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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章~アルヴェリオン共和国編~

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【第76話】魂のあり方

初めての炊き出しが成功してからは毎週の行事となり道場も行政と連携をしながら数回の炊き出しが終わった頃だった。

炊き出しの為に連絡員として派遣されている方よりレオニダスさんからの伝言を預かったということであった。

「依頼されていた慰霊碑の設営が終わったそうです。簡素ながら式典を行うそうですが参加なさいますか?とのことでした。」


「完成したんですね!ではその日に参加できるか総師範(マスター)とランスロッテ様に確認してから折り返しますとお伝え下さい。」


「分かりました。ではその様に。」

僕は早速、気術の訓練の際に総師範(マスター)とランスロッテ様に相談することにする。


総師範(マスター)、訓練前で大変恐縮なのですがお話が。ランスロッテ様もよろしいでしょうか?」


「うむ?良かろう。」


「なんだい?ニクス君。」


「実は先程レオニダスさんの伝言ということで、以前僕が依頼していた例の慰霊碑が完成したとのことでした。その式典を簡素ながら行うとのことだったのですが参加できそうですか?」


それを聞いた総師範(マスター)が少し考えながら答える。

「なるほどのう。実はな、以前に出現した羅刹猿達の被害に会い孤児となったものがここで育ち今現在この道場にて師範代として活動しているものもいる。」


「そうだったんですね。初めて知りました。」


「折角だ。そやつらにも声を掛けて見るか。勿論ニクス、レビン、エレインは参加してもらって良い。そして引率はランスロッテ、頼んだぞ。」


「ええ、止められても行くつもりでしたし。」

笑顔でさらりと言い切る所がランスロッテ様らしい。


その後は何時もの様に気術、主に『巡』の訓練となったが最近は以前エレインより教えてもらった流々舞を行に備えて巡らせた生命エネルギーを一箇所に移動させる訓練なども開始していた。

これがとんでもなくハードで一瞬でも気を抜くと自身に大ダメージが返ってくる可能性がある訓練なだけに神経もすり減らしていた。


「では今日の訓練はここまでとする!それと慰霊碑の式典に参加するものは残るように。」


「お疲れ様でした!」


そうして一日の訓練後、僕達以外に二人の師範代の方が残っていた。

どうやらこの人達が以前現れた羅刹猿によって孤児になってしまったという人達のようだ。

総師範(マスター)がその二人を見て、「ふむ。」と頷いていた。

「二人とも参加でいいのかな?」


「はっ!宜しくお願い致します。」


「ではその日は参加者は戻ってくるまでの間は休みとする。ゆっくりしてくると良い。」


「ありがとうございます。ニクス君、レビン、そしてエレイン嬢今回の慰霊碑の件本当にありがとうございます。」

そうして二人は僕達に向い頭を下げ礼を述べ始めた。


「いえいえ、よして下さい。僕達は自分たち自身の心の区切りをつけるためにやったことです。」


「それでも礼を述べたい。俺達は聞いているかも知れないが、前回の羅刹猿達の襲撃に会い孤児となりこの道場に拾ってもらった人間だ。」


「お聞きしました。大変でしたね。」


「ああ・・・。俺達は恐れていたんだ、いつか羅刹猿のことが忘れ去られまた同じ様な被害者が出てしまうのではないかと。だが今回は被害者を出すこと無く対処してくれた上に、過去に起きたことにまで目を向けてくれ、慰霊してくれると言うではないか。感謝以外の言葉が見つからない。」


「過去に起きてしまったことを過去だけの話にするのではなくそれを教訓として先に活かすのも大事なことだと思って今回慰霊碑の作成を依頼したんです。」

僕がそんなことを言うと二人は唖然としている。


「『煮汁会』の件と言い、君たちは本当に子どもなのか?考え方のそれが到底子どもとは思えないんだが・・・?」


「あはは。良く言われます。とにかくお二人が参加するということも明日の朝、連絡員さんにお伝えしておきますね。当日は宜しくお願い致します。」


「こちらこそ。」


そうして慰霊碑設営の式典日となる。

場所は今いる場所から走っていけるくらいの距離にある村だった。


「ランスロッテ様、なんでその村が選ばれたんですか?」

僕は疑問に思い、討伐した張本人に聞くことにした。


「一番被害が出たところだからな。あの者たちも元はと言えばその村出身だ。」

そう言われ二人を見るとにこりと笑みで返してくれる。


「あの時ランスロッテ師が来てくれなければ俺達も死んでいた。」


「何も知らずにすみませんでした。」


「私も二人には良くしてもらっていたけれど今回の件は全く知らなかったわ・・・。本当にごめんなさい。」

そう言いエレインは神妙な面持ちで二人に頭を下げる。


「良いんですよ、エレイン嬢。こうして慰霊をしてもらえるだけでも十分すぎます。」


村に入るとかなりの人達が集まっているのがわかる。

恐らく以前の襲撃の際の被害者やその家族達なのであろう。

レオニダスさんもおり、僕達を見つけて声を掛けてくれる。

「おう、来たな。」


「おはようございます。レオニダスさん。慰霊碑はあれですか?」

僕は村の中心地点付近にあった比較的大きな石に目が行く。


「ああ、あれだ。ところで一つ確認なんだが、今回の式典でお前達のことは伝えるべきかどうかを考えていたんだが?」


「僕としては伏せてほしいです。あくまで国主導で行ったことにしてくれたほうが良いと思っています。」

それを聞きレオニダスさんは頷き一つで確認する。


「エレイン、お前はどうする?」


「私もニクスと同じ考えです。」


「わかった。では今回の件、あくまで国主導で行ったことにする。」


「ありがとうございます。」


「馬鹿なことを言うな、礼を言うのはこっちの方だ。感謝する。さあ、そろそろ始めるか。」

そうして式典が始まる。

式典はレオニダスさんが代表として話をする。

事の起こり、被害にあった村や人々、そして顛末が語られる。

僕が想像していたよりも遥かに大きな被害だったようだ。

それを聞いていた被害者の関係だろう、皆その時を思い出したのか涙を流していた。


次に今回、出現した羅刹猿が冒険者によって即時討伐され被害がなかったことが報告される。

それを聞いた者たちは安堵の声を浮かべていた。


話が終わり、手向けの花が用意され希望するものは順次その慰霊碑に手を合わせることが出来るということだったので僕達も並び手を合わせる。


その後は静かに解散となる。

この慰霊碑は今後この村が代表してきちんと管理し、今後羅刹猿についてのことを伝える語り部として機能してくれるようだ。


帰りの途中エレインが話しかけてくる。

「魂か・・・。私は今まで漠然とそういう物は考えるだけで正直半信半疑だったの。」


「まあ、普通はそんなもんだよ。」


「でも貴方を見て思ったわ。もし今度生まれ変わるのなら“”幸せな形”で生まれ変わって欲しいって。」


「・・・。そうだね。僕も、もう一人の僕が正しくその魂を終えられるように、そして次は“”幸せな形”で生まれ変わってほしいと思っているよ。」


「私も出来ることは手伝うからね。」


「ありがとう、エレイン。心強いよ。」

こうしてもう一つの目的だった、羅刹猿にまつわる慰霊碑の設営も終わり、日常が返ってくることになった。

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