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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章~アルヴェリオン共和国編~

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【第79話】二つ目の門

僕は正式に師範代の位を与えられ、今後は門下生では無く師範代として指導する立場になった。

だが総師範(マスター)に可能ならばと頭を下げ今まで通り朝の掃除や食事などは門下生の者たちと一緒にと願い出る。

それはエレインも同じ思いだったようで結果その点は今までと変わらずとなった。

「だがお主、その左手で掃除などが出来るのか?」

総師範(マスター)は疑問に思っているようだがやり方はいくらでもあった。


「はい。問題は有りません。」


「そうか。だが今後の気術の訓練は若干変更せねばならんな。」


「そうなんですか?」


「無理をすると歪な形で指がくっつきかねないからな。」


「なるほど・・・。」

そうして僕の師範代としての新たな一日がはじまった。

僕はいつもと同じ様に早く出発し、門下生たちと一緒に混じって掃除をする。

「おはよう・・・ございます!ニクス師!」

そうして皆が僕に対し接し方を変えるが、僕は事情を説明しこの時間と食事の時間だけはエレインと同じ様に今までと同じ様に接して欲しいと願い出る。


「ですが・・・、それに左手も見る限り大怪我されてませんか?」


「ああ、大丈夫ですよ。総師範(マスター)の許可は得ていますし手も工夫次第で掃除くらいならできます。」


「はあ。」

呆れ顔な門下生達は置いておいて今まで通りの掃除を始める。


「それにしてもニクス・・・君はもう師範代まで上がったんだね。驚きだよ。」


「あはは。師範代と言ってもお飾りですよ。今だ教えてもらう立場であって貴方達に教えを行うだけの知識も経験もありませんからね。」


「なんだか複雑そうですね。」


「そうですね。戸惑ってばかりです。」

そうして掃除も終わりエレインと道場へ向かう途中でエレインから聞かれた。


「どうして貴方達はそんなに大怪我をしてまで本気で戦ったの?話に聞いたけどニクスは師範代になるのは嫌だったんではないの?だったらわざと負ければ・・・。」


「それをランスロッテ様も、何より僕自身が許せないからですよ。僕達はこの道場に来る前も何度も何度も組手をしてきましたが一度たりとも手を抜いたことは有りませんよ。手を抜いたらその瞬間、僕の15才になった時の結果はきっと満足できない結果になると思いますので。」

そう言うとエレインは押し黙ってしまい、何も言うことができなくなったようだ。


今日からの訓練は流々舞は暫く禁止となり、その代わり気術を一時的に濃くしたり薄くしたりと言ったような訓練方法が追加された。

気術を濃くするとは一時的に生命エネルギーを必要以上に消費することで自身の攻撃力や防御力を爆発的に増やすことが出来る。

逆に薄くするということは必要以下の生命エネルギーで気術を循環させることによって体力やスタミナの回復などに使用できる方法だという。


「さて、やろうか。私もこの状態じゃあ暫く総師範(マスター)と立会組手は出来ないしね。」

ランスロッテ様が笑顔で肋を擦っている。


「あはは。すみません。」

僕は謝るがランスロッテ様は気にしていない。

先程エレインが聞いていた手を抜かないということはこういった今の僕達の関係を成り立たせている。

お互いに真剣だからこそ尊敬しあえる関係なのだ。


僕が訓練を開始ししてから、暫くすると今まで聞いたことがないようなエレイン含む他の師範代達の気合の入った声が聞こえてきた。


「うん・・・?」

僕はなんだ?と思っているとランスロッテ様が笑う。


「どうやら私たちの試験の内容は私とニクス君、レビンだけではなく他にも影響を与えたようだ。」


「そうなんですかね?」


「情熱というのは伝染するものなんだよ。」


「いい方向に動いてくれるならそれは嬉しいことですね。」


「そうだね。さあ、私たちもう付けようか。」

そうして暫く気術の出力を調整する訓練をしている時だった。

僕が「ふう。」と一息つき目を開けると今までにはない光景がそこには見えていた。


「・・・え?」

今まで気術のエネルギーは肌で感じる圧力と湯気のように薄く揺らいで見える程度であったが、今ははっきりと視覚に捉えることが出来ている。

それも人によってその纏っている気術エネルギーの色が違う。

異変を察したのかランスロッテ様が話しかけてくれる。


「どうかした?」


「ランスロッテ様・・・。気術エネルギーが・・・、はっきりと色付きで視えます。」


「はっきりとだって?しかも色付きで?」


「はい。レビン、お前は?」


「同じだ。はっきりと視える。そうだな、最近はめっきり見ていなかったから忘れてたが、まるでマナを視ている様だ。」

それを聞いたランスロッテ様は直ぐに総師範(マスター)を呼び行く。


「ニクス、レビンよ。気術が視えるようになったというのは本当か?」


「はい。総師範(マスター)。」


「ではこれは何に視える?」


そうして総師範(マスター)は器用にも気術エネルギーを集め形を作り文字を作る。

『気術の第二の門を開きし者』と書かれている


「『気術の第二の門を開きし者』とはなんですか?」

そうして僕が書いてあるものをそのまま読み上げると総師範(マスター)は驚いていた。


「まさか本当に視えているのか・・・。末恐ろしい子どもだ。」


「恐らくは昨日の私との戦闘で門が開きやすくなっていたのではないかと。それに元々この子達はマナを見ることが出来る特異体質でした。」

ランスロッテ様が総師範(マスター)に意見すると「なるほどのう。」と返答がある。


「ここでする話ではないな。ニクス、レビン。付いてきなさい。」

そうして案内されたのは総師範(マスター)の部屋だった。

何故わざわざ他の師範代達から離したんだろうかと思っていると説明がある。


「まずお前たちが今回開いたのは気術に置ける『第二の門』と呼ばれるものだ。この門は主に目に関係している『門』であり、君たちのように生命エネルギーを完全に視覚的に捉えることが出来る。」


「なるほど。それで僕達はこの状態になったというわけですね。」


「うむ。だがこの調子でどんどん門を開いてしまうのは良くない。」

総師範(マスター)が珍しく顔を曇らせる。


「お聞かせ願いませんか?」


「この気術に置ける門は全部で5つある。一つ目はまず入口。そして二つ目は今回の目だ。門を開く毎に自身の生命エネルギーをより緻密に制御できるようになり、更に自身に秘められた生命エネルギーをより多く引き出すことが出来る。」


「・・・だけどリスクが有る、ですか?」


「その通りだ。最終的に五つ目の門は心臓になる。だがこれを開くと二度とその門を閉めることが出来ず最終的には死に至る。」


「なるほど。気術は生命エネルギーである以上どこかでそういったリスクは有るのではないかと想像はしていました。」


「良いか、これからは呉れ呉れも無茶だけはするな。はっきり言ってニクスとレビンは今まで私が教えたことがない者たちだ。何がきっかけで五つ目の門が開くかわからない。」


「そうですね。最低でもノクタリオスと対峙するまでは開きたくはないですね。」


「ノクタリオスと対峙しても開くのは四つ目の門までだよ?」

ランスロッテ様が横から注意をしてくる。

だが僕はそれに返事をすることが出来ない。


「約束できませんし、どうなるかはその時にならないと自分でもわかりません。ですが自分でも止まる気は有りません。」


ランスロッテ様は「はあ」とため息を付く。

「君たちならそう言うと思っていたよ。今後は一層注意しようね。」


「はい!」

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