2-17 ウノ(1)
昼休み。
いつものように購買のパンを求めにいった小倉くんが帰ってくる。
そして直と僕とが一緒に机を並べているのを見て、一言言う。
「今日は直がいるんだな」
「ん」
小倉くんは近くの席を借りて座り、指を折り数える。
「昼食のとき、兄妹が二週間ぶりくらいか」
「それくらいかな」
僕もつぶやく。
「そうだ、そうだ。前に直がいたときはスケッチを見せてもらったな」
「ん」
弁当を開け、昼食の準備を整える。
直と僕は中身が同じ。
今日の朝、直が料理をする宣言したため、直が作っている。
「やっぱり同じなんだな」
あはは、と笑いながら小倉くん。
「さて、じゃあ食べるか」
僕達二人はうなずく。
「いただきます」
「いただきます」
「いただきますっと」
「ところで直。今日はどうしたの?」
食べてる途中、僕は直に聞く。
「ん。綾が来るから」
「ん? 遠藤が来んのか。そしたら俺はここにいていいのだろうか」
パンをもそもそと口にしながら小倉くんが言う。
「いや、気を使いすぎだよ。小倉くん」
「でも、幼馴染のおまえはいいけど、俺なんかは遠藤みたいなお嬢様がいると緊張してしまうんだよ」
確かに綾がうちのクラスに来るときは、小倉くんは一歩引く。
他のクラスメイトが騒ぎ立てるのを尻目に、彼は違った対応を取る。
「小平さんも来るよ」
「え、小平も来るのか?」
綾の親友である小平さんも来るという。
僕とのあいだに誤解があった小平さんとは、昨日関係がたいぶ改善された。もっとも、小平さんに新たなトラウマを植えつけてしまったけど。
「小平が来るのか。なら俺がいてもいいのかな」
というのは、小倉くんと小平さんが空手部で知り合いだからだろう。
僕とは違い、小倉くんと彼女の関係は良好だ。
「あ、来た」
直がつぶやき、僕達はそちらを見る。
ドアの前にいたのは綾と小平さん。
二人が満を持してうちのクラスに入ってくる。
そして二人の美少女がクラスに入ってきたことで、ざわざわとした空気ができあがっていく。
「春、直。来ちゃった」
目の前にはお嬢様のふりをした綾。
小平さんを引き連れて、ここの席までやってきた。
「今日は、真由が春を誤解していたとのことでどうしても謝りたいって」
「綾。私そこまで言ってない」
綾にひじをつく小平さん。
綾は上品に身をよじり、その光景を見たクラスの男子達が騒ぎ立てる。
やはり二人は注目を集めている。
綾だけでなく、小平さんも相当の美少女なだけあって注目度が高い。
「綾、座って」
直が言う。
「うん」
「真由も」
「わかった」
二人が座り、五人が班を作るような形になる。
並びは直が上座のような位置に座り、そこから左に綾と僕、右に小平さんと小倉くん。
「私達もここで食べていい?」
「うん、いいよ」
綾が聞くので、僕は答える。
「もう先にご飯食べていたけどね」
こうして、五人で話をしながら昼ご飯を食べていく。
このとき、小平さんが僕に正式な詫びを入れたりして、へんに盛り上がったりもする。
そして昼ご飯を食べ終えて一息ついた頃、小倉くんがウノを取り出して言う。
「よし、二人の誤解もなくなったことだし、仲直りの印としてこれでもしようか」
「ん」
直がいち早くうなずく。
「私もやろうかな」
綾も賛同する。
一応、当事者である小平さんと僕。
もちろん反対するわけがない。
「ルールは大丈夫だよな。じゃあ始めるぞ」
カードを配り終えた小倉くんが親役のように仕切り、ウノがはじまった。




