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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章~アルヴェリオン共和国編~

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【第78話】ランスロッテの怒り

急遽僕の師範代への昇段試験が執り行われることになり、試験相手として名乗り出たランスロッテ様と試合を行うことになる。

試験会場になる道場に総師範(マスター)を先頭に僕達が向かうと既に訓練を開始していた師範代達は何事かと驚いていたが直ぐに整列し、総師範(マスター)からの話を聞く体制になる。


「皆のもの。良く聞いて欲しい。これより急遽ではあるがここに居る門下生のニクス及びレビンの師範代に向けての昇段試験を行うこととなった。今までにない異例の速度ではあるが、この二者の実力は皆も知っての通りである。そして今回の試験を行うのは師範であるランスロッテが名乗りを上げた。よってこれよりニクス及びレビンとランスロッテの試合を行う。意見のあるものは今のうちに挙手にて質問せよ。」

総師範(マスター)より宣言されたことで師範代達にざわめきが起きる。


総師範(マスター)。よろしいですか?」

一人の師範代が質問を行う。


「うむ。」


「ニクスとレビンの実力は我々も知っております。ですが何故試験官がランスロッテ師なのでしょうか?カランスロッテ師は彼らの保護者でもあります。」

そこまで師範代が言った時だった。

ズンと一気に道場内の空気が重くなる。


「君は私がニクス君とレビンの二人相手に手を抜き、昇段させるのではないかとそう言いたいのかな?」

ランスロッテ様がかなり怒っている。


「見ての通りだ。断じてそれは無いとだけ伝えておく。むしろ出過ぎた杭を叩きのめすくらいのつもりだ。」


「し、失礼致しました!」

質問をした師範代は慌てて撤回する。


「・・・。他に質問者が居なければ早速執り行う。」

そうして僕達とランスロッテ様の昇格をかけた試験が始まる。


「ニクス君、レビン。最初から全力で来なさい。今日の私は手加減できそうにない。」


「わかっています。そのつもりです。行くぞレビン。」

そう言い僕は眼帯を外す。


「・・・おう。」

そうして僕達は不完全な融合をし、ランスロッテ様に対峙する。


「ではこれより、ニクス及びレビンとランスロッテの昇段試験を執り行う。」

総師範(マスター)が直接審判を行うようだ。

僕は今の段階から呼吸法を深く行い圧倒されそうなランスロッテ様の気術に耐えうるだけの精神状態に持っていく。

ランスロッテ様と過去幾度となく組合稽古をしてきたがその中でも今回の圧はかなりの上位だ。

それだけ普段あの冷静で笑顔を浮かべているランスロッテ様は怒っている。


「ふーー・・・。」


「それでは、はじめ!」

総師範(マスター)の開始の合図とともに一気に『死の匂い』が濃くなる。

とんでもない速さで気術を纏った蹴りが飛んでくるが躱す。

下手に受けると流々舞で生命エネルギーの攻防を訓練してるからと言ってもこれだけの速度では対応しづらい。

なので躱せるものはなるべく躱す。

僕にはランスロッテ様ですら持ち得ていない『死の匂い』を嗅ぎ分けることでの回避ができる。

だが当然ランスロッテ様はそれを知っているのでその対策を打ってくる。


二段目の蹴りが飛んできた時もギリギリの所で躱そうと思ったが、その蹴りは途中でビタ!っと止まり変則的な上段蹴りに変化する。

僕は過去何度もランスロッテ様と組合稽古をしているのでこういった攻撃が飛んでくるのも理解はしていたが今回は気術を纏って攻撃力が跳ね上がっている上にとんでもなく早い。


「シッ!」

飛んできた蹴りに対し僕は防ぐ他無くかなりの生命エネルギーを防ぐ腕に集中させなんとかその一撃を防ぐ。

その瞬間、「ズドンッ!!」というただの蹴りを防いだだけでは起きないような衝撃と音が道場内に響き渡る。


「ぐぅ!」

とんでもない重さだ!

だが間違いなく来るのはわかっていたがランスロッテ様の一撃は雷に例えられるほどだ。

とんでもないは速さで次段が飛んでくるが僕はほぼ直感で腹に防御を重点に置くと見事に腹に途轍もない突きが飛んできて僕は吹っ飛ぶ。


その衝撃で一気に体内の空気が抜けるような感覚を覚えるが呼吸法で無理やり空気を取り込む。

当然だがこの呼吸法は体中に激痛が走るがそれどころではない。

体制を立て直し僕は吹っ飛んだ先で体を捻り着地をすると同時に一気にランスロッテ様の懐に入る。

受けばかりでは確実に押し負けるのがわかっていたからだ。

何手か僕も打ってみたがやはり防がれる。

生命エネルギーの差があるが故に、防御しているはずのランスロッテ様の防御力が異常に硬い。

それならば!

