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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章~アルヴェリオン共和国編~

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【第84話】夢

僕はその日いつも以上に深く深く眠りにつき夢を見た。

それはまるで現実と区別がつかないような光景が目の前に広がっていた。

「ここは・・・?」


「良く来た。」

大きな時計の前に座る一人の老人。

その声や容姿から男か女かは判別できなかったがそれは明らかに老いているがそれが誰かはすぐに分かった。


「『命の逆巻時計』?なんだって君が・・・?それよりその姿は?」


「ふむ。流石は文字通り私の『器』となった存在。何も言わずとも私の正体に気が付くか。」


「まあね。それよりもさっきの質問なんだけど。」

僕は移動しその老人の前まで行きその老人と目を合わせるように座る。

だが不思議なことに顔を覗いても顔が『認識』出来ない。


「昔話しをしよう。」

『命の逆巻時計』は僕の質問には答えず勝手に話しをしだす。


「その生命は早々に命の火が消え、怨嗟の気持ちを持ちながら死の淵に付いた。そしてその生命は輪廻に乗ることが出来ず魂がまず二つに割れる。そしてもう一つは更に三つに割れた。」


「それって僕達とノクタリオスの事かい?」


「左様。」

『命の逆巻時計』は返答こそしたがやはり一人で話を続ける。


「だがその最後に割れた魂のうち一つは前世と呼ばれる物の所持品であった一つの『懐中時計』に魂が移り、物でありながら命を宿すことになった。」


「それが君だったね。」


「うむ。」


「その魂ある懐中時計は長い長い年月を行きてきた。それも半端な魂の状態で。物にも慣れず、生き物にも慣れず半端な状態だった。」

僕はこの時計の物語を聞くことにする。

僕の近くにはいつの間にかレビンもやってきていた。


「おう、邪魔するぜ。」


「ふむ。話を続けよう。その物にも生き物にも慣れなかったものはただ其処に有りて気が遠くなるほどの年月を過ごした。するとある時に最初に別れた方の命がこの世に生まれる。」


「ノクタリオスだね。」


「そう。ノクタリオスは血が滴るような真っ赤な満月の日にその生を受けた。」


「それが『真紅の満月』・・・。」


「だが幸運なことに生まれたばかりのノクタリオスは一人ではなかった。他のものとは異なるがそれでも一心に愛を注ぎ、育ててくれた女が居た。ノクタリオスには母が居た。」

それは衝撃だった。まさかノクタリオスに育ての母親がいるとは思いもしなかった。

だが、不思議に思ったことがあった。


「貴方は何故それを知っているの?」


「私は元々ノクタリオスの所有物であったからだ。」


「え!?」


「ノクタリオスは生まれた時より私の魂の存在を認識していた。故に保護してくれていたのだ。」


「そうだったんだ。」


「うむ。ノクタリオスは貧しいながらも幸せだった。ただ母が居てくれるだけで良かった。だがある日そんな小さな幸せすらも破壊されこの世の全てが変革する時が来た。」

僕はゴクリとつばを飲む。


「ある日『月の落涙』と呼ばれる日が起きた。その日を境に月が二つに割れ更にそれに影響されるが如く天変地異が起きる。地形が大きく変形し大陸が海に沈み大半の人類は死亡した。勿論ノクタリオスの母も例外ではなくその日に命を落とした。」


「そんなことが・・・。」


「人類の大半が死亡した後のかつて『地球』と呼ばれた星はその日を境に大きく変容する。生物がほぼ絶滅し文明は崩壊する。生き物はその日その時を生きるのに必死だった。だが唯一の救いがあった。それが『マナへの適応』だった。それまでもマナは存在していたが認識されず利用もされていない物だったが、ある時を境にそのマナを使いこなす者たちが出てくる。そうして生命は途方もない年月を掛け復興することに成功する。」


「その間ノクタリオスはどうしてたの?」


「ノクタリオスは初めは悲しみに暮れたがそれでもなんとか前を向いた。ある時は命を助け、ある時は支えた。だが全く上手く行かなかった。それはそうだろう。星としての不安定すぎたからだ。幾度となる挫折を味わい次第に心が折れてしまう。そしてノクタリオスは観測者としてただひたすらに世界を視るだけにした。だがある時に変化が起きた。」


「それがマナへの適応?」


「うむ。マナへ適応した生命達は再び力を取り戻した。ノクタリオスはこれを喜び再び干渉を始めた。それは長い長い間地道に取り組んだ。次第にノクタリオスは人々から祭り上げられ一国の長になるほどの影響力を持つほどになる。そして愛すべきものとも結ばれることになった。」

僕はとても幸せそうだと一瞬思ったがだが今のノクタリオスを知っているのでそれは長くは持たなかったんだろうと理解した。


「その通りだ。根本的にノクタリオスは人ではなく生命としても不安定だ。愛するものが出来ても子は成せず、更に領土を奪い合う戦が幾度となく起きる。いくら強大な力があるとはいえすべてを守りきれず愛するものも守りきれなかったノクタリオスは絶望する。」


「そうして『死』を望むようになった・・・。」

コクリと『命の逆巻時計』は頷き一つで返答する。


「でも何だってこんな急に僕達を呼び、そうしてそんな話を聞かせるんだい?」


「時が大きく変化する。」


「え?」

僕は理解できず聞き返すも答えは同じだった。


「時が大き変化し時間の進みが早くなった。」


「それって・・・。まさか!」


「ノクタリオスがもう間もなく目を覚ます。」

命の逆巻時計がそう告げた所で僕は目を覚ました。

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