【第34話】2ヶ月後
日常が戻り、先生との組手も本格的に始動はしたものの当然のように数秒で投げ飛ばされるか一撃を食らって終了となる日々が続く。
「あいててて・・・。」
今日もこの先生お手製の優しさと蜂蜜入りの軟膏塗り薬と、新たに加わった傷薬を丁寧に塗り込む日々だった。
夕食を終えた先生が食器を片付けながら僕に話しかける。
「そういえば明日と明後日の予定を伝えてなかったな。」
今まで毎週末の2日は教会で過ごしていたのでなにげに初めて、この先生の家で週末を過ごすこととなる。
「基本的に訓練の中でも休息をするのは非常に有効的な相乗効果を生む。今までは教会に帰ることで無意識的にその効果を得ていたわけだが、明日から暫くはそうは行かないからな。」
なるほど、知らない内にそういう休息的効果も得られていたわけか。
「そうだな、午前中は変わらずストレッチと走り込みをするようにしよう。」
「ストレッチでも回復効果はありますものね。」
うんうんと頷きながら答えると先生が「わかるようになったじゃねえか」とにっと笑顔を見せる。
「午後はどうするんですか?」
そう聞くと意外な答えが待っていた。
「午後は主に知識を身につけることに集中しよう。午後の半分は俺から薬学や罠、狩りの仕方などの知識を教える。」
その言葉に素直に感心した。
「うわぁ!良いんですか!?やったーーー!」
そう言いながらレビンを抱きかかえながらくるくると回る。
「なぁーお(目が回る、やめろ)」
レビンがそう言い、僕の顔面に猫パンチを放ってきた。
当然両手が塞がっている僕の顔面に猫パンチが炸裂する。
「痛い!」
「なぁーお(ざまあみろ)」
「はあ、何やってんだお前ら?」と先生はぼやきながら説明を続ける。
「午後の半分、後半部分はニクスは当然だが、レビン、お前も参加だ。」
先生は珍しくレビンを名指しする。
「なぁーお?(俺も?)」
「レビンについてはわからないことが多い。現在分かっているのは何故かニクスと意思疎通が出来るということと、雷属性の魔法適性があるってことだけだ。」
「言われてみればそれくらいですね。」
僕は「うーん・・・」と言いながら考えてみるがやはりレビンについては謎が多い。
それを見た先生は静かにこう言い放つ。
「俺はニクスの成長にレビン、お前が欠かせない存在だと考えている。恐らくお前も一緒に経験を積み、時間を共有し、知識を高めることでニクスが更に成長するための鍵だと思っている。」
レビンは黙ったまま聞いている。
「なので今後はレビンもニクスとともに研鑽を励むように。」
「はい!」
「なぁーお(わかった。)」
そういったやり取りがあり今後の一週間のスケジュールが決まった。
翌日の最初の週末は予定通り先生からまずはいつも使っている優しさと蜂蜜入りの軟膏塗り薬の作り方を教えてもらう。
普段何気なくかなり大量に塗り込んでいたそれは薄っすらとは思っていたがとんでもない高級品の塊だということがわかり腰が抜けそうになる。
「今後この程度で腰抜かして使うのをケチったら、おまえの身体なんてあっという間にボロボロになるぞ。今まで通り使っていけ。」
その様に言われたので、今後は頭を空っぽにして考えないようにして塗るようにした。
レビンとはまず最初に近くの川辺に行き、以前の戦闘で目潰しとしてかなり消費してしまった黒砂の補充をしに採集に出かけた。
先生の小屋は狩人の小屋であり、剥ぎ取った皮や肉、脂を処理するために水は必須なので比較的近い所に川辺がある。
特に作業場付近は入念に先生が獣や魔獣が近寄らないようにと対策をしているようなので、僕とレビンだけで作業していても問題ないとのことだった。
先生はその間に村へ荷物を運び、夕飯前には返ってくるという。
確かに川辺の作業場付近はあまり獣等の雰囲気が感じられない。
そこでものは試しとじっと目を凝らす。
するとやはり視えてくる、森や川から発生している自然的なマナの色とは別に、明らかに人為的でその場には不自然なマナの色。
主に赤を主体としたマナが視えてくる。
「なるほど、あれが先生の行っていた対策の一環なんだなあ。」
魔法って本当に便利なんだなあと思うと同時に、僕でも使えるような罠やそれに類するような知識をしっかり身に着けねばと心に刻み込む。
すると「なぁーあ(重いんだが。)」とレビンの声が聞こえ、レビンの方を向くといつも以上に黒砂が取れたようでざらざらの塊になっていた。
「あはは。」と笑いながらしっかりと黒砂を回収しながら体に残っている砂を取るために、リリーから預かったブラシでしっかりとブラッシングしてあげる。
夕飯の時に先生に川辺の作業場付近で見かけたマナのことを離したらひどく驚いていた。
「な!?おまえ!あれを見つけたってのか・・・!?」
「ええ、まあ。若干分かりづらかったですが?」
そう言いながら頭に?を浮かべていると先生が唖然としている。
「お前、あれは一流の斥候でもなかなか見つけられない程度の代物だぞ・・・。それをついでに見つけましたみたいに・・・。」
その言葉に逆に僕が驚いた。
どうやら相当、便利な能力なようだ。
なんでブランのままなのにこんな能力だけが身につけられたんだか不思議でならない。
そう、ブランなのに僕には不思議なことが多すぎた。
『死の匂い』、『マナの視覚化』、そして『レビン』。
今後これらについて研鑽を重ねることで自分の大きな武器に防具にもなるかもしれないと考えリビンを抱きかかえる。
「頑張ろうな、レビン!」
飛んでくる猫パンチ。何故?
そして、時間はあっという間に過ぎ去り、シスターと約束をしていた2ヶ月が経過した。
僕は胸を張りながらシスターに挨拶をする。
「お久しぶりです、シスター。」
僕の顔を見たシスターはじっと僕の顔を見た後、こう答えた。
「おかえりなさい、ニクス。良い顔になりましたね。考えはまとまりましたか?」
「はい!」
元気に答え、シスターとの約束は果たされた。




