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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第二章

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【第48話】ランスロッテの結論【番外編】

「以上が私、マクシミリアン・ド・ヴァリエストからのご報告となります。」


そう言って、マクシミリアン公爵が今回の顛末を主であるグラディア・オルド王国国王に報告しているのを私は横で聞きながら今後のことを考えていた。


「その様な事態になっていたとは・・・。」

王自身が信頼している人間で3本指に入るほどの人物であるマクシミリアン公爵からの報告であればそれは紛うことなき真実であり、この様な今まで起こりもしなかった異常な事態に対し真剣に考慮すべき案件だということが伝わったことだろう。


「そういえば、ランスロッテ男爵もその魔人を目視しているとの報を受けている。そなたから見た魔人はどの様な印象であった?」

国王が魔人ノクタリウスを間近で見た人間のうちの一人である私に意見を聞かれる。

私は素直に感じたままを意見することにした。


「は。では僭越ながら率直に申し上げます。私から見た印象ですが、そうですね。私が心から敬愛するセレヴァン国王から魔人ノクタリオスの討伐依頼があった際は・・・、残りの人生を楽しむために山にでも引きこもりその審判の日を待つことにします。」


「なに!?」

「不敬だぞ!!」

等など、この場に居たこの国の重鎮たちが私に非難を浴びせる。

そこに私は付け加える。


「過去、私はセレヴァン国王よりブルードラゴンの討伐を依頼され、その任を完遂しこの世でも数少ないドラゴンスレイヤーとなり大変光栄ながらこの国の男爵の地位を得ることが出来ました。」

私は当時は流れ者の冒険者とし活動していたがこの国に寄った際、偶然にもブルードラゴンが気まぐれなのだろうか、オルドガルド城塞都市を襲っておりその緊急討伐依頼が張り出された。


自分の腕を試したかった私はすぐにその依頼を受注し、最終的に私一人で、その【蒼き災厄】とまで呼ばれていたブルードラゴンの討伐に成功し、その功績から数少ないドラゴンスレイヤーの称号を得るとともに、この国、グラディア・オルド王国の男爵位を得ることとなり、現在では王宮魔法使いとして活動をしている。


私は淡々と語る。

「私は例えそのブルードラゴンが今度は10頭現れ、そしてそれを以前のようにセレヴァン国王に再度討伐を依頼されれば喜んでこの命、ブルードラゴン討伐のために差し出す覚悟がございます。ですが今回の魔人ノクタリオスは別です。例えセレヴァン国王の命であったとしても私は戦うことは望みません。それだけ次元の違う存在だとご認識いただければ幸いです。」


「『蒼雷』と呼ばれるそなたの目から見てもその様なものであったか。」


「は・・・。あれは紛うことなき、世界の全てを破壊するものです。」

私が述べていることに嘘偽りはない。

あの様な空間魔法を使用し、そしてはるか遠方に居ても感じられたほどの暗きマナ。

あれは長き時を生きてきたハイエルフであり、かつ魔法を愛し、魔法に愛された私ですらそう思わずを得ないほどの存在だった。

すなわち、【絶望】を形にしたかのような存在だった。


少なくとも私も3本の指には入らないがセレヴァン国王からの信は厚い。

「そうか、何か・・・、なにか解決策は思い浮かばないかね。」


それを聞いた周りの重鎮たちもさっきの威勢の良さはどこへやら。

一瞬にして沈黙が謁見室を包み込む。


そう、私はこの件の解決策をずっと考えていた。

そして自身の中で答えは出ていた。


「わが親愛なるセレヴァン国王よ。私がニクスの後見人となることを認めてもらい、私にニクスを預けてはくれませんか?」

そう、私が今度は我が親友の元相棒だった『灰被り』とまで言われた人物の思いを引き次、私が師となりニクスという『光』を育てようと考えていた。


だが当然だが、それを聞いていた重鎮達からは批判が上がる。


「なりません!なりませんぞ!あれは魔人の片割れだと言うではないですか!?」

「そうです!もし万が一が起きればどう責任を取るつもりですか!」

「所詮は人ならざるもの、どこに信用ができましょうか!」


等など言いたい放題であった。

だが流石はそこは我が主君であった。


ガン!


王笏を床に叩きつけ、有象無象の意見を一蹴する。


「我は今、アーテル男爵に意見を求めた。他に意見を求めたわけではない。わかるな?」

まさに王の一声で場で再び静寂に包まれる。


「一つだけ確認しよう。お主はまだ完全に諦めたわけではないのだな?」


「は。」


「良かろう。ではこの一件、ランスロッテ・アーテル男爵に一任する。関係各国へは私より報を入れる。必要なことは私に直接申すように。良いな?」


「ありがたき御言葉。感謝申し上げます。」

私はセレヴァン国王に跪き了承を得た。


グラン=ヴァリエルへの帰り道、私はマクシミリアン公爵に相談を受け馬車へと同乗する。

通常二人の男女が一台の馬車に乗り込むのはマナー的に問題があるが、事態が事態だけにそうは言ってられなかった。


「あの様なことを考えていたならば先に知らせてくれておいても良かったのではないか?ランスロッテよ。」


「残念だがそれは無理だ。なんせ私があの結論に至ったのはマクシミリアンと王が話をしている時だったからな。」

私は淡々と答える。


「全く。お前が考えることはいつも奇抜すぎて肝が冷える。」

マクシミリアンが「はぁ。」とため息を付いていた。


「伊達に君より長く生きては居ないさ。」


「それで、今後はどうする予定だ。」


「まずはニクスの身体が癒えるまで、そなたの屋敷で面倒を見てもらっていいか?」


「何故?」


「私は男爵ではあるが、家らしい家がないのでね。」


「あるではないか。王から褒美として賜った豪華な家が。」

マクシミリアンが頭に?を浮かべながら聞く。


「ああ、あの家にはもう数年は寄っていない。」


「お前・・・、いつか首を切り落とされるぞ。」

マクシミリアンが呆れていた。


「ふふ。それは相手次第だな。」

私の共に首を落とされるならまだ許すが、そうでもない輩であれば逆に私が焼き殺すだろう。


「それを本当にお前が起こすのではないかと危惧するよ。」


「ご心配痛みいる。」


「・・・本当のところは?」

マクシミリアンが真剣な表情で私を見る。


「ニクスに準備をさせたい。心と体の治療は必須だ。治癒した後私とニクスでしばらく王都に滞在する。」


「お前今、数年家を使っていなかったと言わなかったか?」


「ああ、だが優秀な助手が家を綺麗にしてくれているのでね。」


「王都に滞在中はどうするつもりだ?」


「勿論修行させるさ。勉強もさせる。なんせここに最高の教師がいるのだからな。」


「ハイエルフのとんでもない時間の知識を10才の少年に叩き込むのか?お前とんでもないな。」


「とんでもないやつだというのは言われ慣れている。それにそうでもしないとあいつには太刀打ちできないだろう。なんせあれは私よりも遥かに長生きなんだからな。」


「・・・。その後は?」


「状況次第だが国を出る。何よりも必要なのは経験だ。勿論勝手に出るつもりはないさ。私も男爵という地位を得てしまったのでね。我が主に相談後になるがな。」


「そんなことだろうとは予想はしていた。」


「流石私の数少ない友人の一人だな。」


「わかった。頼んだぞ。この国、いや世界の命運はお前たちに掛かっていると言っても過言ではない。」


「理解してるさ。」


その後は他愛のない話し合いをしながらグラン=ヴァリエルへと向かった。


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