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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第50話】クラディス王都

「さあ、着いたよ。お疲れ様でしただね、ニクス君。」

あっという間の旅路で僕は目が回るような感覚がおかしくなっている気がした。


「は、はい・・・。ありがとうございました。マーリンさん。」


「あっはっは。慣れないとそうなるよねえ。ニクス君なら大丈夫かと思ったけどやっぱ駄目かあ。」

どうやら誰でも同じ体験をするとこの様な感覚になるらしい。


「あれ?レビン?」


「お、おえっ!」

吐いていた。


「レビンはもっと駄目だったみたいだねえ。失敗失敗。ちなみに王都までだけど・・・。言わないでおこう。その方が楽しそうだ!」

マーリンさんは何か知っているようだがあえて言わないらしい。

こういう意味深な隠し事をするのは先生の元相棒らしいと思った。


「おかえり、ニクス君。マーリンもお疲れ様。」

そう言って出迎えてくれたのはランスロッテ様だった。


「今戻りました。」


「ただいまー。あ、ランスロッテ。ニクス君はもう大丈夫だよ。」

ん?なにが大丈夫なんだろうか。


「そうか、なら安心して明日連れていけるな。ありがとうマーリン。」


「良いって良いってー。僕も気になってたことだしねえ。そいじゃあ、今日は僕はこれから軍務があるので失礼するよー。明日は顔出すね。何時頃出立予定?」


「そうだな。朝食の前のほうが良いだろう。」

なにやら不穏な会話が聞こえる気がした。


「わかった。じゃあまたその頃に。ニクス君また明日ねー。」

そう言いながらマーリンさんは手を振りながら去っていった。


「さて、ニクス君、レビン。君たちはこちらに。マクシミリアンが待っている。」


「公爵様が!?」


「お、俺もいくのか・・・。」

レビンの顔色が悪かったが強制参加らしいので連れて行く。


通された場所は食堂だった。

今までは食事は泊まっていた個室で用意してもらっていたのでこちらの部屋を案内されたのは初めてだった。


「おかえり、ニクス君。」

そう言いながら出迎えてくれたのは公爵様だった。

僕は跪き頭を下げる。


「公爵様。今戻りました。」


「そうかしこまらんでくれ。今日は友人とその弟子となるものとの食事会だ。気楽にやろうじゃないか。」

なんと公爵様と一緒に食事を摂るらしい。

テーブルマナーは正直わかんないが大丈夫だろうか。


「ああ、テーブルマナーは大丈夫だよニクス君。」

心が読まれていたようにランスロッテ様から言われる。


「そうだねえ。心を読んでるわけではないんだが、私の魔法の関係かな。」


「魔法でそんな事ができるですね。」

僕は素直な感想を述べていると公爵様が呆れた様子で言う。


「安心した前。魔法を使って頭の考えを読むのはランスロッテ位だ。私でもわからん。それよりもだ。早速食事にしよう。勿論テーブルマナーは気にしなくてもらって良い。レビンは別で用意させる。」


公爵様に誘われ食事会となる。

それはそれは非常に豪華なもので今まで食べてきた度の食事よりも味が豊かで美味しかった。

今後のレシピの食べに少しでも覚えておかねば。


「さて、ニクス君。先程マーリンと村に行き、心の整理もできたと聞いた。もう大丈夫かね?」

早速本題だと言わんばかりに公爵様が確認をしてきた。


「お心遣いに感謝致します。お陰で今後のことに対し、心置きなく取り組めそうです。」


「それは良かった。ランスロッテの修行は大変厳しいものになるだろう。だが、現状でのあの魔人、ノクタリオスへの対処方法がランスロッテに君を預け、徹底的に鍛え上げ、まずは5年後に備えるという方法しかないのだ。君にばかり背負わせる形になることを大変申し訳なく思う。」

そう言い、なんと公爵様は頭を下げた。


「そ、そんな!頭を上げて下さい公爵様。元はと言えばノクタリオスは僕が原因の様なもの。でしたらそれの後始末をするのも僕の大切な責務ですので。」


「本当に君は10才の子供らしくないねえ。まあ、その方が鍛えがいがあって楽しいというものだ。」

ランスロッテは楽しそうに笑っている。


「そういえば、ランスロッテ様は王宮魔法使いなんですよね?ということは主に鍛えるのは魔法についてですか?」

僕はそんなことを思った。


「いや?全般的に教えることになると思うよ。」


「へ?」


僕が頭に?を浮かべていると公爵様が教えてくれる。

「本当に君はいつも言葉が足らないな、ランスロッテ。ランスロッテはこう見えて【蒼き災厄】とまで言われたブルードラゴンを単騎で倒したドラゴンスレイヤーなんだよ。元はと言えばただの冒険者だったんだ。」


僕は公爵様の言葉に思わず口から吹き出しそうになった。

「ド、ドラゴンスレイヤーですか?伝説上の存在かと思っていました。」


「確かにドラゴンスレイヤーの称号を持つものは非常に稀有だ。現在確認されているドラゴンスレイヤーの称号を持つものは二人。一人はランスロッテだ。そしてもう一人は獣人の国であるアルヴェリオン共和国の国主だ。」

