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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第64話】門下生

こうして僕とレビンは門下生と呼ばれる立場となる。

どうやら門下生と呼ばれる立場の人間は道場では一番下の階級となり僕とレビンはその位置からのスタートとなる。

ランスロッテ様は既に師範と呼ばれる道場の上から2番目立場の存在となるため総師範(マスター)から指導を受けながら、更に僕達のような門下生に指導を行う立場となった。

正直自分で言うのも何だが、ランスロッテ様の指導は癖があるので付いてこれる人がいるか不安になった。


僕達の朝はいつも以上に早かった。

門下生は朝早くから道場の掃除などを行わないといけないようだ。

そのため僕とランスロッテ様は行きだけは別行動になり前日のうちに朝食だけは作っておく。

いつも以上に早起きし僕とレビンは日が昇り始める前から朝食を食べ、そして走って道場に向かう。

かなりの距離があるが今の自分としては何の問題もない程度の距離だ。

丁度他の門下生の方たちが動き始めるくらいに到着した僕は大きな声で挨拶をし、道場に入る。

「おはようございます!今日からお世話になりますニクスと言います!よろしくお願いします!」


「ああ、君がニクス君か。話は師範代達より聞いている。僕は同じく門下生で新人たちの世話をしているラーベンという。よろしく頼むね。それにしても大分離れたところからの通いと聞いていたがこの時間に間に合うとは思ってなかったよ。」


「走るのがいつもの日課だったのでこれくらいの距離なら問題は有りません!よろしくお願いします!ラーベンさん。」


「よろしく頼む。ラーベン。」


「こら!レビン!敬語!」


「あはは。良いんだ。君たちは客人であるとも聞いている。」


「いえ、そういう訳には行きません。同じ門下生として同じ様に扱って下さい。掃除でも料理でも何でもします!」

僕がぐっと握りこぶしを作り全力でアピールするとラーベンさんは一瞬困った顔になる。


「まあ、君たちがそう言うなら構わないのかな?じゃあ、皆と同じく掃除をしてもらおう。」


「わかりました!」

そう言われ僕は掃除をしているグループにラーベンさんに案内され、紹介を受ける。


「よろしくお願いします!」

僕達は頭を下げ早速掃除に取り掛かるとその手際の良さに一緒に掃除をしていた門下生の人達が驚いていた。


「ニクス君は随分と掃除に手慣れているんだね?」


「毎日ここより少し小さい位の大きさの家を二人で掃除してましたから。」

僕とハースリンの二人でアーテル家の掃除を毎朝していた。

アーテル家は新興したばかりの男爵家とは言え大きさ的にはかなり大きかった。

なんでも褒美として与えられた家であったため、普通の男爵家が構える家より遥かに大きいとのことだった。

そんな家にランスロッテ様とハースリンの二人で暮らしてたんだっていうんだからとんだ宝の持ち腐れだと思った。

しかも今はこうしてアルヴェリオン共和国に来ているのだから、あっちの家は空っぽである。

とは言ってもハースリンは家守妖精なので自由に行き来出来るらしく定期的に帰っては掃除や必要な物品の調達などをして戻ってくるという事だった。


「いやあ、ニクス君のお陰で僕達の持ち回り担当が早く終わったよ。感謝。」


「いえ、これも修行ですから!」


「あはは・・・。」


「ところでこの次は何を?」


「しばらく、他の班が終わるまで待機かな?」


「あ、では僕はストレッチをしたいのですがどこかでしても良い場所はありますか?」


「それなら道場前でしてると良い。そうすれば次の時にすぐに移動できるからね。」


「わかりました。」

僕は指定の場所でレビンと共にストレッチを始める。

呼吸法も取り入れて行っていると集中力が増し、いつの間にか見物人が出来ていることにすら余り気が付かなかった。


「おーい、ニクス君?」

ラーベンさんが僕の眼の前で手を振り、そこで僕はようやく既に他の人達が集まっていることに気が付く。


「あ、すいません!どうもこの調子でストレッチしていると周りに意識が行かなくて。」


「いやいや、それにしても今のすごかったね?呼吸法を取り入れた柔軟だろ?」


「あ、はい。ご存知でしたか?」


「知ってるも何もうちでも当然行っているがかなりの苦行で皆苦手なんだよ。それにしても呼吸法をもうあんなに使いこなせてるなんて驚いた。」

僕はここでも呼吸法が使われていることに逆に驚く。


「皆さんも呼吸法練習するんですか!」


「当然じゃないか。気術を覚えるために呼吸法は必須だからね。逆を言うと呼吸法が使えなければ気術は使えない。知らなかったのかい?」

そうか。なんでランスロッテ様が呼吸法に力を入れていたのかようやく合点がいった。

気術を習得させるために先んじて呼吸法を教えていたのだ。


「初めて知りました。そうだったんですね。」


「ちなみに次も呼吸法を使った鍛錬になるがきついと思うよ?」


「それはどんな鍛錬ですか?」


「ランニングだよ。」


「へ?」

呼吸法を使ったランニングはいつも日課にしている。

むしろここに向ってくるまでの間、それで来たくらいだ。


「さ、並んで並んで。」

そう言われ並んで一緒に呼吸法をしながら走ることになるが、いつものペースよりも遅いくらいだった。

呼吸法をつかったランニングが終わると皆大量の汗を流し息を切らしている。

だが僕とレビンは息一つ乱れることもなく平然としていることから他の門下生たちに訝しがられた目で見られる。

どうやら普通にランニングしていただけなのではないかと疑われたようだ。

僕がそれに気づきどうしたもんかと思っていた時、師範代たちより声がかかる。


「お前達、どうやら新人であるニクス君とレビンの事を疑っているようだが彼達はしっかりと呼吸法を取り組みランニングしている事は既に確認している。それにお前たちも昨日行われた十人組手は見ていただろう?彼は既に『下弦の呼吸』まで全てを使いこなしている。」

