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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第60話】11才の誕生節

食後暫くすると、マクシミリアン様が戻ってこられリリーとともに帰宅していった。

「ニクス、気がついたか?」


レビンが何かを言いたげな様子で僕に尋ねてくるが何を聞きたいのかは理解していた。

「僕を誰だと思ってるの?リリーの弟だよ。わかるに決まってる。」


「それもそうか。」


「うん。でもそれは僕達には知られてはいけない様子だったね。」


「その様だな。」


「それなら僕達のやることはたった一つさ。」


「ああ、前へ進む。それだけだな。」


僕とレビンの決意が固まり、家に帰ると正式に僕とレビンはアーテル家の養子として認められることとなる。

だが特別にお披露目などはすることもなく、今まで通りの生活を送ることとなるが夜の時間にランスロッテ様にお願いをし『貴族として相応しいマナーや振る舞い』を教えてもらう時間を作った。


「ええ?一番貴族から遠い私にそれを教わるの?」

ランスロッテ様が一番やる気がなかったがこれは僕とレビンには必要なことなので少し燃料を投下して動いてもらうことにする。


「教えていただければ授業料としてハースリンとともに新しい料理を作ってみせます。」


「まあ!それでしたら一緒に頑張らないといけませんね!ニクス様!!」

それを聞いたハースリンも気合が入っていたが、やはりランスロッテ様の胃袋はしっかり掴んでたようで、「しっかり教えてあげないといけないね。今日からやるかい?」と見事にやる気に火を付けることに成功した。


それからは毎日毎日、血反吐を吐く思いでトレーニングと料理研究、そして夜には貴族としての教室が開かれ、それが終わる頃には僕とレビンはパタリと眠っていた。


季節が変わる頃にはすっかりとこの生活にも慣れ始め、若干の余裕が出てくる。

「正直驚いた。たった季節一つ分位で君がここまで付いてこれるようになるとは。」


「多分ですが僕の魔人としての呪いのおかげかも知れませんね。回復力と持続力だけは昔から異常なほど有りましたので。」


「なるほど。それはそうかも知れない。それに君の性格的にもトレーニング内容的にもあってるのかもねえ。よし、じゃあ今度はトレーニング中も呼吸法を使いながらしようか。」

ランスロッテ様の笑顔が眩しい。

実はと言うと一日のルーティンの中で一番きついのが呼吸法だった。

今後は呼吸法のみで運用するのではなく、各トレーニング時も呼吸法を取り入れるという。


「うぐぐぐぐ・・・」

案の定僕とレビンは次の日のトレーニングではボロ雑巾のように転がっていた。


「し、死ぬ・・・」


「流石に・・・これは・・・きつい・・・。」


「あはは。まあこの程度じゃ死なないから頑張ろうね。それに明日は君にプレゼントがあるんだ。」


「プ、プレゼントですか!?」

僕はその魅力的な響きに身体の痛みなど忘れて小躍りする。


「勿論レビンにもあるからね?」

ランスロッテ様にそう言われ、レビンも一緒に踊りだした。


翌日、僕達は以前王に会う際に衣装を貸してもらった店に居た。

どうやらその際に折角ならばと仕立てたランスロッテ様とのお揃いの一張羅が完成したようだ。


「こちらになります。」


「うわぁあ!!す、すごい綺麗。それにこの紋は。」

僕はただただ綺麗な出来に語彙力もなく感動する。

そして胸元にある紋を見てランスロッテ様にまさかと思い確認する。


「ああ、それはアーテル家の家紋だ。レビン様に作らせた首飾りにも同じ家紋が入っているだろう。」


「おお、本当だ!これで俺もお揃いになるわけだな。」


「ああ、そうだ。早速試着してみよう。」


そう言われ僕達全員で試着をする。

僕のはやはり成長に見合った調整できるもののようで、採寸時より更に身長が若干大きくなっていたがそれでもピッタリのサイズになっていた。

これが本物の衣装屋さんなんだなと感動する。


「こ、これは緊張しますね。汚さないようにしないと。」


「あはは。この生地は汚れにも強いみたいだし多少汚してもここに持ってくれば汚れは取ってくれるから大丈夫だよ。」


「なんか実体験の様に聞こえたんですが?」


「バレたか。流石の思慮深さだな。」


早速これらの衣装を纏めてもらい持ち帰ることになるが疑問があった。

どうやって管理するのかだ。


「ああ、それは衣類を完全に管理する魔道具がある。それをハースリンが持っているので彼女に渡すのさ。」


「へえ・・・。本当に魔道具ってなんでもあるんですねえ。」


「何でもはないが欲しいものがあれば探すし、なければ作れば良い。」

ランスロッテ様が驚くことをサラッと言い放った。


「作るんですか!?」


「うん?ああ、私は魔道具師でもあるからね。欲しくて無いものは作ってるんだよね。知らなかった?」


「初耳です!今度教えて下さい。」

僕は興奮しながら教えを請う。


「構わないけど当分は無理じゃないか?」


「そこは気合で頑張ります!」


更に季節が一つ進む頃には呼吸法を使ったトレーニングにも慣れ、更にはランスロッテ様から貴族としてのマナーを一通り教えて貰い、魔道具についての基礎知識論が始まっていた。

