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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第57話】献上されるレシピ

王様との謁見はひどく緊張したが無事に終えることができ、今は客人としてもてなされている。

そして僕はと言うと、王様との約束により以前ランスロッテ様に作った潰した芋をパン屑で包み油で揚げたものとサラダに掛けるソースのレシピを丁寧に書いていた。


正式に王へ提供されるのは夜食時となるとのことでそれまでにまずはレシピを書きそれを調理担当者へ渡し、出来上がったものを僕達が食べ実際に献上できるレベルか、または作り直すか等を行うとのこと。

折角なのでもう一品、同じく芋と油で作れる菓子を追加することにした。


「え!?なにそれ。私はまだ食べてないと思うんだが?」

レシピをランスロッテ様が横で見ており、その菓子のことを書き出した途端文句が飛び出た。


「まあ、どうせですからね。今度直接作りますから。」

僕がランスロッテ様を窘めていると「絶対約束だからね。」と念押しされてしまう。

ランスロッテ様の胃袋もしっかり掴めたようだ。


「良し、こんなところかな?ところで書けたものはどうすれば良いんですかね?」


「ああ、それはこうすれば良い。」

そう言ってランスロッテ様は手元にあるベルを鳴らすとそれを聞いた部屋の外にいた執事さんらしき男性が部屋に入ってきて、そのレシピを受け取ってくれた。


「確かにお預かり致します、アーテル様。」


「ああ、確かに頼んだよ。」


「失礼致します。」


そう言ってレシピを持って行ってしまった。


「後は料理番があのレシピを見て実際作り上げたものを私とニクス君で試食して問題がなければそれが夕飯に並ぶことになる。正確に言えば献上されることになるかな?」


「はー・・・。料理一つ出すのにそんな大変なことになるんですねえ。」

僕はあまりの遠回り具合に目が回りそうになる。


「ニクス君はわかってないなあ。レシピと言っても、王に献上されるとなればその価値は王に献上される宝石と同じなんだぞ。」


「ええ!?全然物が違うじゃないですか?」


「だが結果的には同じ事だ。形が違うだけで価値は同じになる。」


「そんな風に言われると、先程ので大丈夫かひたすら心配になってきました・・・。」

僕は背中に冷たいものを感じるくらい心配になる。


「大丈夫。曲がりなりにも王に仕える料理番ということはこの国で一番の料理番ということになる。あれを再現できないレベルの人間はいないさ。」


「僕とシスターとリリーが何度も失敗してようやく形にできたものがそんな簡単に再現できるとは流石だなあ。」

控室で待っている間はひたすら暇になりそうだなあ、なんて思っていた矢先のことだった。


コンコン


「失礼致します。アーテル卿居られますかな?」

そう言い入ってきたのはセディウス宰相だった。


「セディウスか。何か用かな?」

ランスロッテ様が席を案内し座るよう勧める。


「ありがとう。王に話される前に聞いておきたかったことがあってな。」


「ふむ?」


「今後の予定だよ。君のことだ、なにか考えがあるんだろう?」

そう言われランスロッテ様は僕の顔を見る。


「ニクス君、こちらへ。君も聞くと良い。」

たしかに今後の予定は気になっていたので僕も聞けるというのは助かる。


「そうだな。まず半年~1年位は私の直接指導のもとで訓練を行う。絶賛訓練中だ。」


「ふむ。その後は?」


「南に向け出国する。」


「南?まさかアルヴェリオン共和国か!?」

セディウス宰相が立ち上がりそうになりながらランスロッテ様に疑問をぶつける。


「ご明察。」


「アルヴェリオン共和国って獣人達の国でしたっけ?なんでそんな所に行くんです?」

僕が地理関係を思い出しながらランスロッテ様に聞く。


「理由は単純明快。君をより強くするため。」

僕はわかったようなわからないような状態になる。


「よりにもよってアルヴェリオン共和国か・・・。反対派の声は大きくなるだろうな。」


「まあ、そうだろうね。幸い私はアルヴェリオン共和国とは親和性が高い。なので最悪秘匿して欲しい。」


「確かに表立って出立されると王への風あたりも強くなるだろうな。その点いつも放浪しているアーテル卿ならば、重要行事に参加しないでも『いつものこと』で片付けられるか・・・。」

