表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名を持たぬ魔女  作者: ささこ
暦200編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/39

第一章 第2話|境界

昼に近い時間になっても、少年は森の中にいた。

村の森を一通り巡り終え、知っている場所はすべて確かめた。


結果は同じだった。


少年は立ち尽くし、深く息を吐いた。

探し尽くした、という感覚だけが残る。


籠の中身は空に近い。

治療師が挙げた名と一致するものは、ひとつもなかった。


ここまで来て、ようやく、少年は顔を上げた。


霧の向こう、木々が密になり、影が深くなる方向。

村の森の続きに見えて、はっきりと違う場所。


樹海だ。


父の言葉が、はっきりと思い出された。

あそこには、入るな。


理由は聞かされていない。

ただ、淡々と、何度も言われてきた。


少年は一歩、後ずさる。

戻れば、村に帰れる。籠は空でも、今日という日は終わる。


だが、その先を思い浮かべた瞬間、足が止まった。


幼馴染の顔が浮かぶ。

熱に浮かされた目、力の入らない手。


少年は視線を落とし、籠を見た。

空の底が、やけに深く感じられる。


「……少しだけなら」


声に出したことで、逃げ道がなくなった気がした。


境目に近づく。

線が引かれているわけでも、柵があるわけでもない。ただ、空気が重くなる。


境界だと、直感的に分かる。


少年は立ち止まり、もう一度だけ振り返った。

霧の向こうに、村はまだ見えている。


父の声が、最後に頭をよぎった。

そこには理由も説明もなく、ただ静かな拒絶があった。


少年は目を閉じ、そして開いた。


一歩、踏み出す。


空気が変わった。

音が遠のき、湿り気が増す。視界は霧が薄いはずなのに、どこか狭く感じられた。


少年は、振り返らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