1-19 看病
直の食事が終わった後、自分も同じようにおかゆにする。
そして早々と夕食を切り上げて、直の看病をこなす。
「くしゅ」
「はい。チーして」
「チー」
食べている最中はそうでもなかったのだが、直は徐々に風邪の症状が出始めている。
特にくしゃみが止まらない。
くずかごはティッシュでいっぱいだ。
「くしゅ」
「はい。チーして」
「チー」
これを何回か繰り返す。
「そうだ、薬」
ここに至ってというべきか、一番先に思いつかなければならないことを今思いつく。
僕は救急箱を取り出し、市販の風邪薬を探す。
「あった。直、薬」
水を入れたコップと一緒に薬を渡す。
「薬、嫌だな」
「わがまま言わない」
「だって粉薬。錠剤は?」
「なかったよ」
それを聞いて、直は無表情で残念がる。
「とにかく我慢して」
「ん。でも」
「でも?」
「飲ませて」
「え?」
「お願い。お兄ちゃん」
必死すぎて、お兄ちゃんって呼んでいる。
「しょうがないな」
要求通り、僕は直に薬を飲ませる。
自分で飲んだ方がタイミングとか図りやすくていいと思うのだが、それは言わない。
「直。後、汗ふかないと」
「ん」
直の体は汗でぐっしょりになっている。
かといって、銭湯に行ける状態ではない。
なので、僕は汗拭き用のタオルを持ってきて直に渡す。
「はい」
「?」
しかし、直は首をかしげる。
どうして渡されたのかわからないといった感じだ。
「春、やってくれないの?」
「それはさすがに無理だよ」
僕はやんわりと断る。
「でも、背中とか届かない」
「背中?」
「うん」
直が見つめてくる。
結局、僕はその圧力に負けた。
「わかったよ」
「じゃあ、服脱ぐ」
「あ」
僕が止める間もなく、直はぽいぽいと服を脱いでいく。
羞恥心のない直は、僕の前でも平気で着替えをしてくる。
「拭いて」
パンツとブラの格好でうつぶせになる直。
妹とはいっても、さすがに平常心ではいられない。
手早くすませ、直にタオルを渡す。
「後はさ、自分でやって」
「ん」
直が恥ずかしげもなく、自分の体を拭いていく。
僕はその無頓着さに危機感を覚えつつも、いたたまれなくなって目を逸らす。
「春」
「何?」
「パジャマ着せて」
「え?」
確実に甘えたさんになっている直。
僕は困惑しながらも言う通りにする。
四苦八苦しながらも、パジャマを着せてあげる。
「ありがと」
「うん。でも、今日だけだからね」
「ん。後、手を繋いで」
ここまでくると微笑ましくなってくる。
「繋ぐよ」
「ん」
直が無表情で満足そうな顔をする。
そしてそのまま、直はすぐに眠りについた。




