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司は真っ直ぐ研究室を目指していた。

零次の話ではここにイレイザーやガーディアンはいないとの事だ。

しかし、司は周りを警戒しながら移動している。

昨日、論文発表を行ったからか周りの者は司に注目しているが、その中の誰がいつ襲い掛かってきてもおかしくない状況だと司は考えている。

そのため、自然と慎重にならざるを得なかった。

しかし、幸いにも何も起こらないまま司は研究室に到着した。

「あ、司!」

研究室に入ると同時に正人が駆け寄ってきた。

「昨日は何処行っちゃったの? 加代子が心配してたよ」

「悪い、事情があって外に出たんだ」

「加代子には会った? 司を捜しに行くって言って加代子も出てったんだけど?」

「いや、会っていない。今、携帯電話も持っていないから……」

そこで司は見知らぬ人物がいる事に気付く。

「ああ、彼は僕らのスポンサーになってくれる須藤スドウ 誠二セイジさんだよ」

「スポンサー?」

「初めまして、須藤誠二です。誠二と呼んで下さい。昨日の論文発表を聞いて、君達に研究資金を提供したいと思ったんです」

誠二は自分達と同じぐらいの年齢に見える。

「昨日の発表が好評だったみたいでそんな連絡はたくさん来てるんだけど、誠二さんはこうして直接来てくれたんだよ」

「ありがとうございます」

「君が神野司君ですね?」

「はい、よろしくお願いします」

司は簡単に挨拶したものの、すぐにここを出る必要もある。

そのため、誠二との話は正人に任せ、自分は話を切り上げる事にした。

「すいません、またすぐ出ないといけない事情がありまして……」

「司、来たばっかじゃん。どうしたの?」

「詳しい事は今度話す。それより実験で使ったデータを持って行きたいんだ。構わないか?」

「まあ、構わないけど……」

司は棚を開け、目的のものを探す。

「何探してるの?」

「俺が被験者として参加した時に使ったデータを探してる」

「それなら加代子がこの前調べてたから、こっちにあるよ」

正人はそう言うと別の棚からSDカードを取り出し、差し出す。

「加代子、司に何か影響が出てないかって心配してたよ。そのデータ、暗号化されてるから内容わからないし、どうにかして解読しようとしてたみたい。結局解読出来なかったみたいだけど……」

正人は誠二に聞こえないようにか、小声でその事を伝えてきた。

「そうか……」

現に影響が出ていて、命を狙われている状況になっている事を司は伝えなかった。

「じゃあ、俺はもう行くから……」

「後で加代子に連絡してあげなよ」

「ああ……携帯電話をなくして番号がわからないんだ。教えてくれないか?」

「……彼女の番号ぐらい覚えなよ」

正人は呆れた様子を見せたが、自分の携帯電話を取り出すと加代子の番号を表示させ、司に見せた。

司はそれをメモする事なく暗記した。

「それじゃあ俺はもう行く」

司はSDカードを仕舞い、研究室を出ようとした。

「それが実験に使ったデータですか?」

しかし、誠二に呼び止められ、司は足を止める。

「はい、論文にも載せていますが、小容量の記憶をデータとして保存したものです」

司は簡単にそれだけ説明した。

「本日はわざわざお越し頂いたのに申し訳ございません」

「いえ、構わないですよ。また会いましょう」

その時、司は何か違和感を覚える。

「そうですね、また会いましょう」

そう返しながら、司は一刻も早くここを離れる必要があると考えていた。

そのため、軽く頭を下げた後、足早に研究室を出た。

とはいえ、まだここに来てから10分も経っていない。

待ち合わせの時間まで凛と零次を待つ必要がある。

その間、動かずに待ち続ける事は危険を感じた。

そのため、司は少しだけ考えた後、待ち合わせの時間まで凛と零次を捜す事にした。

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