事にはならないだろうと確信を持っていた。

「あ、そこ渡ったら右に行って」

「はい」

やはり曲がる時はフラフラとしていて危なっかしいが、麗美は落ちないよう勉に掴まった。

「でも、何で勉君は零次の力になりたいのー?」

麗美は胸のうちに仕舞っておく事が出来ず、その質問をぶつけた。

「零次さんと会ったおかげで麗美さんと一緒になれて……毎日を楽しくしてもらったからですよ」

「別に私達が一緒になったのに零次は関係ないよー?」

「でも、麗美さんだって今、零次さんを助けようとしてるじゃないですか」

その言葉に麗美は少しだけ固まってしまった。

それから少しして麗美は笑った。

「言われてみればそうだねー」

はっきりと言葉には出来ないものの、麗美も勉と同じ気持ちを持っているのだろうという事に気付いた。

そして自転車は零次達の下に向かって順調に進んで行った。

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