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司は部屋に戻り、すぐに加代子がいない事に気付いた。

凛の部屋へ行っているのだろうかと思ったが、何か違和感を覚え、司はパソコンを操作し始める。

そこで視界が真っ白になり、司は手を止める。


「死神の噂話、知っていますか?」

窪田の質問に思わず笑ってしまった。

「あんな都市伝説を信じているのか?」

「都市伝説じゃないですよ。実際にいるそうです」

「確かに犯人不明の殺人事件等は起こっている。ただ、それらは完全犯罪の1つに過ぎない。全て別の人間がやったものだ」

表の世界に比べ、裏の世界の方が優れていると考えている者が時々いる。

特に裏の世界に入ったばかりの者はその傾向が強い。

確かに裏の世界は法に触れるような最先端の技術を持ってもいる。

しかし、だからといって万能ではない。

表の世界で未解決の事件は全て裏の世界で解決する等、そんな事はありえないのだ。

さらにそれらの未解決事件が同一犯によるもの等、尚更ありえない事だ。

「でも、こんな噂があるんですよ」

「全て噂だな」

「そうなんですけど……死神の正体は少年じゃないかって話なんです」

それは初めて聞いた話だった。

「どういう事だ?」

「ただ善悪の区別が付かない子供なんじゃないかって言うんです。遺体の損傷が激しいのもただ傷付ける事でどうなるのかを知りたいからじゃないかって話です」

「噂が1人歩きしているな」

これ以上は呆れてものも言えなかった。

とはいえ、窪田には言えないものの死神の噂については気にしている。

死神がやったとされる殺人の内、遺体の様子等を見た時、大半は同一犯によるものではないかと思われる程、手口が似ているのだ。

模倣犯も含まれているかもしれないが、それにしても類似点が多過ぎる。

そこで1つの推測を立てた。

それは実行している者が同一なのではなく、計画している者が同一なのではないかというものだ。

最も既に亡くなっている者の遺体をさらに傷付けるような行為を並の人間がするとは思えない。

恐らく、実行している者も何かしらかの共通点を持っているようだ。


司は意識が戻ると、今見たものを思い返す。

そして、窪田がとても若かったため、恐らく古い過去の記憶のようだと考えた。

それから司はまた手を動かし始める。

今、司はpHの記憶を思い出すと共にその記憶とは全く関係のないハッキングに関する知識も思い出していた。

そのため、この場所のセキュリティが解除された状態になっている事にすぐ気付いた。

それだけでなく、監視カメラの映像から加代子が外に出て行ったらしい事もわかった。

「何処に行くつもりだ?」

加代子の目的はわからないものの、外に出るのは危険だ。

司はすぐに凛や零次を呼び、加代子を捜しに行こうとした。

しかし、そこで司は違和感を覚える。

それは加代子が誰にも何も言わず、外へ出た理由だ。

どう考えても加代子の行動は異常だ。

ただ、そうしなければならない理由があったと考えた時、自分が取るべき行動は決まっていた。

司はパソコンを操作すると、数分後にセキュリティが起動するように設定した。

それから簡単に荷物をまとめると凛や零次に見つからないよう外へ出たのだ。

加代子は誰にも知らせずにここを出た。

それはここにいる誰かに知られたくないからだと考えるのが自然だ。

そう考えた時、司も加代子の事を凛や零次に知らせるべきではないと判断したのだ。

最もそう考えた理由は他にもある。

先程見た記憶の中でpHは死神の正体を推理した時、計画犯が同一ではないかと考えていたようだ。

そして犯罪の計画を立てるという点では零次のようなクライムプランナーを思い出させた。

とはいえ、死神の噂と零次が関係している等とは思っていない。

そもそも凛はこの件と関係がないように思われる。

しかしながら万が一でも自分が凛や零次に話をする事で加代子が危険に晒される可能性がある限り、それは出来なかった。

司はそこで足を止める。

そこにはスピード違反を取り締まるために設置されたと思われる監視カメラがあった。

司はそのカメラに自らの姿が映らないように避けた後、また移動を始めた。

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