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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第56話】王との謁見

王と面談をする当日は朝早くから始まった。

いつもより早く起き、朝食を済ませたかと思えばすぐに衣装店の方たちが来訪し、僕はなされるままに豪華な服に着替えさせられる。


「こ、こんな高級な服を着せられるなんて・・・。汚れ一つ付けられ無い!」


「じゃあ俺が汚してやろうか?」

レビンが馬鹿なことを言っている。


「レビン!」


「その分俺様は気楽だぜ。なんせ着るものがないんだからな。おうぅ!?」

そんな軽口を言っていたレビンだったが、案の定ランスロッテ様に捕まる。


「確かに君は今日は着飾らなくてもいいかもしれないが、その分黙っておくのが君の仕事だ。良いね?」

ランスロッテ様の笑顔は有無を言わせない笑顔だった。


「は、はひ・・・。」

これには流石のレビンも敵わない様子。


「さあ、終わりましたよ。ランスロッテ様如何でしょう?」

店主の声がかかると僕の着替えはようやく終わる。


「ああ、これは良いね。どこから見ても貴族のお坊ちゃんだ。」


「もーランスロッテ様!」


「あはは、すまない。だが、本当によく似合っているよ。」


「それは良かったです。所で今日の移動ってどうなるんですか?」

僕はようやく着替え終わり、いつもと違う体力を消耗していたので座りながらランスロッテ様に尋ねる。


「ああ、今日は城から向かえの馬車が来る。流石に徒歩で城にはいけないからね。」


「そうですよね。でも馬車かあ。お尻が痛いんだよなあ・・・。」

僕は以前乗った乗合馬車の事を思い出し、お尻を思わずさすってしまった。


「あはは。それは大丈夫。ここは道も舗装されているし何より貴族が乗る馬車と村人たちが乗るような馬車とは作りからして違うからね。」


「それは心から安心しました。」


馬車が来るまでの間、僕はランスロッテ様より色々なレクチャーを受ける。

正直緊張しすぎて右から入った情報が左から抜けている気分だ。


そんな時ハースリンが向かえの馬車が来たと教えてくれる。


「さあ、行こうか。」


「はい。」


「おう。」


僕達は向かえの馬車に乗り込む。

確かに見た目からして全くの別物で座り心地も段違いだった。


「僕達が乗ったあのとんでもない馬車は何だったんでしょうか・・・。」


「あれは俺も流石に吐きかけたぜ。」


「頼むから吐かないでくれよ。衣装返せなくなっちゃう。」


「私はあの様な馬車のほうが風情があって好きだけどな。」

流石旅慣れしているランスロッテ様はお尻の痛さよりも風情や雰囲気のほうが重要視されるようだった。


「そんなことよりもほら、見てご覧。今日の目的地グラディア・オルド王国城だ。」

ただただ圧巻の一言だった。


「わあ・・・。圧倒されますね。」


「そうかな?私からすればただの大きな家でしか無い気がするけどね。」

さっき、風情とか言ってた人の感想とは思えない言葉だった。


「ランスロッテ様、雰囲気ぶち壊しまくりですね。」


「あはは・・・。」


入城してからは僕とレビンは言葉を一切出さず、ただただランスロッテ様の後ろについて回るといったことを厳命されていたのでそれを守る。

それに合わせて緊張も酷くしていたので正直城の中をいちいち見てる余裕など無かった。


一度控室などに案内されるのかと思っていたが、そんなことはなく謁見の間に直行となる。

恐らくこれは僕のようなまだ素性も知らぬ魔人が城の中をウロウロするを良しとしないということの現れだと思った。


謁見の間の扉前に着くと衛兵が扉を開けてくれる。


「ランスロッテ・アーテル男爵入室。」


ぎぃ!と如何にも重そうな音を立て両開きの扉が開かれる。

そこには何人もの衛兵たちが左右横一列にぎゅうぎゅうに並んでいる。


そしてその先、王座に座っていたのは紛れもないこの国の王であった。

ランスロッテ様が先を歩き僕はそれに着いていき、跪かれた所で同じ様に跪き頭を垂れる。


「ランスロッテ・アーテル、只今主君の命により参上いたしました。」


