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6. サイレン

「駄目だ、どこもかしこもジャングル……建物なんてありゃしねェ」

「人の気配もな」


 遅刻魔の辻修平(男子12番)と辻と同じ軽音部の財前響(男子7番)は首を横に激しく振る。


「いったい……いったい何がどうなってんのよ!」

「おっ落ち着いてよ、涼子ちゃん」


 あの宮島和幸(男子19番)のグループのひとりの鷹島涼子(女子12番)が身を乗り出した。それを必死に止めるのは同じグループの御子柴悠(女子21番)だ。


「……ケータイも通じねェし、とりあえずバス探すか」


 辻の呑気な口調に鷹島がさらにイラついた。


「俺ら5人だけじゃ心もとない。バス見つけりゃ他の奴らもそこにいるだろうよ」

「バスなんか見つけれる保障あんのかよ」


 あの騒ぎが起きる前まで爆睡していた陸上部の中城順輔(男子13番)が心配そうな顔をした。


「でっでもわたしたち5人だけがこんなことにいるのも妙な話だよね。他のみんなもこのジャングルのどこかにいるんじゃない?」

「おい、大声は出すな」


 御子柴が手を口にあてた瞬間、中城がそれを制した。


「……なんで? 中城くん」

「お前ら見なかったのか? バスが揺れているときに」

「……何の話だよ中城」


 中城はため息を漏らした。

 アレを見たのがこのメンバーの中で自分だけだったからだ。

 中城は同じ陸上部の神宮寺馨(男子9番)の隣で寝ていたのだが、あの揺れで目を覚ました。

 混乱の中、窓側の席だった中城が見たものは、この世ならざる恐るべき怪物だった。

 あの怪物があの新名朋江(女子15番)を外に引っ張り出し、喰らったのだ。

 中城はその光景をまるで以前見たカナダのスプラッター映画(名前は忘れた)のようだと感じた。

 新名の肉片は中城の目の前に飛んできた。

 ただそれは窓に付着し、なんとかじかに触れることだけは回避したが。

 それ以後の記憶はあいまいで気がついたらここにいた。

 同じ状況に陥っている仲間が4人もいたのは心の安らぎにはなったが、何も解決しちゃいない。

 あの新名を喰らった化け物、このジャングル……。

 中城は他の4人にあの怪物のことを告げ、頭がおかしいのではと思われると考えたが、状況が状況なのでそのまま4人に伝えることにした。

 中城はきっと自分は笑いものにされ、信用されないだろうと覚悟したが、驚くことにだれひとり例外なく、中城の話を信用した。


「へへ、どーやらとんでもねーのに巻き込まれちまったな俺たちは」


 辻は青ざめた顔でつぶやいた。

 そのときだった。


 ウー、ウー、ウー、ウー、……


 5人はビクッと身体を反応させた。

 どこからか聞こえてくる。

 それは、消防車がよく鳴らしている音、サイレンだった。


【残り45人】

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