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余章|樹海の奥にて
時間は、流れていた。
だが、数える意味はない。
魔女は、樹海の奥に立っている。
立っている、という表現も、正確ではない。
そこに在る。
それだけだ。
かつて、戦があった。
名を与えられ、
役割を押しつけられ、
多くを滅ぼした。
それも、過ぎた。
今は、
誰にも名乗らない。
誰にも語らない。
境界は、広い。
そして、同じだ。
人は、来る。
理由を携えて。
助けを求める者。
奪おうとする者。
試そうとする者。
魔女は、選ばない。
向きを、見るだけだ。
欲を向けた者は、
先へ行けない。
何も求めなかった者は、
戻る。
それだけのことを、
何度も、何度も、繰り返す。
ある時代、
人は越えなかった。
それは、珍しいことだった。
理解したのではない。
賢かったのでもない。
ただ、
扱った。
説明できないものを、
説明しようとしない。
その選択を、
魔女は、覚えている。
記録する必要はない。
語る意味もない。
境界は、在る。
人は、来る。
そしてまた、
去っていく。
それだけで、
世界は、続いていく。




