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名を持たぬ魔女  作者: ささこ
暦200編

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第一章 第1話|霧の村

樹海の縁にあるその村では、朝はいつも霧が出た。

夜のあいだに森から流れてきた湿った空気が、家々の間に溜まり、陽が高くなるまで消えない。


少年は籠を提げ、村の外れへ向かって歩いていた。

籠は祖母が使っていたもので、持ち手の部分が少し擦り切れている。中身は空だ。


薬草を探すのは、今日で三日目になる。


幼馴染が倒れたのは、数日前のことだった。

最初は熱だけだったが、夜を越えても下がらず、言葉も次第に途切れがちになった。治療師が呼ばれ、家の中には薬の匂いが満ちたが、状況は良くならなかった。


「効くとすれば、これか、これだな」


治療師はそう言って、いくつかの薬草の名を挙げた。

少年はその名を覚え、何度も頭の中で繰り返した。


「昔は、この辺りでも採れたんだが……」


その先は、言葉にならなかった。

代わりに、治療師は小さく首を振った。


少年は何も言えず、ただ頷いた。


村の周囲の森は、よく知っている。

子どもの頃から入り、遊び場でもあり、薪を拾う場所でもあった。季節ごとに生える草や、実のなる木の場所も、大体は頭に入っている。


だから、最初の二日は迷いなく探せた。


それでも、欲しいものだけが見つからない。


少年は森の中で足を止め、籠の中を覗いた。

役に立たない草が数本、雑多に入っているだけだ。


霧の向こう、木々が密になり、色が濃くなっていく方向があった。

村の森とは、どこか違う。


だが、そのことを深く考えるのは、やめた。

今日はまだ、村の森を探し切っていない。


少年は籠を持ち直し、歩き出した。

霧は静かに流れ、村はまだ近くにあった。

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