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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第59話】神薙【番外編】

ニクスから話されたニクス自身の前世、魂、そして魔人とそれに今後も立ち向かわねばならないという使命に私は酷く動揺してしまう。

またニクスが生死をさまようほどの怪我を負うのではないか、最悪次は死んでしまうのではないかという不安であった。

そんな事を考えているとニクスから私が回復魔法使いとして認められた経緯を教えてくれと言われる。


「そうですね。お話しましょう。」

私はゆっくりと思い出しながら話を始める。

私は正式に公爵家の子としてアカデミーに入学し慣れないながらも新しい学びや体験に驚かされる日々を過ごしていた。

そんなある日のことだった。


私はいつも通り早めに教室を移動し次の授業に向け準備をしている時に一人の少年から声を掛けられた。

「おはようございます。貴方がヴァリエスト公爵家の養女になられたリリー様ですか?」


「え?」

私が不意に掛けられた声の方を向くとそこには見たことがある『重要人物の顔』があった。

私は慌てて立ち上がり頭を下げ礼をする。


「おはようございます。ミーシャ殿下。」

その人はグラディア・オルド王国第三王子のミーシャ・グラディオールであった。


「ああ、すまない。驚かせてしまったかな?それにここでは肩書は関係ない。実力が全ての場所だ。楽にして欲しい。」


「い、いえ・・・。そんな訳には。」


「まあ、最初は難しいよね。」


「ミーシャ様そろそろ移動しませんと私たちが遅れてしまいますよ。」

そう、なぜミーシャ様がここにいたのかわからなかった。

彼は私より二つ上の学年のはずだったからだ。


「たまたま、次のクラスへ行く途中君の姿が見えたので挨拶だけしておこうと思ってね。今度是非ご一緒に昼食でも如何ですか?リリー様。」


「それは大変嬉しいお誘いです。是非よろしくお願いいたします。それと私のことはリリーとお呼び下さい、殿下。」


「では私の事も是非ミーシャとお呼び下さい。」

ミーシャ様がいたずらっぽく言う。


「ではミーシャ様と。」


「ふふ、今日はそれくらいで勘弁しておいてあげよう。では。」

風のように現れ風のように去っていくミーシャ様に私は頭を下げる。

私は今のが一体何を意味するのか良くわからず、考えていたがすぐに授業となった。


今回の授業内容は『正確に自身の魔法適性を判断する方法』だった。

この授業についてはまず基本的な魔法属性の他にも様々な属性があることが教えられる。

レビンは基本四属性と光・闇のどこにも当てはまらない雷属性であったのでそれは身を持って体験していた事だった。

ちなみに私は光属性であるが光もかなり特殊であり、その中でも特に珍しいと言われるのが『回復魔法使い』だった。

特にこの回復魔法使いでも最上位の者はどんな怪我や病気も治す事ができると言われている。


私はニクスを始め、村の知り合い達が傷つくのを何度も見ては自分の力の無さを嘆き涙を流した。

どうしても『力』が欲しい。

どんなに傷ついても、どんなに病んでいても『癒やし切るほどの力』が欲しい。


説明が終わり、名前を呼ばれたものは教師の元へ行き、設置してある大きな水晶に触れることで自身の本当に秘めた力が『理解出来る』のだという。

私の名前が呼ばれ、水晶の前に立つ。


「ふーっ」

息を深く吐き一心に願いながら水晶に触れる。

すると不思議なことに今までの出来事がまるで眼の前で繰り返されるような不思議な感覚に陥る。

その時だった。

『ほう、君は力を望むのか。それもどんな傷でもどんな病でも治し切れるほどの力が。』

頭の中で声が聞こえる。

私は自然とその声に答える。

『望みます。』


その瞬間見てはいないはずのニクスと誰かが戦っている様子が眼の前で広がる。

私は声を出すが声にならない。

ニクスとレビンが大きく袈裟斬りにされ、瀕死になる。

血がどんどんと流れ、命が消え掛かるニクスに何もしてあげることは出来ない。

『ニクス!!』


私がようやく脳内で声を出せたかと思うと、場面が切り替わりそこには大きな懐中時計がありその前に年老いた男性なのか女性なのか性別がわからないような老人が座っている。


「え?ここは?」


「ここは現実と夢の間。時すら干渉できない特別な空間。」

老人が声を出すがやはり性別がわからない。


「貴方は?」


「私は時計に宿った神である。名を『命の逆巻時計』と言う。」


「命の逆巻時計?」


「ああ。私は本来はニクスの魔臓となるべきはずだった存在でもある。」


「ニクスの魔臓・・・?では何故私の前に現れたのです?」


「それは恐らく君の魂にも干渉しているからだろう。私の力の一部が君の魂と深く結びついているようだ。」


「え?」


「何故なのかは聞かないでくれよ。なんせ私にもわからないことだ。だが君の願いは形は変わるが聞き届けられる。」


「では私は回復魔法使いに!?」


「いや、回復魔法使いではない。」


「え?では・・・。」


「『時戻しの魔法』が君の力の本質だ。」


「『時戻しの魔法』・・・?」


「今はわからないだろう。だがきっとその意味がわかる時が来る。では私はそろそろ行くとする。時が来たようなのでな。」


「そんな!待って!!」


手を伸ばした瞬間いつもの教室に戻っていた。

教室内は騒然としていた。


「え?」


「リリー嬢。大丈夫ですか?」


教師より身体の心配をされる。