そこでざわっとどよめきが起きたが当の本人である僕が『下弦の呼吸』というのを知らない。

頭に?を浮かべているとそこにランスロッテ様見慣れない服装を来て現れる。

すると一同が全員手を合わせ一斉に跪く。

僕も良くわからず、立ったままではまずいと思い跪く。


「あはは。おはよう君たち。今日から暫く世話になる師範のランスロッテだ。」


「「「おはようございます!」」」

一斉に声が上がったので僕は驚く。


「ニクス君とレビンは既に『上弦の呼吸』から『下弦の呼吸』に掛けては完全に会得している。私が叩き込んだからね。」

さらにどよめきが起きたが一瞬で静まり返る。

そこはやはり日々修練を行っている者たちだからだろうか、統制が取れている。


「ニクス君とレビンは今日午前中は皆と同じ訓練をして昼食後に昇段試験を行う。仮に昇段した場合は特別メニューとして今後は午前中は普段の門下生と同じ事をしてもらい、午後からは師範代以上と一緒に訓練をすることになる。かなり異質だとは思うが皆、是非仲良くしてやって欲しい。」


「「「はい!」」」


ランスロッテ様が下がると一斉に声を掛けられた。

「君もう下弦の呼吸まで使えるのか!?」

「ランスロッテ師に鍛えられていたなんて信じられない!」

等など様々だ。


「はいはい。おしゃべりはそこまでだ。ランスロッテ師の話は聞いていたな?午前中はいつも通りだ。さ、やるぞ。」

師範代の人よりそう声がかけられ一斉に訓練が開始されるが基本的にはアーテル家でランスロッテ様とともに訓練していた内容の初期の頃にやっていたような内容だった。


「おい、ニクス。これって・・・」


「ああ、でも余計なことは言うなよレビン。」


「わかった。」

午前中のメニューが終わる頃、皆は全身から汗を吹き出し、息も絶え絶えになっているが僕とレビンは息一つ乱れるどころか汗一つ流してすらいない。

昼食は皆と同じ席で食べることになり、この道場で用意してもらったものを皆と囲いながら食べることになる。

この時間は会話することが許され、色々な話をしながら食事をした。

教会にいた頃の雰囲気を思い出させる懐かしい食卓の光景に僕とレビンの表情は自然と明るくなる。

「それにしても初日から昇段試験ってとんでもない実力者なんだな。ニクスとレビンは。」


「そりゃランスロッテ師に直接指導受けてたくらいだから当然なんじゃないの?」


「いや、例えそうだったとしてもランスロッテ師が噂通りの人ならついて行ける自身が私にはないよ。」

ランスロッテ様の噂ってどんなことなんだろう・・・。

ここまで言われているのも気になるが、まあでも何となく察せる気はした。


昼食後、早速僕とレビンは皆とは別の場所に呼び出される。

どうやら先程ランスロッテ様が仰られていた昇給試験が行われるようだ。

道場の一室に師範代以上と思われる人達とランスロッテ様、そして総師範(マスター)が座っている。


「ニクス君、レビンまずはいつもの姿になりなさい。」


ランスロッテ様に促され、僕とレビンは一体となり不完全な融合状態になる。

「昨日もその姿を見たが本当に不思議な姿だ。」


「私も長いこと旅をしていますがニクス君とレビンの様な存在は初めてですよ。さあ、こちらへ。」


「はい。」


「最近始めた呼吸法を使った型の訓練をしているね?特に君たちがきついていっていた最後の二つだ。」


「ありますね。」


「あれをここで披露して欲しい。」

そう言われ僕達は比較的最近に教わった新しい呼吸法を取り入れた戦闘用訓練で行っていた型を行う。

この二つは呼吸法もかなり特殊で他の呼吸法ならまだ余裕もあったが、この二つだけはどうしても終わる頃にはヘロヘロになり、大量の汗に息切れ鼻水など散々なことになっている。

今日も無事にやり遂げることが出来たが、案の定人に見せたくないような姿になる。


それを見ていた師範代以上の人達はざわざわと話し声が聞こえ、総師範(マスター)は目を見開いていた。

「驚いた・・・。11才にして『新月の呼吸』と『満月の呼吸』まで使えるとは。皆のもの、しかと見届けたな。」


「「「はい!」」」


「これを持ってニクス門下生及びレビン門下生を黒帯とするが異議のあるものは名乗り出よ。」


「「「異議なし!」」」


「良かろう。ではニクス門下生、レビン門下生を正式に黒帯有段者とする。さあ、これを受け取るが良い。」

僕は色々と大変な状態になりながらもしっかりと姿勢を正し、『黒帯』と呼ばれる一本の帯を受け取った。


「うむ。これからは道着を着、そしてその帯を締めて訓練に励むように。以上解散とする。」

そう言われ師範代達が解散する。


「おめでとう。ニクス君、レビン。これで君たちも正式に黒帯だ。」

僕は状況が全然わからないでいる。


「うん?全くわからないって顔をしているな。丁度いい。これからニクス君の道着を見繕うのに時間があるからその際に話そうか。」


「お、おねがいしましゅ・・・はぁはぁ・・・」。


僕達は息も絶え絶えに黒帯を占めるに相応しい道着を選ぶこととなる。

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