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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第54話】呼吸

この日の夕飯は早速ハースリンと共に作ることになった。

いつもは完全にランスロッテ様の嗜好に合わせて味を決めているということだったが、折角ということでランスロッテ様から僕達が村で食べていたような料理も食べてみたいとリクエストがあった。

そのため今日はハースリンが作るものと僕が作るものを2種類に分け作ることとなった。

厨房に入るなり僕は驚く。


「うわー。すごい大きな台所だー!それに調味料もこんなにあるんだ!!」

見たこともない様な調味料も多々有り、というか殆どが見たことがないものであった。


「これらはランスロッテ様が旅に出られた際に気に入った料理があれば、その思い出としてその料理に使われている調味料などをおみやげに持ってきてくれているんですよ。」


「なるほどー。あれ、これって・・・?胡椒じゃないか!!」

金と同等の価値で取引をされている胡椒であるが結構な量が置いてあることに驚いた。


「あら?貧しい村の出身とお聞きしておりましたがニクス様よくご存知ですね。たしかにそれは胡椒ですね。ランスロッテ様もお気に入りなんですよ。」


「そうなんだ。実は物自体は本で知っていたんだけど、先日ヴァリエスト公爵様宅でお世話になっている時実際に口にすることが有ってね。本当に美味しいし幅が広い調味料だよね。」

僕はヴァリエスト公爵家で出されていた料理を思い出す。

本当に今まで食べたことがないような豪勢な料理ばかりだった。


「そうだったんですね。胡椒はまだストックに余裕がありますから、もしお使いになるんでしたらご自由にお使い下さい。その方がランスロッテ様もお喜びになられるでしょう。」


「やったー!!何を作ろうかなあ。」


「ふふふ。」

ハースリンが急に笑顔になったのでどうかしたのか聞いてみた。


「何かあったの?ハースリン。」


「いえ、まさかこうして家族と呼べる存在の方と一緒にお料理できるとは少し前まで想像もしていなかったもので。単純に嬉しいんですよ。」

確かにこの家は立派ではあるが、ヴァリエスト公爵家の様に多くの使用人などは居らず、いるのはランスロッテ様とハースリンだけだ。

ランスロッテ様の性格的に、今までずっとこういう形だったんだろう。


「そっか。僕も誰かと一緒に作る楽しさは一杯知っているから、これからは僕がハースリンにその楽しさを教えてあげられるね。」

そう言い笑顔満面で返答した。


「ええ。」

そしてハースリンと会話を楽しみながら料理を作った。


「うわあ、今日はいつにもまして豪華だねえ。これはハースリンとニクス君が?」


「頑張りました!」


「非常に幸せな経験をさせていただきました。」

ハースリンはご満悦だった。


「それは良かった。で、ハースリンが作ったのは何となく分かるがニクス君が作ったのは?」


「はい!胡椒を使ってもいいということだったので、早速使わせて頂き潰した芋をパンクズで包んだ揚げ物と、味付けしたソースを新鮮なサラダに掛けてみました。」

芋料理は万年金欠気味だった教会では定番の料理だった。

たまたま一度失敗をして、別の料理に使うはずだった熱した油につぶして丸めた芋を投入してしまったのが始まりだった。

それが、意外と美味しいかったということで、シスターやリリーとともに共同で研究し最終的に完成したのが今日出したものだった。

今回はそれに胡椒を入れてある。

サラダのソースは主にハースリンが作った肉料理で出た肉汁を貰い、それに酢と塩、胡椒で味付けをして整えたソースだった。


「では、冷めない内に頂こうか。」

ランスロッテ様の掛け声とともに賑やかな夕食が開かれる。


「この芋の揚げたもの、良いねえ。これはおいしい。胡椒もよく効いてる。これはレストランで出せるレベルじゃないか?」

ランスロッテ様が目を見開いて美味しそうに食べていた。

今日使用した油も非常にきれいなものだったので雑味もなく綺麗に揚げることが出来たし、やはり胡椒がよく合っていた。


「うま!うま!」

レビンも一心不乱に食べている。


「本当にこれは美味しいですわね。私も研究したいです。」

そう言ってハースリンも興味深げに食べていた。


「今度一緒にアレンジしよう!」


「ええ。」


「それにしてもサラダか。実はちょっと生野菜苦手だったり。」

そんなことをランスロッテ様が言う。


「新鮮な生野菜は贅沢品ですよ!それにこのソースはかなりランスロッテ様はお好みの味だと自負しています!」

僕がそう、力強く説得すると渋々ランスロッテ様が食べてくれる。


「・・・。こ、これ!野菜ってこんなに美味しかったっけ!?」

そう言いながらむしゃむしゃとサラダを食べてくれた。


「おいしいですよね、このソース。実はアッシェ先生も野菜嫌いだったんですが、このソースを作って以来むしゃむしゃ食べるようになったんですよ。」

そんなことを思い出しながら僕も食べる。


「生野菜用ソース、これも私にはなかった発想です。本当にニクス様の料理に対する知識は大したものです。」

ハースリンもそんなことを言いながら食べていた。


「「「「ごちそうさまでした。」」」」


楽しい夕食も終わり片付けもハースリンと二人でやったのでササッと終わる。


翌日、ランスロッテ様朝一番で王への手紙を出してくるということで出かけていく。

こういう時通常であれば、貴族家に使える使用人などの使いの者が出しに行くようだったが、この家にはその様な人物はいなかったのでいつもランスロッテ様本人が出向いているとのこと。


