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朝になり、加代子は目を覚ますと隣に目をやる。

そこにはまだ寝ている司がいた。

それだけ確認し、加代子はもう満足だった。

昨夜、様々な問題がある事を聞いてはいるものの、今この瞬間が加代子にとっては掛け替えのない幸せだ。

加代子はそのまま司に寄り添う。

そんな加代子の様子に気付いたのか、少しして司が起きた。

「司、おはよう」

「ああ、おはよう」

司と一緒にいなかった期間は丸1日程だ。

それにも関わらず、加代子は司が愛おしかった。

「どうした?」

「少しだけこうしてて」

加代子は司の胸に顔を当て、心臓の鼓動を感じていた。

「司、大好きだよ」

「……そろそろ出掛ける準備をしよう」

「うん」

加代子は司の胸からそっと顔を離した。

それから2人は簡単に支度をしてから部屋を出る。

「丁度良かったわね」

部屋の外には起こしに来たのか凛がいた。

「おはようございます」

「おはよう。零次も起きてるわよ」

凛について行く形で加代子達は零次の下に向かう。

「みんなおはよう」

そこにいた人物に凛は見覚えがなかった。

「また変装したの?」

「女の子が増えたし、イメチェンだよ」

そんな凛との会話から加代子はこの人物が零次なんだと気付いた。

「そろそろこっちの情報操作にも気付く頃だから、少し捻った事をやる必要があるし、出発までもう少し待ってくれねえかな?」

「大丈夫なのか?」

「何とかするよ」

昨夜会ったばかりだが、零次はこうした事に慣れた人物なのだろうと加代子は考えている。

一方、凛は自分と似た印象でイレイザーと呼ばれる組織に入っているようには見えない。

ただ、そうした事と共に加代子が1番気にしている事は司の事だ。

司について、加代子は零次と近い雰囲気を感じている。

それは今に始まった事ではなく、ずっと前からだ。

初めて会った時から自分と何処か違うと感じ、そうした部分にも惹かれた訳だが、その理由は司が良家の生まれであるため等と考えていた。

しかし、もしかしたらその解釈が間違っていたかもしれないと加代子は思い始めていた。

「そういえば、研究グループの方に予め連絡はしなくて良いのか?」

そこで司が零次に対してそんな質問をしたため、加代子は考える事を止めた。

「調べれば連絡先わかるよ」

「あ、いや、止めた方が良いよ」

零次は険しい表情だ。

「向こうには悪いけど突然押し掛けようよ。電話をするにしてもメールをするにしても盗聴される危険があるし」

「そんな事、出来るんですか?」

空想の世界ではなく、現実でそんな事が出来る等、加代子には驚きだった。

「ガーディアンは表向き、大企業の役員だとか政治家といった強い立場にいる奴が多いんだよ」

「私を誘拐した佐藤という人も刑事だと言ってました」

「表の世界の人間として生きていても、一般人と比べて出来る範囲が元々広いんだよね。今の時代、公にされてねえだけであらゆる情報が常に盗まれてると思った方が良いし、連絡は止めた方が良いよ」

「わかりました」

加代子は零次の助言を素直に聞く事にした。

「場所はわかるのか?」

「うん、ブログも公開してて、そこに載ってるよ」

「それ、教えてくれねえかな?」

加代子は零次にそのブログを教えた。

「今から場所の確認なんてやってて大丈夫なの?」

「さっきも言った通り、情報操作がそこまで出来なくなってきてるし、そんなに変わらねえよ」

表示されたブログを確認し、零次は何か考えている様子だった。

「場所はわかった。ただ、最近はブログの更新がされてねえみたいだね」

加代子が連絡出来なくなった頃とほぼ同じ時期にブログの更新は止まっている。

それまでは頻繁に更新されていた事もあり、加代子もこの事には違和感を覚えていた。

「もしかしたら何か事情があって、もう研究をしていないのかもしれないですね」

「まあ、それならまた別の場所に行けば良いでしょ」

「こっちは追われてるのに適当過ぎないか?」

「別に何か来ても司なら全員倒せるでしょ」

そこで少しだけ沈黙が走り、零次は慌てた様子を見せる。

「あ、ジョークだよ。みんな通じねえの?」

零次は笑いながらそう言ったが、司は現にそれだけの能力を持っているように見える。

加代子はその事が悲しかった。

「丁度、目的地付近にイレイザーやガーディアンはいねえみたいだし、すぐ行っちゃって良いかもね」

「こっちはもう行ける」

「私も行けるわよ」

「だったら行こうかね」

加代子はここから外へ出る事で何者かに襲われるのではないかと不安だった。

「加代子、大丈夫か?」

そして司はそんな加代子の心情に気付いたようだ。

「ここは安全だし、待ってても良いわよ?」

「あ、いえ……行きます」

凛の気遣いは嬉しかったものの、せっかく一緒になれた司とまた離れる事に加代子は堪えられなかった。

リライトについての知識はあまりないため、加代子が行ったところで向こうの研究グループに全てを任せる事になる可能性は高い。

しかし、それでも加代子は司と一緒にいたかった。

そして、深呼吸をして不安な気持ちを落ち着けた後、司達と共にここを出発した。

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