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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第58話】懐かしい夕食

夕飯時は忙しくなるかと思っていたがそうでもなくゆっくりと過ごすことが出来そうだった。

最初は一緒に食事をするのかと思っていたがレビンが問題となり、説明も全てランスロッテ様にお任せすることに。

僕達は控え室で食事をすることとなった。

マナーなどを頭に入れずに済む分大分楽だったが、今後のことも考えるとランスロッテ様の養子として認められる以上、貴族としての立ち振舞を知らなくてはいけないのかもしれない。


ちなみに説明についての小さなメモ用紙を作りランスロッテ様に持たせておいた。


「美味しければそれでいいと思うんだが、説明なんているのかね。」


「貴族であるランスロッテ様がそれを言ったら終わりじゃないですかね?」

そんなやり取りをしていると非常に不安になる。


暫くすると執事の様な人がランスロッテ様だけを連れて退室していく。

僕とレビンは再びお留守番となる。


「夕飯はどんな感じなんだろうね。上手く受け入れてもらえると嬉しいけど。」


「あんだけ旨いんだ。問題はないだろう。」


「そういやレビン、君あの芋の揚げ物好きだったよね。」


「ああ、なにせ最初に失敗した原因は俺だったからな。」

そう、実はあの芋のパン屑を付けて油で揚げた物の最初の失敗の原因はレビンだった。

元はといえばただ芋を茹でたものを潰して固め、それを焼色が付くまで焼いたものに過ぎなかった。

それが突然調理場にレビンが現れたことで驚き、別の料理に使おうと思っていた溶き卵に落としてしまったのが始まりだった。

それを最初は勿体ないと思ったことからどうにかしようと思ったのだが、上手く焼けそうになかったのでカチカチパンを砕いてそれに纏わせ焼いてみた。

それが味は最初は味はいまいちだったが伸びしろを感じた僕達は色々回数を重ね、結果的に油で揚げるという結論に達し現在に至っている。


「あはは。あれがまさかこんな事になるなんてねえ。」


「ああ、でもそれ以来俺は厨房に出入り禁止になったがな。」


「そりゃそうだよ。火や刃物を使ってるんだ。危ないったらありゃしない。」


そんな事を話している時だった。


コンコン


不意に扉がノックされる。


「お?いよいよ夕飯か?」


「レビン!はい。どうぞ。」

そうは言いつつ僕もお腹が減っていたので夕飯だったら嬉しいなと思っていた。

だが予想は大きく覆され、更に嬉しい光景が広がっていた。


「失礼するよ。」

なんとそう言いながら入ってきたのはリリーとマクシミリアン公爵そしてマーリンさんだった。


「リリー・・・!様とマクシミリアン公爵様。」


「相変わらず元気そうで何よりだ。ニクス君。レビン。」

僕は慌てて跪き頭を下げる。


「大変失礼しました。お久しぶりです、マクシミリアン公爵閣下。」


「そんなに畏まらんでくれたまえ。私もリリーも今日は一介の客人に過ぎない。」

そういえばなんでマクシミリアン様とリリーはいるんだろう。


「今日は偶然にも我が娘、リリーが正式に『回復魔法使い』として認定を受け、その見習いとなることを王に報告しに来たのだよ。そうしたらランスロッテが来ていて話を聞いたらどうだ。君たちも来ているということではないか。全く我が主君はとんだ演出家だよ。」


