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7. 畏怖

 中城たちがサイレンを聞いた同時刻、同じようにこのサイレンを聞いていた者たちがいた。

 それはサッカー部でクラスでもかなりもてている茶髪の森田拓也(男子20番)と、取り巻き女子の榎並真千佳(女子3番)と錦織千尋(女子16番)、的場日向(女子20番)であった。

 が、中城たちとはまるで状況が違っていた。

 先ほどまで一緒にいた森田と同じサッカー部の榎本亮(男子3番)が新名を喰らったのと同様の怪物に襲われたのだ。

 榎本が喰われたところはこの4人の誰も見ていなかったが、木々の向こうから聞こえる狂った人間らしき悲鳴と肉が千切れる音や骨の擦れる異様な擬音により榎本が喰われたことを確信していた。

 森田は榎本を助けようとナイフで後ろから怪物を突こうとしたが、怪物から飛び出してきた触手(どこからは暗くてわからなかった)が、森田の腹に直撃したのだ。

 後ろから不意をついたはずが、怪物にはなぜかばれていた。

 森田はこのことについて考える暇もなく、他の女子3人が悲鳴を上げて逃げたのを見て、森田も一目散に榎本を見捨ててここまで逃げてきたのだ。

 ――草むらの中で震えながら隠れている4人が耳にしたのは怪物の足音ではなく、このサイレンだった。

 泣いていた的場がこの音に軽く悲鳴を上げたが森田が瞬時に口を押さえ、何とか声が怪物に聞こえることはなかった。


 ウー、ウー、ウー、ウー……


 およそ1分ちょっとだろうか――そのサイレンはすぐにやんだ。


「……ねぇ、今のって誰かいるってことかな?」


 錦織が目を赤く腫らした顔をしていた。

 つい今まで泣いていたのだろう。

 気持ちは森田にも痛いほどわかった。

 森田も的場のように号泣したかったが、自分がそうなってはどうしようもないと、とりあえずは我慢した。

 涙の元凶は榎本の死による悲しみによるものではなく、怪物への恐怖そのものだった。

 森田は正直これほどの恐怖を感じたのは生まれてこのかた17年間、初めてのことだった。

 どんなに恐ろしいホラー映画でも女をひきつけるエサだとしか考えていなかった森田は自分には怖いものなどなかったと考えていた。

 だが、あまりにも予想外の形でこの思考は破綻することになった。


「どーしよう……わたしたちわたしたち……」


 森田の隣で榎並が発狂しかけていた。


【残り44人】

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