そういう訳で今日は朝からレビンと共に屋敷の庭で何時間も掛けていつものストレッチをした後、昨日訪れた特別演習場までの間をぐるぐる行ったり来たりと昼頃まで走り込んでいた。


途中何度か昨日僕達のことを見ていた冒険者たちだろうとは思うが、声を掛けてくれる。

「おはよう坊主!朝から精が出るな!」


「おはようございます!依頼頑張ってくださいね!」

僕はそう返答すると「ありがとうよ!お前も頑張ってな!」と返してくれた。


僕は最近、こういう小さな挨拶などの人の繋がりが非常に嬉しく感じていた。

それは僕を『魔人ニクス』としてではなく、『一人の少年ニクス』として見てくれているからだと思っていたからだった。


お昼頃になるとランスロッテ様も屋敷に戻ってきていた。


「あ、お戻りになられていたんですね。お帰りなさい。」


「ああ、ニクス君。ただいま。昼食時話があるんだがいいかな?」

そんなことを言われたので二つ返事で了承する。


そして昼食時に少し心配になる話をされた。

「もしかしたら、王への直接的な報告についてだが君にも王に会って貰う必要性があるかもしれない。」


「え!?僕が王様にですか!?」

思わず口から食べ物を吹き出しそうになる。


「ああ。今日は直接は会っていないのだが、やはり王の側近曰く君の存在がひどく気になっているらしい。」

若干不安げな表情を浮かべるランスロッテ様だがそれには納得できた。


「それは仕方ないかもしれませんね。なにせ僕は普通ではないですから。」

僕は当然のことだと思い返答する。


「すまないね。君には嫌な役をさせる。」

本当に申し訳なさそうに言うランスロッテ様だった。


「いえ、これも僕の責任だと思うので。」


「本当に君は聡い子だよ。まあ、この話はここまでにしよう。午後はどうするつもりだい?」


「可能なら打ち合い稽古に付き合ってほしいのですが可能ですか?」

僕はアッシェ先生と行っていたことを説明する。


「なるほど。一本取られた時点で即終了の打ち合い稽古か。アッシェさんはなかなか目の付け所が良いね。いいだろう。今後は私が稽古をつけてあげよう。」


庭に出て、早速打ち合い稽古が開始されることになるがいつもと違う点が会った。


「勿論使う武器は真剣だ。良いね?」

そう言いながらランスロッテ様は腰に差していた自身の細剣を抜く。


「ふー・・・。」

僕はゆっくりと深呼吸しハンドブレイカーを抜く。


「よろしくお願いします。」


打ち合い稽古が開始となった瞬間だった。

しっかりと見ていたはず、油断もしていなかったはずなのに一閃目で僕の眼の前には寸止されたランスロッテ様の剣先が間近で光っていた。


「これで一本かな?」


「はっ・・・、はっ・・・。」

僕は腰が抜けその場にストンと地面に座り込んでしまう。


昨日の打ち合いは全然ランスロッテ様は本気ではなかった・・・。

元の姿となった僕でも全く刃が立たなかっただろうと今になって思い知ることになる。


これが白金級『蒼雷』の実力。


「皆よく勘違いしてるんだよね。」

そういい、僕に対しランスロッテ様が手を伸ばして起こしてくれる。


「え?」


「私はね、『王宮魔法使い』としての称号も持っているから本職は魔法使いなのではないかと。」


「違うんですか・・・?」


「ああ。私は本来の戦闘スタイルは細剣士(さいけんし)さ。その動きに対し身体強化や火力強化目的で後々身につけたのが『蒼雷』と呼ばれるようになった雷属性の魔法だ。」


「そうだったんですね。というか人間って魔法無しでもあんなに早く動けるものなんですね。」

ただただ圧巻だった。


「ああ、それは『呼吸法』のお陰だな。」


「『呼吸法』ですか?」

僕は聞いたことがない単語に頭に?がつく。


「ああ。では今日はこの『呼吸法』について勉強しようか。」


「はい!お願いします!。」


「まずは前提知識からだ。生物と言われるものは基本的に呼吸を行う。これは当然わかるよね。」


「はい。当然息を止めれば死んじゃいますね。」


「ふふ。そうだね。そんな当たり前の呼吸だが、呼吸のリズムや長さを調整することにより、身体に対し過負荷を掛け、潜在能力を引き出す方法があるんだよ。それが『呼吸法』だ。君も今の打ち合い前に深呼吸をしただろう?あれも『呼吸法』の一つだ。」


言われてみれば僕はいつも大事な局面では深呼吸を無意識的に行っていた。

「なるほど。理解できます。」


「うん。じゃあ、今後は訓練の中にこの『呼吸法』を取り入れることにしよう。」

そうして今後は午後の訓練に今までアッシェ先生と行っていた一本先取の打ち合い稽古の後、今までの訓練に加え、呼吸法の訓練が加わることになった。


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