私は理由もわからず、「え、ええ・・・。ご心配をおかけしました。」

そう答えると、すぐさま今回の授業は一時休止となり自習となった。


理由も分からずいると、教師より「こちらへ。」と案内されなんと校長室へ案内されることになった。

私はその道中不安になり教師に質問をする。

「え?私・・・。なにかしましたか・・・?」


「その様子では覚えていないのですね。貴方は水晶に触れた瞬間強い光魔法属性の反応が見られました。恐らくは『回復魔法使い』の素質を見たんではないですか?」

私は先程のことを思い出しながらそれに対し「いいえ、残念ながら。」と答える。

「では何に・・・?」


「可能でしたらそれは校長に直接お話をしたいのですが・・・。」


「わかりました。こちらです。」


コンコン


「失礼致します。校長、今お時間大丈夫ですか?」


「ええ勿論。さあ、どうぞ。あ、君は戻ってくれていいよ。授業の続きをしてあげたまえ。」


校長からそう言われた教師は部屋から退室し、部屋には校長と私だけになる。


「やあ。リリー嬢。こうして二人だけで話すのは初めてですな?改めて私が本アカデミー校長のオスカー・ルーンウィズです。」


私は頭を下げ礼をする。

「勿論存じております。私はリリー・ヴァリエストです。」


「丁寧な自己紹介をありがとう。お掛けになってください。」


「ありがとうございます。」


「1年生の君が今日このタイミングでここに来たということは、『正確に自身の魔法適性を判断する方法』の結果かな?」


「はい。」


「確か君は強い光属性を有していたね。それに関係することかな?」


「はい。」


「説明してくれるかな?」


「私もまだ信じられないのですが・・・。」

私はそう言いながら先程体験した全てをオスカー校長に話す。


「『時戻しの魔法』か・・・。」


「オスカー校長は何かご存知なのですか?」

私は正直体験したこともないことや聞いたことがない魔法等の情報が一気に入ってきたせいで心が不安で押しつぶされそうになる。


「ああ、知っている。そうか、回復魔法ではなく時を戻すか・・・。君は、魔法使いでは無く『神薙(かんなぎ)』と呼ばれる存在になる可能性があります。」


「『神薙(かんなぎ)』ですか?」


「そうだ。時折君のような神の領域に近い事象を司る魔法使いが現れる。それは時として新しい時代を作る為に必要な存在となりうるもので、それを総称として『神薙』と呼びます。」


「私は稚拙ながら勉強した中では『神薙』という言葉は今回初めて聞いた存在です。」


「そうでしょうな。『神薙』は回復魔法使いよりも更に稀有な存在でこの国で『神薙』になったのは君を除けばたった一人です。」


「え・・・?」


「そして残念なことに『神薙』はこの国では育成できません。『神薙』として力を育むには適切な場所が必要なのです。」


「それはどこなのですか?」


「ここよりはるか東にある小さな島国『大社大和(おおやしろやまと)の国』です。」


「『大社大和(おおやしろやまと)の国』・・・。」


「リリー嬢、このお話を誰かにしてはなりません。私より王へお話します。後日に王が大和の国と調整を付け、その後貴方は正式に大和の国に移動することになります。」

またしても自身の境遇が変わることを知り若干のめまいを覚える。


「この事をお養父様にお話は?」


「それは王が判断されるでしょう。今は回復魔法使いとして正式に目覚めたと言っておけばよいかと思います。」


「そこまで守秘性が高い存在なのですか?」


「ええ。『神薙』の存在はそこまで強力だということです。」

恐らく戦争が起きるレベルの話になるのだろうと自身の何処かで納得していた。


「わかりました。対応はそちらにお任せ致します。」


「確かに承りました。しばらくの間はこのアカデミーの生徒として、しっかりと学んでくださいね。」


「ありがとうございます。」


そして日が経ち、本日王より召喚が掛かりここに来た次第だった。

お養父様は何も知らなかったようだが、王が極秘裏に大社大和(おおやしろやまと)の国と調整を付け正式に私が『神薙』見習いとして出国することが決まる。

出国時期は1ヶ月後。

大社大和(おおやしろやまと)の国より使者が迎えに来るとのことだった。

私が出国するまでは決してこの話を出してはならないという箝口令まで敷かれる。


「お養父様?そんな悲しい顔をなさらないで下さい。」


「だが、リリー・・・。君は・・・。」


「私が自身で望んだ力が手に入りそうなのです。私は嬉しく思っています。」

それを聞いたお養父様は何も言わずに唇を噛んでいた。


「ではそういう事なので、この事を口外することを一切禁じる。聞かれた際は回復魔法使いとして目覚めたとして話すということで足並みを揃えるように。以上だ。」


「御衣に。」

私とお養父様は跪き頭を下げる。


これが今回の私の中の話の全てだ。

だがそれは例えニクスの「命の逆巻時計」が関係していたとしても、私がニクスの姉だとしても話すことは出来ない。

私はニクスにこう告げた。


「回復魔法使いとして正式に認められ、今後はそれに沿った教育がなされるようです。大変嬉しい限りです。」

私は笑顔で答えたつもりだった。

だが流石は弟のニクスだ。

どこか引っかかるものを感じたらしいがそれは私にとって重要なものだと認識してくれたようだ。


「リリー様のご活躍、これからも陰ながら応援させていただきます。」


こうして私とニクス達との懐かしい食事の時間は終わりを告げた。


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