「うむ。してそちらの少年が例の者かね?」

王のその一言の威圧感で潰されそうになる。

これが大国の王なんだと心の芯から思い知る。


「は。こちらが魔人ノクタリオスを撃退した人物、名をニクスと申します。」


「ふむ。ニクスとやら。顔を見せなさい。」

僕はその言葉を受け顔を上げ、王の目を真っ直ぐに見る。

とてつもない存在感だった。


「いい目をしているな。いくつか質問させてもらうが構わないかね?」


「はい。嘘偽り無くお答えすることをお約束致します。」


「助かる。では早速だが、君は今回顕現した魔人と魂の根源が同じだという話だがそれは真かね?」


「はい。事実です。」


「では君は人間ではなく魔人ということかな?」


「定義によるかとは思いますが普通の人間ではないとだけしかお答えできません。」


「それを証明できるすべはあるか?」


そう言われ僕は眼帯を外す。

「失礼します。お見苦しい所をお見せ致します。」

外された眼帯の下から現れたのはノクタリオスに傷つけられた、右目があったであろう部分だった。


「レビン。」


「・・・ああ。」

そう言うとレビンは僕にすうっと融合し、その失われた右目に猫の瞳の様な右目が入る。

それを目の当たりにし、少しのどよめきが起きる。


「これは通常の人間ではできないと思います。ですのでこれを持ってして魔人だと仰るならば魔人だと思います。」


「ふむ。なるほど・・・。では君は世界の破壊や滅亡を望むものかね?」


「それは断じて有りえません。私が今こうしてランスロット様と共に王の前に参じた理由はそれを防ぐことを明確に示したかったからです。」


「ほう。・・・その目、確かに嘘偽りは申しておらんな。では君の目的とは?」


「魔人ノクタリオスの命の形を正し、その生命を終わらせることです。」


「仮にそれが上手く行ったとしてその後はどうする?普通の人間ではない君が残ることになるが?それはもう一人の魔人を生かすことに繋がらないかね?」


「僕が魔人ノクタリオスを殺すという使命を終えることが出来たのであらば、この命惜しくは有りません。如何様にもしてくださって構いません。」


「それは貴殿の命を奪うことになる結果になってもか?」


「僕が守りたかった命を守ることが出来、それを見届けることが出来たのであればそれで十二分でございます。」


「く・・・あっはっはっはっは!こいつは愉快。」

王は人目も憚らず大笑いし始める。


「確かに貴殿は普通の人間ではなさそうだ。こんな答えを持ち合わせる10才の少年なぞ想像もできぬわ。良かろう。当初の予定通りアーテル卿にニクスに関しては一任する。」


「ありがたき御言葉。確かにその任、承りました。」


「セディウス、これで良いな?」


王はセディウスと呼んだ人物に確認を取る。


「王の御心のままに。」


「では人払いを。」

王がそう命じると一気に謁見の間に居た兵たちが出ていき最低限の人間だけが残され扉が閉まる。


「ランスロッテ、ご苦労であった。楽にして良いぞ。」

王から圧が一気に消えたように感じ言葉も非常に砕けた言い方になっていることに気が付く。


「ふう。ありがとう、セレヴァン王よ。」

ランスロッテ様はその場で立ち上がり、王と親しげに話し始める。


「ニクス、君も楽にして良い。試すような真似をして済まなかったな。」

まるで別人の様な王からそう言われ僕は立ち上がる。

本当に同一人物なのかと思えるくらい人が変わっている。

これもまた王という存在なのかと思った。


「ニクス君、君も感じ取っている通り先程の王と今の王は別人だと思ってくれて構わない。不敬がなければ話をしてくれて構わないよ。」

ランスロッテ様からそう言われ僕は肩の力が抜ける。


「ありがとうございます。」


「それにしても本当に君は凄い子どもだな。先程も言ったがとても10才の子どもとは思えぬ。」

王が立派な顎髭を撫でながら聞いてくる。


「先程も言いましたが普通の人間ではありませんから。前の魂、『前世』というやつが僕には有り、しかもそれと会話もできてしっかりと今の僕と魔人ノクタリオスとはどういう存在なのかを認識出来ています。それに前世となる人は言っていました。その人の影響が僕の方に多く残っていると。」