当然だが打ち合い稽古も一瞬で終わることはなくなり、呼吸法を上手く組み合わせることで継戦能力、判断力、瞬発力が格段に上がっている。

だが今日も当然ながらランスロッテ様に一撃貰うことになり終了となる。


「ぜぇ・・・はぁ・・・。」


「はひー・・・ひー・・・。」


「いやはや本当に君たち二人の成長にはただただ驚かされるばかりだ・・・。師として親として君たちの成長を喜ぶとともに、恐ろしくも感じるよ。」

流石にランスロッテ様も余裕がなくなってきたのかひたいに若干の汗を流している様子が伺える。

それを見る限りでは僕はしっかりと成長できているんだと認識できた。


魔道具については正直全くわからない。

理論がかなり難しかった。

「うーん・・・」と頭を掻きながら悩んでいると「流石にそんな簡単には出来ないさ。なんせアカデミーでも専門的に何年も学んだものが未だに研究を続けているくらいだしね。」とランスロッテ様は言う。


「だけど僕としてはわからないはわからないんですが不思議なものが『視えて』るんですよね。」


「『視える』?まさか、魔導回路の流れかい!?」


「あ、はい。どういう仕組で流れてるのかは全然わかりませんが魔道具が発動する時にマナが通る魔導回路については色がついて視えるんです。」


「それはすごい・・・。魔道具を作るうえで一番重要なのはこの魔導回路だ。これが可視化されているならもしかすると君はとんでもない魔道具師になるかもしれないよ。」

僕はそんな事を言われ気合が入った。


その後も更に訓練を重ね季節が周り、僕の誕生節である春になる。

「僕もいよいよ11才になるんだなあ。」


「とても11才の少年には見えないけどね。ニクス君。今日の打ち合い稽古は特別なものにしよう。」

ランスロッテ様からそんな事を言われる。


「特別・・・ですか?」


「ああ、今日君が僕に対し一本取ることが出来たら旅に出よう。」


「旅?どこに行くんですか?」


「以前言っていたアルヴェリオン共和国さ。そこに君を連れて行き、更に強くする。」


「アルヴェリオン共和国・・・。初めての外国だ!よーしやるぞー!」


いつもの様に打ち合い稽古がはじまるが、静かな始まりとなる。

しばらく睨み合った後、最初に動いたのはランスロッテ様だった。

初日はこの一撃が全く見来ることが出来なかったが、1年近くが経ち呼吸法も身につけている。

しっかりと動きを見ることが出来、更に剣の軌道も見切ることが出来る僕は余り使わない戦法を取る。

普段は右手を軸にハンドブレイカー一本で挑んでいたが、今回は急遽右手に短剣を握り受け流す。

いつもと違うやり方に先生は虚を突かれ一瞬怯む。

そして足も使う。

僕は鋭い上段蹴りを放つと流石に先生は下がらざるを得なかった。

そこでいつものように右手にハンドブレイカーを握り直し低姿勢より一気に踏み込む。

呼吸法を混ぜることにより更に柔軟になった筋肉が一気に軋むが関係ない。

一閃。

僕は下から切り上げると先生は細剣を使って受け流そうとするも、それはハンドブレイカーにとっては悪手だ。

絡め取り弾き飛ばす。

そして最後は左手に持つ短剣で先生の首目掛け突く。

だがランスロッテ様も普段は使ったことがなかった呼びの短剣をいつの間にか握っており、僕の喉元でそれが光っている。

「相打ち・・・ですか・・・?」

僕は確認すると「その様だ。本当に強くなったな。」と今回の一戦を褒めてくれる。


「いや、驚いた。本当に君は変幻自在な戦い方をする。」


「これはアッシェ先生との戦いで身につけた戦い方ですね。久しぶりに使ってみましたが呼吸法となかなか相性が良くて驚きました。」


「そうだね。」

ランスロッテ様は素直に感心してくれる。


「では、アルヴェリオン共和国への旅は?」


「これなら問題ない。行こうか。」


「やったー!!」


僕とレビンは手を合わせ喜ぶ。


「王へ許可を取るからしばらく待っててね。」


「わかりました。あれ?でもアルヴェリオン共和国へ行くのはお忍びとかじゃ?」

僕は以前セディウス宰相とランスロッテ様が話していたことを思い出す。


「ああ、それは表向きの話さ。ちゃんと王へは伝えるよ。そして緊急時は帰るさ。」


「なるほどです。」


「さあ、これから準備で忙しくなるぞ。」


「はい!」


そうして僕が11才の誕生節を迎える頃、準備が整いアルヴェリオン共和国へ旅立つこととなった。

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