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名を持たぬ魔女  作者: ささこ
暦200編

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第七章 第2話|理解という名の前進

会議の席には、軍人だけが集められたわけではなかった。


将校の列の向こう、

長衣を纏った学者や、魔術師、記録官が並んでいる。


「原因が不明なままでは、前に進めません」


口火を切ったのは、帝国学院の学者だった。


「不明というのは、理解していないというだけのことです。

 現象があるなら、必ず理屈があります」


誰も否定しなかった。

それは帝国の価値観そのものだった。


「森が原因だと?」


将校が問う。


「可能性が高い」


学者は、ためらいなく答えた。


「地形、魔力の偏在、未知の生態系。

 どれか、あるいは複数が重なっているのでしょう」


魔術師が、補足する。


「護符や結界で対処できるかもしれません。

 少なくとも、試す価値はある」


「試した結果、戻らなかった部隊もありますが」


記録官が、慎重に口を挟む。


「それは、対策なしで踏み込んだからです」


学者は、即座に返した。


「備えれば違います。

 次は、違う結果になる」


その言葉に、誰も反論しなかった。


帝国は、試みる国だ。

理解できないから止まるのではなく、

理解するために進む。


「地点は複数あります」


将校が、地図を示す。


「すべて同じ対応を?」


「ええ」


学者は、うなずいた。


「性質が似ているなら、対処も共通化できます」


魔術師が続ける。


「小規模で。

 護符を持たせ、魔力の変動を記録する」


「今回は、撤退条件も明確に設定しましょう」


それは、合理的な提案だった。


無謀ではない。

感情的でもない。


むしろ、慎重ですらある。


「……失敗したら?」


誰かが、低く問う。


学者は、少し考えてから答えた。


「失敗の仕方が分かります」


その場に、沈黙が落ちた。


失敗を前提にすること自体が、

帝国にとっては前進だった。


「よろしい」


上官が、決断を下す。


「試みる」


誰も異議を唱えなかった。


それは、戦争のためではない。

領土のためでもない。


理解のためだった。


会議が終わり、将校は一人、地図を見つめる。


森は、変わらない。

動かない。


それでも、帝国は進む。


理解できると、信じて。


制御できると、疑わずに。


越えられると、

まだ思っていた。

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