【第82話】玄武の加護
目の前に現れたそれはどす黒いマナを纏い僕達の前に立ちはだかる。
「ほう?良く私の存在に気がつけたものだな。」
そいつが口を開き言葉を発するだけでまるで空気が震え、そして威圧されるかの如く力を放っている。
「こいつは・・・。」
レオニダスさんが目をそいつから決して離すことはなく、ランスロッテ様に確認を取る。
「ああ、コイツは魔人だ。」
ランスロッテ様は静かに目の前に立ちはだかるものの正体を看破する。
「驚いた。この国に私の正体を知るものが居るとは予想外だった。」
「この国の人間じゃないから分かるのさ。」
ランスロッテ様はそう言うと気術と雷のマナを纏う。
バチチ!バチ!バチ!
「魔法だと?それにその見た目。なるほど。」
魔人が一人で納得しているとレオニダスさんも理解したようで戦闘態勢に移行する。
「なるほど。コイチが元凶か。どうやって侵入したか聞きたい。殺すなよ?」
レオニダスさんはそう言いながら全身に気術を纏い竜骨の籠手を装着している。
「ニクス君。」
ランスロッテ様に声を掛けられるが意図はわかっている。
「大丈夫です。決して手は出しませんし離れています。」
本気になったこの二人と魔人との戦闘に僕は手は出せない。
圧倒的力不足だ。
邪魔にしかならないと判断した僕は一気に距離を取り自身の身を守ることに徹することにする。
そうしてこの世界で二人しかいない『ドラゴンスレイヤー』の称号を持つもの達と魔人との戦闘が始まる。
ランスロッテ様細剣にも雷のマナを纏わせ一気に接敵するも正直訓練を積んできた僕ですら目で追うのが難しい。
それは魔人も同じだったようで対応が遅れる。
ぎりぎり躱したところで意味はない。
既にレオニダスさんがその躱した所に拳を置くような形で放っている。
魔人もこの攻撃には驚いただろう。
なんせ躱したと思ったらその躱した先に既に攻撃が飛んできているのだから。
「うぐぅ!」
ぐしゃ!という音とともにレオニダスさんの一撃が入り吹っ飛んでいく魔人。
「ふむ、あれが魔人か。初めて戦ったがやりにくいな。」
一撃を決めたはずのレオニダスさんがそう言う。
どうやらあの一撃で仕留めきるつもりだったようだが魔人のマナによって阻まれたようだ。
よろっと立ち上がった魔人は自身が吹っ飛んだことが信じられないようで顔を抑えながら驚愕の表情を浮かべている。
「なんなんだ・・・?お前たちは・・・・!?」
「お前にそれを教える必要はないな。」
そう言うと既に背後に回っていたランスロッテ様が切り込む。
「後ろだと!?」
背後を取られたのに気を取られたがそれも悪手だ。
「馬鹿が。」
レオニダスさんが拳に生命エネルギーをこれでもかと纏めほぼ同時に攻撃が着弾する。
「あががっ!」
魔人はまるで手も足も出ない。
「俺達が何だと聞いたな?俺達はこの世界で最強の二人だ。覚えておけ。」
「クソ・・・!流石に分が悪いか。」
しぶとくもまだ動ける魔人が悪態をつく。
その瞬間だった。
一気に魔人のどす黒いマナが膨れ上がったかと思うと大量の魔獣たちが出現する。
魔人はと言うとこの魔獣たちを放ったと同時に撤退したようだ。
「待ちやがれ!クソ!」
「仕方がない、ここはまず片付けるほかあるまい。」
僕は大きな脅威が去ったことを確認し再度戦線へ復帰する。
「手伝います!」
「ああ、頼む。」
そうしてしばらく魔獣たちたちを潰していく。
「これで、最後だ!」
どちゅ!っという音と共に魔獣が爆ぜる。
「くそ!逃がしたか!」
レオニダスさんが悪態をついている。
「ああ、今回の件。何故侵入されていたのかが非常に気になる。捕らえておきたかったな。」
ランスロッテ様も非常に残念そうだ。
だが僕は今回、裏で糸を引いている人物に心当たりがあった。
「その件なのですが、実は一人心当たりがあります。」
「なに!?」
レオニダスさんが非常に驚き僕に駆け寄る。
「それは誰だ!」
「レオニダスさんの右腕と呼ばれた人の中に若干ですが黒いマナを放っている人がいました。最初はこんなことになるとは思ってもいなかったので気がついただけで放置していましたが先程の魔人を見る限り関係していると思います。」
僕がそう言うと、レオニダスさんは非常に悔しそうな表情をしている。
「レオニダスよ・・・?」
「ああ、わかっている。一度最奥まで行き問題がなければ撤退。再封印した後そいつに聞いてみるさ。」
そうして僕達は一度レオニダスさんを先頭に最奥まで行くが、やはりあの魔人が元凶だったようだ。
特に他に侵入されている形跡はなく問題なく来ることが出来た。
「よし、問題はなさそうだな。撤退する。」
レオニダスさんがそういった時だった。
その最奥の更に奥から声がする。
『待たれよ・・・。』
声と言うより直接脳内に響いている感じの不思議な感じだった。
「なんだ!?」
『慌てるでない。儂は玄武だ。』
なんと話しかけてきているのは玄武様だった。
それを聞いた僕達は瞬間的にその場に跪いた。
「失礼致しました。玄武様。私は当代の守り人を務めておりますレオニダスと申します。玄武様より危険な知らせがあるとのことで赴き、原因を排除させていただきました。」
レオニダスさんがいつになく緊張した面持ちで説明している。
『ふむ。知っておる。そちらの少年が気がついてくれたのだろう?少年、名はなんと申す?』
なんと玄武様は僕がこの事を発見したのを知っていた様子。
「ニクスと申します。」
『ニクス・・・。不思議よの。その猫もまたニクスと同じ魂を持っているのか・・・?それにもう一つ魂を持っているな?お主、一人で3つの魂を有しているのか。真不思議な存在よな。』
「仰るとおりです。」
『まあ良い。今回の騒動、無事解決したお前たちには褒美を渡さねばなるまいな。』
その瞬間だった。
自身の魂に玄武の印が刻まれるのが理解できる。
「ぐ!」
「これは・・・!?」
レオニダスさんもランスロッテ様も同じ様だ。
『これで良い、ご苦労だった。また何かあれば頼むぞ。』
そう言い玄武様の気配が消える。
「今のは・・・。」
「ああ、間違いなく四神の加護だろう・・・。それよりも早く戻り、関係しているというやつを捕らえるぞ。」
そうして僕達はこの場から一度出た後、再度侵入されないように再度封印をした後大統領府に戻る。
「おかえりなさいませ、レオニダス様。」
そう言って近づいてきた男から黒いマナが立ち上っているのが見える。
「レオニダスさん、その方です。」
僕がそう言うとレオニダスさんは非常に悲しそうな顔をする。
「そうか。残念だ。話を聞かせてもらおうか。」
「え?」
抵抗することも出来ずその男は捕まった。
後日、取り調べを行った所によるとあの魔人との協力を示す物的証拠が出てきたということで、その男は反逆罪となり拘置されることになった。




