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14. 後悔

 浜島達郎(男子17番)と雪藤詩歌(女子22番)は息が切れるまで走り続けた。

 ふたりはバスの方を見ることはなかった。

 誰がクラスメイトが喰われている様を見たいと思うだろうか。

 あのバスには少ないとはいえ、浜島たち以外に5人も人間がいた。

 こんな不気味なジャングルでこの人数はとても心の安らぎとなっていた。

 だが――

 一瞬にして分散――いや、全滅してしまったのだ。

 体育会系の野球部の佐藤昌平(男子8番)も西島圭一(男子15番)も、木村遼太郎(男子06番)も藤原蛍(女子18番)も。

 ただ唯一行方がわかっていないとすれば吹奏楽部の白州雛乃(女子09番)だが彼女だってわかったもんじゃない。

 浜島の見ていないところで喰われていたのかもしれない。

 どれくらい走っただろうか――

 詩歌の息切れが激しくなってきた。

 いくらバトミントン部の部長といえども、この状況では疲れがあったらしい。

 それは浜島も同じだった。


「……少し、休むか」


 浜島と詩歌は大きな木の木陰に腰を下ろした。

 浜島は実は後悔していた。

 やっぱり、あのとき佐藤を救うことは出来たんじゃないだろうか。

 あの頭に向かってバスケで鍛えた足での蹴りの一発でもくらえば怪物は昏倒していたのかもしれない。

 木村だってもっと説得――いや、しがみ付いてでもすれば……

 そんな後悔が渦を巻いて浜島に襲いかかる。


「達郎くん、落ち込まないで」


 詩歌がやさしい声で浜島に話しかけた。


「あの状況じゃどうしようもないよ。どっちを選んでもあたりもハズレもないと思う。佐藤くんもきっとわかってくれてるよ」

「……ごめん」

「謝りたいのはこっちだよ。全然役に立てなくて……震えてばっかで……わたし」


 詩歌の声が泣き声になってきた。

 あのバトミントン部の主将の詩歌がこんな――


「……後悔ばっかしても仕方ないよな」

「……え?」

「……きっとどっかにいるはずだ。先生だって、みんなもきっと」

「…………」

「いつまでもクヨクヨしてても何にも始まらない」

「うん、そうだよ」


 ふたりの顔色が少し和らいだ。

 とはいえまだ不安や恐怖のほうが心を圧倒的に支配しているのは事実だ。

 だが、まだ互いに心を通わせる相手がいたのもまた事実だ。

 ふたりは今後の動向について話し合い始めた。


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