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司達が戻ってきて、加代子は真っ先に出迎えた。

「司、大丈夫だった?」

「ああ、特に何の問題もなかった」

「俺が一緒だったおかげだね」

零次は自慢気な表情だ。

「それより凛はいるか?」

「あ、うん、いるけど……」

司は自分の事よりも凛に用があるような様子で、加代子は少しだけ悲しくなった。

「無事だったみたいね」

その時、凛もやってくると安心したように笑った。

「俺の事、信用して正解だったでしょ?」

「今のところわね」

「凛、伝える事がある」

冗談のようなやり取りをしている零次達を余所目に司は真剣な表情だ。

「さっきpHが使っていたと思われる隠れ家を見つけた。そこで思い出した事がある」

「……何?」

司の言葉に凛も真剣な表情になった。

「凛の父親……高野俊之はpHの隠れ家で殺された」

「え?」

「昨日話した、シヴァウイルスを渡さないと言っている記憶の場所が今日行った場所だ。それだけでなく……」

司の話を凛は1つ1つ噛み締めるように聴いている様子だった。

「今日、見えた記憶は血だらけになった高野俊之の遺体と……自分の右手に握られたナイフだ」

「そう……」

凛は溜め息を吐くようにそれだけ言った。

「見えたのはそれだけだ。それからどうして遺体を移動させたのかはわからない。そもそもどうやって殺したのかも推測の域を出ない状態だ」

司はそこで言葉を切った。

「でも、状況から考えて誰が殺したかはわかる」

「やっぱりpHが父を殺したのね……」

凛は複雑な表情を見せる。

「……俺は凛の父親を殺した犯人じゃない。でも、その記憶は持っている」

司はゆっくりとそう言った。

「だから凛に謝る事が出来る」

「止めて」

凛は司を止めるような雰囲気で拒否した。

「司がした事じゃないんだから、謝らないで」

凛の言葉に司は特に何も返さなかった。

「それにもしかしたらpHが生きてるかもしれねえしね」

「え?」

「隠れ家にpHの遺体はなかったよ。俺の予想が外れちゃって、ちょっと残念だけどね」

「予想って何よ?」

「外れた予想を言う訳ねえじゃん。格好悪いし」

零次の言葉に凛は呆れた様子を見せる。

「この先はどうする?」

司の言葉に零次は考え込むような様子を見せる。

「今のところ特に案はねえかな」

「もしもシヴァウイルスが何処かにあるとしたら、いつまでものんびりしている訳にはいかないだろ? 猶予はどれぐらいある?」

「そんな事聞かれてもわからねえよ。もしかしたら既にタイムオーバーかもしれねえし」

「ねえ、でも……今日はもう休もうよ」

加代子は恐る恐るそう言った。

司は何か手掛かりがありそうな場所へまた行こうとしている雰囲気だ。

そうしてまた司と離れてしまう事に加代子は堪えられなかった。

そのため、こうして休むように言った形だ。

「まあ、また色々と整理する必要もあるし、加代子ちゃんの言う通り、少し休憩かな」

零次がそう言ったため、加代子は安心した。

「司、お風呂でも入ってきなよ。外、暑かったし汗かいたでしょ?」

「ああ、わかった」

「司が出た後、俺も入るからね」

そんな話になり、加代子はひとまず1人で部屋に戻った。

調べものが出来るよう、加代子達の部屋にもパソコンが置かれている。

そして加代子は凛から借りたUSBケーブルで充電していた携帯電話を手に取った。

この携帯電話は昨日、訪れた研究室で拾ったものだ。

研究をしている者は携帯電話にメモを残している事が多い。

そのため、何かリライトに関する情報が入手出来るのではないかと加代子は考えている。

充電も終わり、加代子は電源を入れると中に入っているデータを確認する。

そして加代子は1つの動画に注目した。

その動画に注目した理由は自動的に保存してある動画の一覧が表示されたためだ。

起動時に特定のソフトを起動させる事は容易に出来るため、それ自体については特に不思議ではないが、あえてそのような事をした持ち主の真意を考えると不思議だった。

そして加代子は最新の日付の動画を再生する。

「これで撮れてるか?」

動画には男性が映っている。

「今、俺達は閉じ込められて、次々に殺されてる。多分、俺も助からないから今から犯人の名前を言う」

男性は慌てた様子で続ける。

「俺達を殺しに来た犯人の名前は……」

その先を加代子は聞いてしまった。

もしも聞きたいかどうかを事前に質問されれば、加代子は聞きたくないと答えただろう。

しかし、ただ何が起こっているのかを確認しているうちに図らずも聞いてしまったのだ。

「誰かがこれを見てくれたら良いな……」

その言葉を最後に動画は終わった。

加代子はただ呆然としてしまい、しばらくそのままでいた。

しかし、少しずつ頭が働いたところですぐに荷物をまとめた。

そして加代子は外に出るとここを去った。


この時、加代子は知らなかったものの幸か不幸か、ある不測の事態が起こっていた。

それはこの場所のセキュリティが一時的に解除されていた事である。

理由は単純で司達が帰ってくる際に解除し、そのままにしてしまっただけだ。

しかし、その事により通常は誰かしらかの出入りがあれば凛や零次が気付くにも関わらず、今回は加代子が出て行った事に誰も気付かなかった。

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