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3-4 直の質問






 放課後、直と綾の三人で帰る。

 女の子二人は僕の前を歩いていて、仲良く会話中。

 いつもの光景なのに、僕はそれを微笑ましく見守っている。


 これは僕が生み出した問題に、一定の結論が出たおかげもあるのだろうか。

 だからほんの少しだけ気分が良い。

 少しだけというのがポイントだ。


「それで綾」


 直が綾に話しかけている。


「ん? どうしたの? 直」


「最近、お昼ご飯、春と食べてる?」


「あ、うん」


「屋上?」


「そうだけど」


 話の内容は、どうも綾と僕のことに変わったらしい。

 考えてみれば、最近の僕達の行動は奇異に映るかもしれない。

 小倉くんも言っていたように、仲睦まじく思われていそうだ。


「だけどね、直」


「何?」


「べ、べつに春と一緒に食べたくて食べてるわけじゃないのよ。そういう事情が出来ているだけなんだから」


 それを聞いて、僕はため息をつく。


 ――ため息?


 僕はどうしたのか。

 何を期待してるんだろう。


 綾と僕は幼馴染。

 秘密の遊戯という関係性があっても、僕達が幼馴染であることには変わりはない。

 それ以下でもそれ以上でもない。


 どこまでも交わらない平行線。

 然るべきフラットの直線。

 

 そもそもすべての物事にはしかるべき距離があるように、綾と僕との間にも幼馴染というしかるべき距離が存在しているのだ。

 

 そしてそれを意識していないと、まれに息苦しく感じてしまう。

 鬱々とした気分とは違うけど、それと多少近い感覚があって困惑する。

 一日を思い返す時に感じる、ほんの少しの寂寥感ともどこかに似ている。


「綾」


「……」


「本心?」


 直がすべてを見透かしそうな瞳で綾を見つめる。

 表情が変わらないのもあってか、やけに迫力がある。

 綾が少しだけたじろぐ。


「綾」


「な、何?」


「ストーリーは始まらないの?」


「え?」


 少しだけ会話が止まる。

 まるで定められているかのように。


「なんでもない」


 やがて直が口を開く。


「なんとなく聞いただけ」


「そうなの」


「そう」


 直が緩めていた歩を進める。


「あ、待って」


 それから直と綾は会話の糸口を探す。

 重要な会話を切り出した後は、タイミングがなかなか見つからない。

 けど、程なくしてハロウィンパーティーの話に落ち着き、僕も話に加わる。


「へぇ、ハロウィンパーティー盛り上がったんだ」


 綾が嬉しそうに言う。


「ん。盛り上がった」


「そうだよ、綾。かなり盛り上がったんだ」


「しかも、飛び入り参加で真由が参加するなんておかしい」


 綾は、あはは、と笑いを漏らす。


「うん。僕もびっくりした」


 そう言いつつも、あることを思い出す。


「そうだ。僕達三人でするハロウィンパーティーはどうなった?」


「あ、そんなこと言ってたっけ」


 綾も記憶を引っ張りだそうとする。


「明日」


 直がぽつりと言う。


「明日?」


 僕が聞く。


「そう、明日。明日の昼休み、天気が良かったら屋上でやる」


「ほんと?」


 綾が半信半疑で聞く。


「うん」


「ほんとにいいの?」


「いいよ。当たり前だって」


 僕も賛同する。


「直。概要は?」


「ん。それで用意するものは――」


 直の声がやにわに響いてきた。






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