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大学は広く、凛と零次が何処にいるか予測する事は難しい。

そのため、司は特に考える事なく大学の中を走り回っている。

イレイザーやガーディアンが自分を捜しているにも関わらず、多くの人の目に触れる行動を取る事は危険だ。

しかし、今はそれよりも動かずにいる事の方が危険だと確信していた。

「凛!」

そこで凛を見つけ、司は叫んだ。

「どうしたの?」

「零次は何処だ?」

「ごめん、見失っちゃったんだけど……」

「早くここを離れた方が良い」

凛は司が何を言ったのか理解していないようだった。

「データは手に入れた。ここに残る必要はもうない」

「そうだけど……何かあったの?」

「あ、いたいた!」

その時、零次が慌てた様子でやってきた。

「何処に行ってたのよ?」

「それはどうでも良いじゃん。てか、まずい事になってるよ。俺達がここにいるって情報が流れてるみたい」

「え?」

凛は携帯電話を操作する。

「ホントだ……何で?」

「考えるよりも即行動」

3人は大学を出ると外に止めておいた車に乗る。

ここへ来た時と同様に凛が運転で司は助手席、零次は後部座席に座った。

「そういえば、pHの記憶は見つかった?」

「ああ、あった」

司は先程受け取ったSDカードを取り出す。

「暗号化されてるって言ってたよね? そういう事なら俺に任せてよ。暗号解読は得意だからさ」

零次はそう言うと奪い取るような形で司の手からSDカードを取る。

そして零次がバッグからノートパソコンを取り出したところで、後ろから1台の車がやってきた。

「来たみたいね」

凛はアクセルを強く踏み、急発進させる。

「大丈夫か?」

「ちょっと厳しいかもしれないわね」

「とりあえず、解読は後にして今は情報の妨害をしておくよ」

零次は笑みを浮かべるとキーボードを叩く。

「情報を妨害したところで後ろの1台はこのまま追ってくるでしょ?」

司はサイドミラーで後ろの車を見る。

そして、助手席側の窓から何か出ている事を確認する。

「ハンドルを借りる」

司は助手席から片手でハンドルを持ち、勢い良く左右に切った。

それにより車は左右に大きく揺れる。

「何やってるのよ!?」

「スナイパーライフルで狙撃してきてる」

その時、銃弾が当たったようで助手席側のサイドミラーが割れる。

それにより司は振り返らないと後方の車を確認出来ない状況になってしまった。

「何かまずそうだね」

零次はパソコンからSDカードを取り出した後、ポケットに仕舞う。

それはまるでこの後、車から降りる事を想定しているようであった。

その直後、何かが破裂するような音が響く。

「タイヤをやられたみたい!」

そのまま車はコントロールを失い、近くの電柱にぶつかると止まった。

止まったと同時に3人は車を降り、車が入れない細い脇道に入る。

「零次、SDカードは持ってるか?」

「ああ、ここに……」

その時、零次はSDカードを持った手を上げ、司等に見えるようにした。

それと同時に銃声が鳴り、SDカードが零次の手から消えた。

「え!?」

「こっちだ!」

スナイパーライフルがこちらに向けられていたため、司は道を曲がる。

「ここ抜けられるの?」

本来なら通らないような、家と家の間にある細い道を3人はさらに進んだが、行き止まりにぶつかる可能性もあれば、追っ手が待つ場所に出てしまう危険もある。

「それよりpHの記憶はどうするのよ?」

「どうするって言っても撃ち抜かれたんじゃ、しょうがねえし」

3人はそこで脇道を出て道幅の広い道に出る。

「まいたかな?」

「いや……」

司はまた脇道に戻ろうとしたが、銃声が響くと共に近くの壁に穴が開いたため、諦めた。

「動くな」

結局、司達の行動を予測されていたようで、先程の追っ手は先回りしていた。

1人は先程と同じようにスナイパーライフルを持ち、運転していた者も車を降りると拳銃を取り出し、向けてきた。

「さすがにチェックメイトだね」

こんな状況でも零次は何処か楽しんでいる様子だ。

代わりに凛は険しい表情を見せている。

「窪田さん、見逃してくれませんか?」

その言葉にスナイパーライフルを持った男が反応した事に司は気付く。

「凛、今ここで彼を殺せば何の問題もない。標的を油断させるために近付いていたと言えば良い」

「窪田さんは私がこうする事を知っていたはずです。私をイレイザーに誘った時から……」

その言葉で司は凛がイレイザーの1人だと知った。

「お願いです、行かせて下さい」

凛はそう言うと銃を取り出し、窪田という男に向ける。

慌てた様子でもう1人の男が凛に銃を向けたが、それを窪田は止める。

健斗ケント、撃つんじゃない。大丈夫だ、凛は撃たない」

その時、司は零次の方へ目をやり、零次が目配せで何か合図を出した事に気付く。

そして、その意図にも気付いた。

次の瞬間、零次が銃を取り出す。

「こうなったら、強行突破するしかねえかな」

それに反応するように窪田達は銃を零次に向ける。

同時に司は凛の銃を取り、1発だけ撃つ。

その銃弾は健斗と呼ばれた男の拳銃を弾き飛ばす。

司はそれを確認する事なく、窪田に突進するように近付く。

スナイパーライフルは銃口が長く、あまりに近いものを撃つ事には適していない。

司は一瞬のうちにその射程内に入っていた。

そしてスナイパーライフルを手にすると回転させ、同時に自らの背中をぶつけると窪田を吹っ飛ばした。

結果として窪田が持っていたスナイパーライフルは司の手に渡っていた。

「チェックメイト」

気付けば、零次は司が弾き飛ばした拳銃を拾い、窪田達に向けていた。

「車借りるよ。司、凛ちゃん、行くよ」

司はスナイパーライフルを窪田達に向けたまま、凛に目をやる。

凛は司の方を見て何を言うべきか困っている様子だ。

「俺を殺すチャンスなんていくらでもあった。それでもこうしているんだ。何でイレイザーの君が俺を助けているのかはわからないけど、信用して良いんだろ?」

司の言葉に凛は静かに頷いた。

それから凛は窪田に近付く。

「イレイザーを裏切ると言うなら、凛も標的になるぞ?」

「わかっています。それでも私は行きます。今までお世話になりました」

「ほら、2人共早く乗ってよ」

零次に急かされ、司と凛は車に乗った。

そしてまた凛の運転でその場を後にする。

「情報の妨害はしておいたから他の追っ手は来ねえだろうけど、さすがにこの車で行くのはまずいから何処かで乗り換えねえとね」

零次は相変わらず楽しそうにしているが、凛は先程の事もあるためか険しい表情だ。

司はその時、スナイパーライフルを手にしたままでいる事に気付く。

こんなものを持った事等、当然1度もないはずだ。

しかし、今朝見た夢の中で同じものを持っていた事もあり、これを持つ自分に全く違和感を覚えなかった。

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