なんとたった二人しか持っていないような称号を持っている人が今後師匠となるらしい。

これは予想していなかったことだ。


「まあ、そういうわけだ。ニクス君にも機会があればドラゴンの1匹や2匹倒してもらうつもりだから頑張ってね。」

淡々と行っているランスロッテ様だったが、どうやら本気らしい。


「なにしろノクタリオスはドラゴン100匹よりも恐ろしい存在だからね。」

あまりの衝撃に沈黙が流れる。


あまりに衝撃的なことだった故、その後はあまり何を話したのか覚えていなかった。

そうか、ノクタリオスはそんなにもとてつもない存在だったのか。

やりきれるだろうか・・・、そんな気持ちが溢れてくる。


「馬鹿だなあお前は。やり切るんだよ。それにお前にはこの俺様が付いてるだろう。」


「レビン・・・。そうだね。ここで弱気になるのは僕らしくない。ごめん。」


「良いってことよ、相棒。」


そう言われ僕は安心して床についた。


翌朝は早かった。

身支度をするとすぐにマーリンさんとランスロッテ様が部屋に来る。

「準備はできたかい?」


「はい。ランスロッテ様。」


「では庭に行こう。」


「庭?」

僕の頭に?が浮かぶもそれを見ているマーリンさんは楽しそうだ。

何やら嫌な予感しかしない。


早速庭に向かうと、公爵様もそこにいた。

どうやら見送りをしてくれるようだ。


「身体には十分気をつけてな。ニクス君。」


「本当にお世話になりました公爵様。リリー様にもお礼をお伝え下さい。」


「それはもし合う機会があれば君から伝えると良い。なにせアカデミーは王都にあるのだからな。」


「わかりました。もし合う機会があれば直接伝えることにします。」


「そうしてやってくれ、あれは確かに私の娘となったが、やはり君の姉弟なんだよ。」

その言葉を聞き、僕は何も言わずにお辞儀をした。


「ニクス君。結局僕から何も教えることは出来なかったが、代わりに僕の親友が君に様々なことを教えてくれる。頑張るんだよ。」

マーリンさんは若干悔しそうに見えたがそれでも笑顔で見送ってくれる。


「マーリンさんからは数え切れないほどのものを頂きました。本当に感謝しています。ありがとうございました。」


「うん、いってらっしゃい。レビン、あまりイタズラしてると僕が直接行くからな?」


「それだけは簡便!!」

レビンは相当マーリンさんに絞られた様子だった。


「さあ、行こうか。ニクス君、レビン。」

そう言ってランスロッテさんは足元に転がる鞄らしき物をガンッ!と強めに蹴る。

するとその鞄がガパッ!と勢いよく開きなんと不思議な空間が広がっていた。


「これは空間転移(ワープポータル)という魔術具で行き先は王都の私の家だ。さ、行くぞ。」


そう言われ僕とレビンはランスロッテさんにガシっと掴まれ強制的にその空間転移(ワープポータル)に放り込まれた。


な、なんだこれ!

空間がぐにゃぐにゃだ!!


そう思うのも一瞬、次の瞬間には空間転移(ワープポータル)よりポイッと投げ出された。

あまりの展開に僕は目を回し、案の定レビンは吐いていた。


すぐにランスロッテ様も続いて出てくる。

「さ、着いたよ。クラディス王都の私の家。アーテル男爵家だ。」


「ここがらランスロッテ様のお屋敷ですか・・・。」

そう言うと見たこともないかなり小さく半透明で羽が生えた見たこともない人形の何かが飛んできた。


「おかえりなさいませ。御主人様。そちらの方は?」


「ただいま、ハースリン。この一人と一匹は今日から家に住むことになる私の弟子のニクスとレビンだ。ニクス、レビン。この子は家守妖精という珍しい妖精で名前をハースリンという。お互いよろしく頼むね。」

紹介を受けたハースリンが深々とお辞儀をしている。


「ニクス様とレビン様ですね。ハースリンと申します。この家のことでしたら何でもお申し付け下さい。」


「あ、ご丁寧にありがとうございます。ニクスとこっちがレビンです。すいません、レビンが早速庭を汚してしまって・・・。」


「お気になさらないで下さい。空間転移(ワープポータル)で御主人様が客人をお連れになる時は必ず誰か同じ事になってますので。」

やっぱしそんな強烈なものだったんだと思った。


「ニクス君はすごいねえ。あれでも吐かなかったなんて。」


「いえ、朝食を食べてたら駄目だったかもしれません・・・。というか朝食を食べる前に出発したのはこれがあったからなんですね。」

朝食を食べる前の出発と言われ、更にマーリンさんが笑っていた理由がよくわかった。


「お腹すいたなあ。久しぶりにハースリンのご飯食べたいね。」


そういってランスロッテ様はハースリンさんに次々と仕事を押し付けているが、ハースリンさんは淡々と「畏まりました。すぐにご用意します。」とさっさとレビンの吐瀉物を掃除し終え朝食の準備をしに家に行ってしまった。


「あの子働き者だろう?」


「そのですね。あ、僕も手伝います。」


「ああ、それは良いよ。初日だしハースリンもきっと嫌がるだろう。それより君とレビンの部屋を案内させよう。荷物の片付けが終わったら食事して早速今日の修行と行こうか。」


朝食後の修行と言われ、先生の家での初日の地獄の行軍を思い出す。

少し控えめな食事にしとこうと思った。


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