「そういうご用向きがあったんですね。リリー様。『回復魔法使い』の認定おめでとうございます。」

僕はリリーに心から祝いの言葉を送った。


「ありがとうございます。ニクス様。」


「今日は君たちは正式に報告に来たのだね?結果はどうだった。」

マクシミリアン様は今日の報告がどの様なものになるか知っている様子だった。


「お陰様で万事つつがなく。これもマクシミリアン公爵閣下のお陰です。」


「そうか、それは良かったな。所で今日は王に面白いものを献上するらしいではないか。実は私も夕食にお呼ばれしていてね。」


「そうだったんですか。お恥ずかしながら、まさかあの様なものが献上品になるとは思っても居りませんでした。」


「ははは。それについてだが、どうだリリーよ?折角だ。我々のような年寄りたちと食事をともにするより年が近いニクス君達と食事を共にするというのは?」

僕はその言葉を聞き非常に驚いたが、僕よりも遥かに表情が明るくなったのはリリーの方だった。


「よろしいのですか?お養父様?王との会食のほうが重要では。」


「確かにそうかもしれんが・・・、そうだな。まだ王と会食するのは『礼儀が足らないよう』に見える。」

マクシミリアン様はどこかわざとらしさを感じるような言葉でリリーにダメ出しをする。


「・・・!お恥ずかしながら、確かにまだ私は王と共に食事をする為のマナーも心構えも足らないかもしれまえん。大変申し訳有りません。お養父様。」

そう言いリリーは深々と頭を下げる。


「良い。私から王には伝えておく。ではリリーもこちらで彼らと食事をするように。」


「はい。」

そう言うとリリーは深々とお辞儀をするが、口は笑みを作っていた。


「それとこの場はマーリンに任せることにしよう。ナタリー、君は逆に王との会食での護衛というのを学ばせる。一時的に護衛騎士を交代させよう。」

なんと普段はマクシミリアン様の護衛をしているマーリンさんとリリーの護衛をしていると思われるナタリーと呼ばれた騎士を交代させるということ。


「「はっ!」」


二人は即座に返事をし、護衛対象を交代させる。

マーリンさんは僕と目が合うなり片目をつぶりウインクして合図してくれる。

うわあ、本当に久しぶりにリリーと食事ができる。


「ではゆっくりすると良い。」

そう言い色々便宜を図ってくれたマクシミリアン様がナタリーを引き連れ退室する。

本当にいつもいつも助けてもらってばかりだ。


「えっと・・・、リリー・・・様?」

僕はなんて呼んだら良いか一応敬語で話しかける。


「ええ、何でしょうかニクス様?」

リリーは流石の察しの良さで即答する。

なるほど。もう教会のリリーでは無く、公爵家養女のリリー・ヴァリエストな様だ。


「今日はこの様に夕食をご一緒できること、大変恐縮です。」

僕はそう言い頭を下げる。


「私こそ。ニクス様とは色々お話したいことが有りました。どうやらお話によるとニクス様も男爵家の子となるとか。」

どうやら僕がランスロッテ様の養子になることを既に知っているようだ。


「大変嬉しいことです。」

そう言い僕は笑みを浮かべ答える。


「本当におめでとうございます。」

リリーは名も纏う空気も変わったように思えるが、笑った顔はどこか昔のままのように見えた。


コンコン


「失礼致します。お食事を運んでまいりました。」

その言葉とともに今日の夕飯が運び込まれる。

中には僕が献上品として王に献上することとなった料理も見える。

それに一番驚いていたのはリリーだった。

どうやら献上品の中身までは知らなかったようだ。

運んできたくれた人が色々と説明してくれているが僕はリリーの「やってくれたな」という視線が痛すぎてあまり頭に入ってこなかった。


「では失礼致します。」

そう言い使用人の方たちが退室すると、その部屋には僕、レビン、リリー、マーリンさんだけとなる。


「マーリン、よかったら冷めないうちに貴方も一緒に食べましょう。」

確かこういう時は毒見やら下げ渡しやらがあるんじゃなかったっけ?


「ありがたき御言葉。では失礼致します。」

どうやらそこら辺は今日はすっ飛ばすようだ。


「レビン、貴方も私の近くで召し上がりなさい。」

そう言い、遠くに用意されたレビンを呼ぶ。

僕はその言葉を聞き、レビンの皿を近くまで持ってくる。


「失礼があるかとは思いますがどうかご容赦下さい。」

僕はリリーにそう言うと「存じております。」とだけ返答してくれる。

何もかもお見通しのようだ。


「頂きます。」

そう言って僕達は食事を始める。


一応毒見役ではないが僕が先立って食べて見せることにした。

それを見てリリーたちも食事を始めるが、やはりリリー達もメインより先に僕達が今日献上したものから食べ始めた。

「ああ・・・、美味しいですね。懐かしい味がします・・・。」


リリーがそう言い目を閉じながら食べている。

「ええ本当に。昔を思い出す味ですね。」


僕とリリーはまだ10才だと言うのに、そんな事を言いながら食べるのがおかしかったのかマーリンさんが静かに笑っていた。


「所でこれらの新しい食べ物に関しての報酬は何を願ったんですか?」

リリーが気になったのか聞いてくる。


「ええ、とある村と教会の益となるようお願い申し上げました。」


リリーはその答えに満足したようだ。

「それは素晴らしいですね。」


一通り食事を終え、僕とリリーは会話を始める。

「ニクス様、色々と大変なことが起き会話をする時間も有りませんでした。今日も余り時間はないと思いますが、可能な限り私に教えて頂けませんか?あの日、あの時何があったのかを。」


「わかりました。」

そうして僕は自身の前世の話、魂の話、ノクタリウスとの因縁を話しランスロッテ様の養子となった経緯を話す。

リリーは、どうやらある程度簡単な話は聞かされていた様だがここまでの詳細な話は知らなかったようだ。

マーリンさんは最初の証言の時に証人として話を聞いていたので驚きはしていなかったが、やはり話の内容の深刻さに真剣な表情で目をつぶっていた。


「良ければ僕からもお聞きしてもよろしいですか?リリー様が『回復魔法使い』として認定された経緯を。」

僕がそう切り出すと、リリーは「そうですね。お話しましょう。」とゆっくりと話しをしだす。

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