セディウス宰相は目を閉じながら考えている様子だった。


「流石セディウス、わかってるね。まあ、もし何かあれば緊急伝言でも送ってくれれば転移陣(ポータル)ですぐに返ってくるよ。」


「わかった。それで王には話しておく。ただ、それだけではないんだろう?」


「ああ、この子が13才位になったら冒険者に登録させて高難度の討伐をさせる。」


「ぼ、冒険者ですか!?」

僕が思わず興奮して立ち上がると「座りなさい。」と窘められる。


「理由は?」


「一つは経験を積ませる。もう一つは生命力か魔石を貯蓄させる。」


「生命力と魔石の貯蓄・・・。それは例の?」


「命の逆巻時計ですか?」


「ああ、そうだ。2年掛けてその時計に貯めれるだけ生命力を溜め込む。そして15才の『真紅の満月』時にノクタリオスを迎え撃つ。最悪、そこで時間切れで引かせることが最低条件。一番良いのはその時点での完全撃破だ。ちなみにこの時ニクス君が死ねばこの世界は滅びる。」


それを聞いたセディウス宰相がこめかみを押さえる。

「本当に手段も時間もないんだな。」


「その通りだ。」

この場を重い空気が支配している時だった。


コンコン


「失礼致します。」

先程の執事さんらしき人物が現れる。


「あ、お話中でしたか。出直させていただきます。」


「いやいい、聞こう。」

そう言ってセディウス宰相が部屋に招く。


「セディウス様にそう言って頂けるのは大変ありがたく思います。」

執事さんが困ったような表情を浮かべている。


「どうかしたのか?」


「実は料理長より、実際に厨房に来てもらいアドバイスを欲しいと言われまして。それは叶わないと言ったのですが・・・。」


あれ?この国で最高の料理人だから任せておけばよかったのではなかったの?

僕はそう思いながらランスロッテ様を見上げるとランスロッテ様は僕の心を読んだようで「あはは・・・。」と誤魔化していた。


「いや、それはならん。なんと嘆かわしい。王家の厨房がどれだけ重要なものかを理解しているはずだ。」

セディウス宰相はそれを聞きかなり怒っている様子。


「ニクス君、何かいい案はないかね?」

ランスロッテ様に言われ、「うーん」と悩む。


「あ、そうだ。僕はこの部屋から出られないけれどランスロッテ様は良いんですよね?」


「ああ、私は制限は掛かっていない。」


「なら先程のレシピを一回引き取り、家に帰ってハースリンに作ってもらいましょう。それを持って再度こちらに戻られそれを料理長に見本として渡したら如何でしょうか?見本があれば流石に作れますよね。」

僕が時間を掛けずにその案の出すと、セディウス宰相が驚いていた。


「本当に10才の子どもとは思えぬ発想力だな。それなら許可しよう。ただし、この部屋に見張りの兵を置くことになるが構わないかね?」


「僕はそれで解決するなら構いませんよ?」


「私もそれでいい。全くこの国で最高の料理番だと思っていたのに少しがっかりだな。君、先程のレシピをこちらに。」

ランスロッテ様がそう言うと早々にその執事さんが料理長のもとに行きレシピを回収してくる。


「では私は兵を呼んでくるとしよう。少々待たれよ。」

セディウス宰相がそう言い二人の兵を連れてくる。


「ではこれで良いかな?私は早速一旦失礼するよ。」

ランスロッテ様がそう言うといつも持ち歩いている鞄を例のごとく地面に置きガン!と蹴り上げるとぱかっと口が開き転移陣(ポータル)が出現する。


「君たち?この子達に失礼なことをしたら物理的に首がその体から取れると思え?」

ランスロッテ様が見守りの兵にそんな怖いことを言って転移陣(ポータル)で家に帰っていった。


「あはは。すみません。」

代わりに僕が謝っておいた。

僕とレビンは戯れているうちに緊張が若干ほどけ朝からの忙しさも相まり、少し眠ってしまった。


「ニクス君。」

ランスロッテ様の声が聞こえ僕が目を覚ますし外を見るとすっかり日が暮れ始めていた。


「やあ。大丈夫かい?」


「あはは。流石に気疲れしてしまったようです。所で料理は?」


「万事上手く言っているさ。ハースリンにレシピを渡したらハースリンが料理番達に怒っててね。何でこんなにも丁寧なものが国に仕える料理番なのにわからないんでしょうか!ってね。手本になるように少し多めに作ったのを僕が料理番に渡したら、初めて見る料理に料理番達も感激してたよ。」


「それは良かったです。ところで味見などはどうされたんですか?これからでしょうか?」

僕が頭に?を浮かべながら聞く。


「いや、それももう済んだよ。それにしてもあの潰した芋の揚げたもの、少し内容が違っていたね?それにあの薄く揚げた芋の菓子、塩が本当によくあっていて美味しかったなあ。」


「あ、僕達を差し置いて一人で食べてましたね・・・?」


「あはは。あまりにも君たちが気持ちよさそうに寝ていたのでね。夕飯の時に食べると良い。」


「ということは・・・。」


「ああ、正式に献上品として認められることになった。」


やったー!!これで少しは村と教会に恩返しができるぞ!!

夕飯が一際楽しみになった。

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