「ふむ。今もその前世となる人物とは話すことは出来るのか?」


「いえ、時間が来てしまったようで、ノクタリオスについての最後の願いを託すと同時に消えてしまいました。」


「それは残念だ。色々と聞きたいことも会ったのだがな。所でランスロッテ。君の手紙にあったが。この子を養子にしたいとあったが本気か?」

王がランスロッテ様に僕の養子縁組の話を切り出す。


「ええ、後ろ盾としてはこの上ないものだと思うし、何より私自身が心の底から彼と共に歩みたいとそう願った結論だ。認めていただければ助かる。」


「まさか放浪者のランスロッテにここまで言わせるとは。本当に不思議な少年だ。勿論構わないさ。」

王は僕がランスロッテ様の養子になることを快諾してくれる。


「しかしセレヴァン王よ。本当によろしいのですか?反対派の意見もかなり声が大きいようですが。」

セディウスと呼ばれていたものが王に忠告をしていた。


「反対派の意見なぞ、いつも私に反対しているような連中が主だ。無視しろ。ああ、紹介がまだだったな。コヤツはセディウス・ヴァルモント。この国の宰相であり我が右腕になる。」


「初めまして。よろしくお願いいたします。」

僕はセディウス宰相にも頭を下げる。


「ああ、よろしく頼むよ。しかしこの子がアーテル卿の養子か。ヴァリエスト卿の一件もかなり驚きましたが。そういえば君はヴァリエスト卿の養子となった子と同じ孤児院の出だったか?」


「リリーですね。はい。年は同い年ですが僕の姉のような存在です。」


「これも運命なのか。」

王が目を細めて僕を見る。


「リリーになにかあったんですが?」

僕は嫌な予感がし思わず立場も忘れて聞いてしまう。


「いや、悪いことではないよ。ただ彼女は早々に回復魔法の使い手として覚醒した。」

なんとリリーは早々に光の魔法属性が回復魔法になったようだった。


「回復魔法使いというのはそんなにも特別な存在なのでしょうか?」

僕は余り聞いたことがない回復魔法使いについて尋ねる。


「ああ、かなり特別だ。国としての扱いは最重要人物になる。恐らく今後間違いなく王室にも関わってくるだろう。」

ランスロッテ様はこのことについて知っているようだ。


「うむ、まあ詳細は今度ランスロッテに教えてもらえば良い。さて、重い話はここまでだ。ニクスよ、君はなかなか面白い料理を作ると聞いた。早速だが今日の夕にそれを出してはくれぬか?」

王の声色が明らかに変る。


「本当に召し上がるつもりですか!?」

セディウス宰相が驚いていることからも本気だとは思っていなかったようだ。


「ああ、だが当然安全面は配慮しろというのだろう?ニクスは字は書けるかね?」


「はい。手紙を書ける程度には。」


「十分だ。これからそのレシピを書いてもらいそれを料理長に再現させる。それならばセディウス宰相も文句はあるまい。」


「そ、それならば・・・。」


「いや駄目だな。」

なんとそれに真っ向から対立したのはランスロッテ様だった。


「ラ、ランスロッテ様!?」


「まさか一国の王が、料理のレシピを無償で譲れとは言うまいな?価値はわかっているのだろう?」

なんとランスロッテ様はレシピに対する対価を要求していた。


「ああ、それは勿論わかっているさ。本当に君が言うような素晴らしい品だった場合、相応の褒美を用意しよう。」

なんと本当に褒美を貰えるらしい。


「で、でしたら!お願いがあります!」

どうせ貰えるというのならば少し図太く行こう!


「申してみろ。」


「今回王に食べてもらおうと思っていた料理は僕が村の教会で育った際に偶然作ってしまったものを更に試行錯誤を重ね今の形にまでしました。僕一人で作り上げたものではないので、どうか褒美をくれるというのでしたらば、教会や村に益となるような褒美をお願い致します。」

僕はそう言い頭を下げる。


「君自身は何も望まぬというのか?」


「はい。僕の幸せのありかはあの教会にあります。」


「そうか。わかった。では今回の料理についての褒美は村と教会に益があるものとしよう。良いな?」


「ありがとうございます!」

そうして今日の昼食作りが本格的に決まる。


よーし!頑張るぞー!!

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