4. 混乱
ドガガガガッ
ドドドドドドッ
ズズ――ンッ
「うわあーッ」
「ああッ」
「ヒィッ」
あちこちで悲鳴が上がる。
上に置いていた荷物やら旅行バッグやらが次々に雨のごとく降りかかってきた。
「いってェェ」
「きゃーッ」
浜島自身、状況が全く把握できていなかった。
バスはジェットコースターさながらの動きをして、生徒たちをさらに混乱させた。
「達郎くん!」
雪藤が浜島の胸に飛び込んできた。
雪藤の年齢相応の胸が浜島にあたるがそんなことを気にかけれる状況ではなかった。
「詩歌、落ち着け! 大丈夫だ!!」
浜島は雪藤に半ばそう叫び、揺れるバスの中誰かの大声を聞いた。
「おい、何だアレ!!」
誰の声かは荷物が暴れまわる轟音で把握できなかったが、その意味だけは浜島はしっかりと捉えることが出来た。
浜島は無意識に窓の外を見た
そこはさっきまで走っていた地元の街ではなかった。
暗く、渦に巻かれた、何にも比喩できない気持ち悪い世界――
……どくんどくんどくんどくんどくん。
心臓が高鳴り始めた。
それは浜島自身の心臓の鼓動であるが、外から聞こえるものと錯覚してしまった。
高鳴り始めたのにはワケがあった。
浜島と雪藤が座っている席の窓からこの奇妙な世界とともに、また新たなモノが蠢いていた。
いままであんな生物はこの目で見たことはない。
頭が3つ、足は6本、羽も生えていて、おまけに触手の様なものまで――
いつだったか映画でケルベロスというものを見たことがある。
あえて比喩するならそれが一番だったが――
仮想世界で見るのと現実世界で見るのとではワケが違う。
「ギャーーッ」
「イヤアァアーッ」
突然何かが割れる音がした。
バスの窓以外にはないだろう。
突然浜島の目の前を何かがニュッと通っていった。
そして次の瞬間、その何かはひとりのクラスメイトとともに割れた窓――すなわち浜島と雪藤の席の窓から飛び出していった。
そのクラスメイトは先ほどまでババ抜きで騒いでいた、でもそのグループの中ではおとなしめの新名朋江(女子15番)だった。
それが本当に新名だったのかと問われれば浜島はおそらく自信はなくなるだろうが、この時点ではハッキリ確信していた。
新名はそのまま外に飛ばされたまま、浜島の前に二度と姿を現すことはなかった。
【残り45人】




