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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章~アルヴェリオン共和国編~

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【第85話】使命【番外編】

「リリー様、失礼致します。」

巫女服を纏った黒髪の女性がリリーの部屋の前に座り声を掛けた。


「どうぞ。準備はできております。」

私は時戻しの巫女としての正装である巫女服を纏い呼吸を整える。


「失礼致します。本日は大変な日になりそうですね。」


「ええ、まさかこんなにも早くその時が訪れてしまうとは思ってもおりませんでした。」


「そうですね。本来でしたらば後3年後のお話だったというのに・・・。」

黒髪の女性は憂いた様子で声を掛けてくる。


「致し方のないことです。私はそのためにおおよそ2年前より修行を積んできました。可能な限り一度で終わらせたいと考えております。」


そう、私がこの巫女服を纏うようになったのはおよそ2年前の時だった。

魔法適性が回復魔法ではなく『時戻しの魔法』の適性があるとわかった時にまで遡る。


「リリー、今日が例の向かえの日だ。準備は大丈夫かい?」

お養父様とお養母様は何度も何度も心遣いをしてくれている。


「ありがとうございます。お養父様、お養母様。私は大丈夫です。」

にこりと笑い返答をする。


「まさかこんな事になるなんて。君も、君の弟も運命のいたずらがすぎる気がしてならない。」


「いえ、むしろ私は感謝しております。こうして自身のやるべきことが目の前にはっきりと示されるんですもの。迷う必要がありませんから。」

そう言葉にした時だった。

突如として空間がネジ曲がり、そこから一人の女性が現れる。

その人はニクスのように綺麗な真っ黒い夜空のような紙をしていて、見たことが無い服を纏っていた。


「はじめまして。私は『大社大和(おおやしろやまと)の国』で『転移』を司る巫女であり、今日リリー様をお連れする案内人でございます。」

そうしてその人物は深々とお辞儀をする。

そのお辞儀はとても綺麗で見惚れてしまうほどだった。


「私がリリーです。今日から宜しくお願い致します。」

私もお辞儀をし返す。


「お話には聞いているとは思いますがこの【転移の門】を潜ればその瞬間より関係各所との接触以外は一切絶たれます。それは肉親であろうと兄妹であろうと関係なくです。ご用意はよろしいですね?」

最後に猶予を持たせてくれたんだと思うその一言に感謝し、お養父様とお養母様に走っていく。


「お養父様、お養母様。私は、リリーは短いながらもヴァリエストを名乗ることが出来たこと、大変名誉でした。そしてお二人が親であってくれたことに深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。」

ぎゅっと抱きしめると二人も私を優しく抱き返してくれた。


「ああ、リリー・・・。私たちも短い間であったが君の親であれたこと、本当に誇りに思う。きっと今まで以上に大変なことが待ち受けているとは思うが君ならやり遂げられると信じている。気を付けて行ってきなさい。我が愛娘よ。」


「はい。」

私は流れる涙を拭き背筋を伸ばし巫女の下に行く。


「では参りましょうか。」


「はい。お願いします。本当にありがとうございました。」

私は再度義理とはいえ愛情を注いでくれた両親に向かい誠心誠意の礼を述べ、そして門をくぐる。


門の先はまさしく異国であった。

「ここは?」


「ここは『大社大和(おおやしろやまと)の国』でも神域とされており、巫女を名乗るものしか入れない場所となります。さあ、どうぞ。『時戻し』の巫女見習いよ。」


「リリーをお連れしました。」


「入れ。」


そうして案内された場所の最奥の間に一人の老女が座っていた。

「来たか。『時戻し』の巫女見習いリリーよ。私はここで暮らし、日々修行を行っている巫女たちの責任者とでも言っておこう。『時読み』の巫女だ。よろしく頼むよ。」


「『時読み』の巫女様・・・。」


「座りなさい。中々大変な思いをしてきたようだね。それにこれからもかなり大変な運命が待っていそうだね。」


「『時読み』ということは未来が分かるのですか?」


「ああ。だが今だお前の未来はボヤケている。今後の過ごし方次第でその姿もはっきりと見ることが出来るだろう。弟の為に、世界の為に頑張ると良い。」


「・・・!精神誠意を尽くして頑張ります。」


それから私は修行に明け暮れることになる。

ただ非常に厄介なのはここに巫女と呼ばれる存在は居るけれども、皆バラバラの特別な力を持つ者たちばかりで同じ力の者たちは居なかった。

なので最終的に自身の力の手本となるものが居ないのだ。

だがそれでも覚えるべきこと、やるべきことはたくさんあった。


「何を持ってしても基本的なのはマナの緻密なコントロール、そして自身と向き合うことだ。」


マナのコントロールについては指導してくれる者たちが居た。

幸いにも自身はマナのコントロールにかけてはかなり上位の成績になるようで先輩巫女達から非常に褒められた。

だが自身と向き合うことが非常に難しかった。

私のことを考えようとはするが、その何処かに必ず弟であるニクスが居る。

自分一人でなし得たことは数少ない。

必ず隣にニクスが居たのだ。

ましてや私が手に入れた『時戻し』の性質はニクスにも関係しているという。


「時読み様。私はどうしたら良いのでしょうか?自身を見つめる時必ず弟の存在があります。私一人では無いのです。」


「ふむ。ではお前は今後自身だけではなく弟のことも中心に考えを回してみれば良い。その力は誰のために?何のために?その力の源に弟が居るのならば居させてやればいいさ。」


その言葉を頂いてからの成長は著しかった。

11才のある時だった。

遂に『時戻し』の力が目覚める。


「これが、『時戻し』の力・・・。」


「うむ、見事なり。この時を持って見習いをから正式に『時戻しの巫女』を名乗るが良い。おめでとう。」


「ありがとうございます。時読み様。これからも精進致します。」


そして日々研鑽を積み、12才の誕生節も過ぎたある日のことだった。

ある夢を見る。


「ここは・・・?」


「久しぶりよの。リリーよ。」


「貴方は・・・。命の逆巻時計様・・・?」


「左様。今日は伝えることが合ってな。端的に言うぞ。時の進みが早くなった。奴が目覚める。」


「え!?それって・・・!!」

ガバっと目が覚める。

夢であったが明確ではっきりとしていた。

私は急いで時読み様の下に行く。


「失礼します。時読み様。ご相談したいことがあります。」


「来たか。私もお主に言わねばならぬことがある。どうやら時の流れが早くなったようだ。」


「時読み様も見られたのですね。」


「という事はお主もか?」


「未来を見たわけでは有りませんでしたが警告がありました。」


「そうか。それで十分だ。着替えなさい。準備をするぞ。」


「はい。」

そうして私は『時戻しの巫女』としての使命を果たすべく支度をする。


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