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司達は加代子の言う研究グループの研究所まで特に何の危険もなく到着した。

「てか、結構広いんだね」

「誰かいると良いわね」

「とりあえず、呼んでみましょう」

加代子がチャイムを押し、誰かが出てくるのをしばらく待った。

しかし、誰も出て来ないため、今度は零次がチャイムを押した。

「出ませんね……」

「無駄足って事か」

司は諦めようとしたが、そこで零次がパソコンをバッグから出した。

それから零次はキーボードを小気味良く叩く。

「何してるの?」

「せっかく来たんだから、このまま帰るのはもったいねえと思ってね」

その時、入り口の門が開いた。

「勝手に入るつもりなの!?」

「留守にしてるのと、甘いセキュリティを使ってるのが悪いんだよ」

零次はそう言うと1人で先に行ってしまった。

「司、どうする?」

「強引だけど、今はそういう状況だからしょうがないと考える」

「途中で帰ってきたらどうするのよ?」

「俺達が言ったところで零次は止まらないだろうし、諦めよう」

司の言葉に加代子と凛は困っているような表情を見せたが、司が先へ行くと渋々ついて来た。

零次は全てのセキュリティを解除したらしく、門だけでなく中に入るのも簡単だった。

「どうやったの?」

凛がそんな質問をしたが、零次はいつも通り魔法を掛けているの一言しか言わなかった。

ただ、司はこれまで零次がやってきた事を思い出し、セキュリティ関係のコントロールをしているのだろうと考えている。

情報収集だけでなく、情報操作も通常は何かしらかのセキュリティが妨害して、そう簡単には出来ない事だ。

むしろセキュリティの問題を解決した上で応用としてそれらの事が可能になるという解釈も出来る。

そう考えると今、零次が行った事は全ての基本に近いと言えるかもしれない。

最も詮索したところで零次が答えるとは思えないため、司はここまでで考察を止めた。

「しばらく使ってなかったみたいね」

床や壁の汚れを見て凛はそう言った。

「ここでは10人程で研究をしてたはずなんですけど、誰もいないという事は研究を止めてしまったのかもしれませんね」

加代子は残念そうな表情を見せる。

そこで司は床に目をやり、足を止める。

「これって……」

零次も司と同じものを見て足を止めている。

「どうしたの?」

「誰かの血だ」

大分時間が経過しているようだが、ここで何かあったらしい。

司は近くのドアを勢い良く開ける。

そこは研究室のようで機材等が置かれていた。

司は中に入り、ここにも血痕がある事に気付いた。

「奥に行こう」

司はその部屋を後にし、廊下に出た。

そして1番奥の部屋に目をやる。

司は足早にその部屋に近付き、足を止めた。

ドアの下から流れ出たかのような血痕が確認出来、司はこの先に何があるか理解する。

「加代子、こっちに来るな。そこで待ってろ」

「え?」

司が何故そう言うのか理解はしていないようだが、加代子は只ならぬ気配を感じたようで足を止めた。

そして司はドアをゆっくり開けた。

同時に鼻を突く匂いが部屋の中から溢れてきた。

司はその匂いについて比喩する事が出来なかった。

その理由はそれが人の遺体の匂いだと知っていたからだ。

司は部屋の中に入り、ここで研究していた全員なのか、いくつもの遺体が転がっているのを確認した。

「こんなの……酷過ぎるよ」

司に続いて部屋に入った凛は体を震わせながらそう言った。

「どうしたの?」

「遺体がたくさんあるんだ。加代子は見ない方が良い」

司は遺体を観察するように見た。

こんな光景を見た事はないが、司はこうした光景に見慣れていた。

特に目を背けようとも思わず、ただ目の前の事を事実として冷静に受け止められている。

そこで司は頭が痛くなり、右手で押さえる。

そして目の前が真っ暗になった。


視界が歪んでいる。

大きなノイズが周りの音を妨害し、何も聞こえない。

「き……みに……」

ノイズの中に声が聞こえ、司は声に集中する。

その時、視界の歪みが消え、目の前に男がいた。

同時にノイズが消える。

「君にシヴァウイルスは渡さない」

男は服を赤く染めている。

どうやら怪我をしているようだ。

それからまた視界が歪み、ノイズも鳴り出す。

いくつもの渦が出来、それらが少しずつ1つの大きな渦になる。

そして突然渦が弾けるように散った。


「司、大丈夫なの?」

司はいつの間にか現実に戻されていた。

目の前には心配した様子の凛がいた。

「ああ、大丈夫……」

そのまま司は意識が遠のいていき、その場に倒れた。

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