僕は左手で上段を狙い一撃を放つ。

だが当然のようにその一撃はランスロッテ様の硬い防御力の前に弾かれる。

この時僕は左手には殆ど生命エネルギーを纏っていなかったが故、防御しているランスロッテ様の生命エネルギーに見事に弾かれそしてとんでもない激痛が走る。


「ぐう!!だけど!!」

僕は痛みには皮肉にも耐性ができつつあった。

それを逆手に取りあえて一撃目はこちらにダメージが有る前提で放つ。

本命は二段目。

自身の全エネルギーに近い生命エネルギーを右拳に纏わせランスロッテ様に対し放つ。

その一撃は気術の殆どを集中させているためランスロッテ様の一撃に近い速度で、お尚且つ自身がここまでの捨て身の攻撃をするとは思っても居なかったのだろう、ランスロッテ様は虚を突かれた様に反応が遅れ僕の一撃が胴体に入る。

だがやはり、この変則的な攻撃、この速度を持ってしてもギリギリの所で防がれてしまう。


これでも駄目か!!

そう思った時だった。

「そこまで!!」


総師範(マスター)の声が掛かり試験は強制終了となる。

その声を聞き見届けていた師範代たちも一斉に僕達の間に入る。


「ランスロッテよ、もう十分であろう!そしてニクス!お主自身の左手の状態を理解しているのか!?」

僕はそう言われ左手を見ると拳、手の指が何本かが見事に折れている。


「・・・ニクス君、レビン。後で話がある。まずはお互い治療することにしよう。」

そう言って最後に僕が放った一撃が入った腹部ら辺を抑えながらランスロッテ様は言う。


「・・・わかりました。」

そうして僕達は医務室では対処できないということから病院で治療を受けることとなった。

僕は左手の指が何本か骨折及び脱臼しており、ランスロッテ様は左肋の骨にヒビが入っているという結果だった。

僕達が治療を終え包帯でグルグル巻になりながら家に帰るとハースリンが気絶しかけていた。


「ニクス君、レビンここに来て座りなさい。」

ランスロッテ様に促され座る。


「すまなかった。痛かっただろう。」

そう言いランスロッテ様は僕の手を優しく撫でてくれる。


「いえ、それを言うならランスロッテ様も。脇腹大丈夫ですか?」


「ああ、最後の一撃はとても良かったよ。驚いたくらいだ。」


「はは。ランスロッテ様が驚くような一撃が打てたのでしたら大満足です。」


「・・・。君はどうして、こうも自分を簡単に犠牲にするんだい?師範代の話だってそうだろう。君は昨日あんなに頑なに断ると言っていたではないか。」


「確かに昨日の時点ではそうでしたが、話が変わってしまったので。」


「君はまだ子どもだ。我儘を通したって良いじゃないか?」


「いえ、僕が今の環境に身を置けている事実が最大の我儘ですからこれ以上望むのは欲張り過ぎだと思うのです。・・・ランスロッテ様は僕に我儘を言わせないそんな環境を作り出した総師範(マスター)に怒っていたのではないのですか?」

僕は何故あんなにも珍しくランスロッテ様が怒っていたのかその理由を考えた結果、僕ではなく総師範(マスター)に怒っているのではないかという結論に至った。


「・・・。流石私の子だ。そう。私は総師範(マスター)が君に事を押し付けている事に怒りを覚えた。」


「でしたらその怒りは忘れて下さい。僕はもう受け入れましたので。」


「君は・・・!」

ランスロッテ様がそういった時僕はランスロッテ様にハグをした。


「ランスロッテ様。僕達のために怒ってくれて感謝しています。本当にいつも僕達を守ってくださりありがとうございます。」


「・・・少しは親らしいことができているのかな?」


僕はその言葉を聞いて真っ直ぐランスロッテ様の目を見る。


「ランスロッテ様は僕達の誇らしい親です。」


「そうか・・・。」

そうしてランスロッテ様は静かに微笑む。

後日、正式に僕とレビンの昇段の話が一致で決まり僕達は昇段した。

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