【第88話】時の光
「その声・・・。なんでリリーが?」
僕はノクタリオスから目を話すことが出来なかったが声と雰囲気だけで今現れたのがリリーだと理解する。
「それは当然私もニクスの半身であるノクタリオスの望みを叶えるためです。」
リリーがそう言い放つとノクタリオスはぎりぃ!っと強く歯を食いしばる。
「忌々しい・・・!」
「忌々しいだって?それは変ではないかノクタリオス。お前は『自身を殺せ』と言う。僕達はそれを叶えるために力を鍛え、頼れる仲間を募りこうしてお前の『望みを叶えようと』努力しているんだ。お前は単に羨ましいだけではないのか?」
「うるさい・・・、うるさい・・・、うるさい・・・!黙れよ!!」
ノクタリオスには相当耳障りだったのかかなり激昂しているのが分かる。
「僕を黙らせたいのなら力付くでやってみろよ!!」
僕は治癒してもらった左手も全力で使えることを確認するように両手を使いながら一気に切り込む。
ノクタリオスも再度【真紅の満月の剣】を唱え握りしめた真紅の剣で僕の漆黒の剣を受ける。
刃がぶつかると同時に凄まじい衝撃波が発生する。
だが、それでも関係ない。
僕は玄武様の力により生まれた新たな力も利用し波状攻撃を仕掛ける。
前回とは違い、目も身体もより強靭になり、更に『死の匂い』を感じ取る力も相まりノクタリオスの攻撃は尽く回避出来る。
一向に当たらない攻撃に焦りを見せ始めるノクタリオス。
「何故だ!何故当たらない!!」
「カチ・・・カチ・・・」と更に時計の針が進むような音が聞こえる。
それとは真逆に僕の攻撃は徐々に徐々にノクタリオスに傷をつけ始める。
「それはお前が進むことを諦め、死を望んだからだろう!ノクタリオス!!」
【黒砂の一撃】
僕は全身全霊の一撃をノクタリオスに放つ。
当然ノクタリオスもそれを受けようとするがそれをリリーがさせない。
【時戻し】
再び時戻りの魔法でノクタリオスの握っていた武器がかき消され、術が無くなったノクタリオスの身体に【黒砂の一撃】が入る。
【黒砂の一撃】はただの斬撃ではない。
流動的な黒砂の剣がノクタリオスに直撃した瞬間、外からも中からも弾ける削り取る一撃だ。
明らかにノクタリオスに致命傷が入ったと思われた瞬間だった。
耳元で聞こえていた時計の針の音のようなものに変化が現れる。
「カチ・・・カチ・・・ガチャン!!」
その瞬間僕は別の空間に飛ばされていた。
完全な身体になっていたはずの僕の身体は僕、レビン、命の逆巻時計に別れ、対面にはノクタリオスが座っていた。
「ああ、そうか。ここは・・・。」
「よう。もう一人の俺。」
ノクタリオスが僕達に話しかけてくる。
その声に悪意や害意は無かった。
「ノクタリオス。」
「悪かったな。色々と俺に付き合ってもらって。」
「良いんだ。元はと言えば君は僕でもある。僕のことなら自分で解決するのが筋じゃないか。」
「はん。本当に可愛げのないガキだ。だがお陰で、なんとか俺の命の形は正されたようだ。」
「という事は君にもあの『音』は聞こえていたんだね?」
僕はあの時計の針のような音はノクタリオスの命の形が正されていく音だと考えていたがどうやらその様だった。
「ああ、お陰様でな。これで俺もようやく呪いから解放されて逝くことが出来る。」
「そうか・・・。真っ直ぐ寄り道しないで家族のもとに逝けることを願っているよ。」
「どうかな・・・。俺はあまりに自分勝手なことをしすぎた。到底彼奴等のもとに逝けるとは思ってもいないさ。」
下を向きながら答えるノクタリオスに声がかかる。
「其の為に私がここに居るのです。」
「リリー!?いつの間に。」
「私もこの力を手に入れることになったのはノクタリオスと長き時を共にし、そしてニクスの身体の一部となった命の逆巻時計のお陰です。」
リリーは自身の力の根源が命の逆巻時計であることを話す。
「はっ、やっぱりそうか。俺とニクスに干渉できるのが不思議でしょうがなかったが、やっぱり時計のせいか。」
「はい。私の使命はノクタリオス、貴方を正しく導くことだと気が付きました。その代償が私の力のすべてを使ったとしても、貴方を導きます。」
リリーはしっかりとノクタリオスの目を見て言う。
「だけどそれって・・・!」
僕がそう言うとリリーはそれを遮る。
「大丈夫、命までは取られません。私の力を返すだけだから。」
「・・・すまないな。手間を掛ける。」
ノクタリオスは頭を下げる。
「良いのよ。私はニクスの姉よ?貴方がそのニクスの半身なら実質私は貴方の姉みたいなものじゃないの!」
そう言ってりりーは昔のように笑った。
「準備は良いわね?」
「ああ、頼む。」
そうしてリリーは全マナを消費する形で最大の魔法を唱える。
【時の許し】
リリーが唱えた魔法により景色がグルグルと変わり始める。
それはノクタリオスが生きてきた時代を遡っているようだった。
そうしてある光景になるとそこで景色がピタリと止まる。
「ああ・・・、あああ・・・。」
そういい、ノクタリオスは泣き始めた。
「お疲れ様。ノクタリオス。次は幸せな人生を。」
僕がそう言うとノクタリオスの身体は光となって消えた。
その瞬間僕達は先程まで戦っていた場所へと意識を引き戻される。
「ニクス君!!レビン!!」
ランスロッテ様が僕達を抱きかかえて泣いていた。
「なんでランスロッテ様が泣いているんですか・・・。あ、それよりも!」
僕はガバっと起き、リリーの元へ駆け寄る。
「リリー!!」
どうやらリリーも意識を失っていたようで他の同じ衣装を纏った者たちに抱きかかえられていたが同じ様に目を覚ましたようだ。
「ニクス・・・!!!レビン・・・!!!」
僕達は抱いて泣き合う。
「ノクタリオスは無事に逝けたのかしら?」
「どうやらその様だね。リリーのお陰だよ。でもリリーは・・・。」
「ふふ、確かに力は使えなくなっちゃったみたい。でもそれってニクスと同じブランになっただけでしょ?」
「あはは。それもそうか。」
僕達が抱き合い笑い合っているとランスロッテ様が近づいてきた。
「先程ノクタリオスが光となって消えていったのを確認したが、それでは・・・。」
「ええ、ノクタリオスはきちんと命の形が元に戻って自身が最も望む形で旅立つことが出来ました。」
「そうか。逝くことが出来たのだな・・・。」
「はい。皆さんのお陰です。」
「そう言えば君の時計はどうした?」
「ん?ああ。多分ですがノクタリオスが持っていっちゃいました。」
「・・・そうか。」
こうして無事にノクタリオスの命を正すという戦いは終わりを告げる。




