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司達はしばらく資料を探していたが、日が暮れる頃に見切りを付け、また隠れ家に戻っていた。

しかし、加代子は戻った後も持ち帰った資料を整理している。

司も一緒に資料を確認しようとしたが、加代子から休むように言われたため、今は一生懸命な様子の加代子をただ見ている形だ。

一方、凛は1人になりたいと言い、今は部屋に1人いる。

「ただいま」

その時、零次が笑顔で帰ってきた。

「凛ちゃんは?」

「1人でいたいって言ってたから、今は部屋にいる」

「そっか」

零次は加代子の方を窺うような目で見る。

「そっちは何か秘策でも見つけたかな?」

「そうはいかないみたいだ」

司の言葉を聞き、加代子は手を止めると溜め息を吐く。

「司、聞いてもらっても良いかな?」

加代子は真剣な表情だ。

「俺がいると話し辛いよね。凛ちゃんの様子を見に行ってみるよ」

「あ、零次さんにもお願いがあるんです」

加代子がそう言ったため零次は足を止める。

「何?」

「司にリライトをするのは難しいんです」

加代子の言葉に零次は驚いた様子を見せる。

「どういう事?」

「簡単に言うとpHの記憶を特定する情報をもっていないといけないんです。それはつまり……イレイザーに協力してもらう必要があるかもしれないって事なんです」

「加代子から見てもそう思ったか?」

司は加代子と一緒に資料を整理している中でその考えを持っていた。

加代子は司の言葉に悲しそうな表情を見せる。

「司も気付いてたんだね」

「つまりリライトは出来ないと考えた方が良いな」

司は既にリライトをするという選択肢を諦め、別の選択肢を探していた。

しかし、今のところどうすれば良いのか答えが見つかっていない形だ。

「シヴァウイルスの事もあるし、出来れば早めにpHの記憶を探りたい。何か方法はないか?」

「一応、考えはあるんだけど……」

加代子はその先を言おうか迷っている様子だったが、少しだけ間を置いた後に口を開いた。

「過去に行った場所へ行くと記憶が蘇る事があるでしょ? だから……」

「pHが行った事のある場所へ行けば良いかもしれねえって事だね」

先に零次が結論を言ったため、加代子は頷いた。

「原始的なやり方になっちゃうけど、司の記憶を壊さない方法としてもこの方が良いと思うの」

「問題はどうやってpHが行った場所を調べるかだな」

司の言葉に零次は笑う。

「それなら安心してよ。調べようと思えば一晩である程度見つかるはずだから」

零次がそこまでの自信を持てる理由について、司は今まで詮索してこなかったものの、今回は探りを入れる事にした。

「セキュリティを支配するだけでそんな事までわかるのか?」

司の質問に零次は一瞬だけ笑顔が消えたが、またすぐに笑った。

「何か聞きたい事でもあるのかな?」

「今のところ、この場所は組織の者に知られていないが、いつまでこのままでいられるかを知りたい。零次が利用している情報収集の方法が何か知らないが、その方法でもここは見つからないものなのか?」

司の質問に零次は少しの間、考え込むような仕草をする。

「少なくとも俺と同じ方法を取れる奴はいねえと思うよ」

「本当か?」

「関東大停電の話をしたじゃん? あれ、停電の復旧をしてから一時的にセキュリティが甘くなったりしたんだよ。それを利用して一部のシステムを自分の支配下に置いた訳だし、他の奴が俺と同じ手順を踏むのは無理だよ」

「凛もガーディアンの情報を見たりしてるのはどうやっているんだ?」

「あれは俺が使ってるうちの一部を使ってもらってるだけだよ」

零次はそう言いながら、携帯電話を操作し始める。

「まあ、ここがいつまで見つからねえかって部分は俺もわからねえけどね。凛ちゃんは大丈夫って言ってたけど実際はどうだか」

「ここが誰かに見つかったという情報は入るのか?」

「いざって時に逃げられるかどうかって話かな? それは多分大丈夫じゃねえかってレベルだけど、少なくともイレイザーとガーディアンだったら大丈夫だよ。それ以外となるとそもそも何処に知られると面倒かって話がわからねえから難しいね」

零次の話から様々な部分で不安要素があるという事がわかったが、司はそれらを予想していたため、改めて理解した形だった。

「何処かに行くとしても明日だし、今日は休めば?」

「わかった」

司は加代子と共にその部屋を後にした。

しかし、部屋から出る時に零次が自分を窺うように見ていた事に司は気付いた。

自分の事について零次は何か探りを入れているようだが、今は構わない事にした。

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