10. タカイ
揺れのせいで半分大破しているバスは深い密林の中でその形を歪ませていた。
今ここにいるのは総勢7人。たった7人だった。
揺れが収まったとき、浜島はもっといるような感じがしたのだがバスにいたのは7人だけだった。
浜島の目の前で食い千切られた新名朋江(女子15番)を除く他の38人のクラスメイトも、教師の乙井やバス運転手共々消えていたのだ。
残っているのは浜島達郎(男子17番)と雪藤詩歌(女子22番)、木村遼太郎(男子06番)と藤原蛍(女子18番)、体育会系の野球部の佐藤昌平(男子08番)と西島圭一(男子15番)、それに天然の吹奏楽部部長の白州雛乃(女子09番)だった。
「おい、佐藤。そっち、どうだ」
「全然駄目だ。こんなんでどうやって降りろってんだよ」
本来ならこのふたりにもうひとり須藤誠(男子10番)がいるのだが、あいにくその須藤は他のクラスメイト共々行方不明だ。
「畜生……いったいなにをどーすりゃこうなるってんだよ」
実はバスは地面にあるわけではなかった。
密林の中のひとつの大樹に引っかかっていたのだ。
高さはどう見積もっても15mはある。
ここから飛び降りれば骨折は必死だ。
「さっきのサイレンって……消防車でもきたのかなぁ」
白州が呑気な顔して呟いた。
「消防車ならありがてェ話なんだがな」
「あのハシゴで助けてもらえるしね、ナハハ」
この状況で笑っていられる白州の神経を浜島は疑った。
「それにしても学校の近くにこんな森なんてあったか」
「学校の近くとかもうそういう次元じゃねェよこりゃあ。佐藤、お前も見たろ。あの怪物。もうここは日本でも何でもねェんだよ」
「西島、あいにく俺はファンタジーは嫌いでな。どーせもうすぐ助けがくるさ、消防車もきてんだろきっと」
「だが、消防車にしてはあのサイレンはかなり不気味だろ。変な間隔で1分ぐらい鳴らしといて、そのあげくに距離感もまるでなかった。近づいてもなかったし遠ざかってもなかった」
浜島は正直西島の言っている事に一理あると思った。
本当にその通りだったからだ。あのサイレンは不気味だ。
「だがよ、西島――」
佐藤がそういいかけた途端、突然バスが揺れた。
だがさっきの揺れとはまるで違った揺れだった。何かに押されたみたいな……
「おっおい、なんだよ今の揺れ」
浜島はさっきのとうにとっさに雪藤を抱いた。
横を見ると木村遼太郎が藤原蛍に同じことをしている。
だが、突然その藤原が叫びだした。
「いやああああああ!!」
「おっおい、どうしたんだ! 蛍!!」
その場の全員が藤原のほうを向いた。
だが、藤原は前を指差すだけだった。
「あ……っあれあれ……」
運転席の前にいた佐藤と西村がその指差す方向を向いたが、特に何もなかった。
「……えっなっ何?」
「??」
「蛍! 何があったんだ!?」
その木村の声を皮切りに突然バスが前方に傾きだした。
【残り43人】




