表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第一章~少年編~(全47話)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/73

【第29話】採集と雷属性の実験

帰路につき、行きと帰りのように乗合馬車で約1日と半日を掛けて無事、教会へと帰宅するとシスターがまだか、まだか、といった具合で待ちわびている様子であった。


「ただいま帰りました!シスター!」


リリーがそう言いながら駆けていき、シスターと抱き合っている。


「戻りました、シスター。」


僕もリリーの様にシスターに挨拶をすると、「何も問題は起こしていないでしょうね!」と早々に怒られた。何もしてないのに?


「今回は特に問題はありませんでしたよ。」


先生がフォローしてくれたことでシスターの気は収まったようだ。


「今日はニクスはどうするんです?泊まっていきますか?」と声をかけられ「はい!」と答えそうになるが、先生が間髪入れずに「最近サボリ気味なので連れて帰ります。」と言われ強制的に先生の家に帰宅となる。


「じゃあ、ニクスの分まで私がお土産話を皆にしておくね!」


リリーはそう言いながら非常に嬉しそうな顔をして教会に入って行く。


「ぐぅ!僕もお話したかったです!」


「また週末になればいつものように帰ってこれるんだ。それよりもさっきも言ったがこれから走りで帰り、そのまま訓練するぞ。」


鬼!鬼がここにいます!!


「なぁーあ(鬼討伐頑張れな。)」


「薄情者!」


そう言いながら荷物を背負い直し、先生の家までランニングが始まる。


帰ってから数日は今までの遅れを取り戻すかのごとく、いつも以上に厳しいシゴキが待っていた。


「厳しいと思うのは今まで訓練から遠ざかってたからだ。1日やらないだけで取り戻すのに1週間は掛かると思え。」


「なら一ヶ月以上は掛かるじゃないですか!」


汗と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら答える。


「ほう・・・。ではこれは必要ないな。」


そう言いながら先生が懐から決して厚さはないが、明らかに本を取り出したのを見逃さなかった。


「本!?なんの本ですか!!それ!!見せてください!!」


「まだまだ、元気いっぱいだな。うむ、これなら一週間はいい餌になりそうだ。教会に帰る週末の前に渡してやる。」


明らかに今、餌って言ったよね!?


「ぐぬぬぬ・・・!」


こんなやり取りがあったが、やはり新しい本の魅力には勝てず、先生に良いように操られながらあっという間に週末を迎える。


「先生!約束ですよ!!」


先生に食って掛かると先生は「なんのことだ?」としらばっくれる。


「嘘だ、ほれ。これだ。実はな、帰り際モルガットの爺さんが興味があるなら渡してほしいと預かってきたんだ。」


「モルガットさんからの本!?じゃあエレキテルについてですか!?」


ありがたく受け取ると確かにその本には『エレキテル・入門書』と書いてあった。


やったー!新しい本だ!新しい知識だー!


本を掲げながらくるくると回っていると、「さっさと行くぞ」とお尻を叩かれた。


「痛いです!!」


教会についてからはリリーに新しいエレキテルの本を先生から貰ったことを伝え、一緒に勉強することになった。


「あらあら、新しい本ですか?私も興味がありますね。」


シスターも元教師の血が騒いだのか興味津々な様子だった。


「シスターにも貸してあげますね!面白いんですよ!」


「リリーから話だけは聞いています。興味がありますので後で貸してくださいね。」


そう言い、本を後で渡す約束をする。


どうやらリリーは先行してエレキテルについてのこと、自分で見て感じたこと等を色々と話をしていたようだ。


どうやら入門と書いてある割にかなり詳しく雷やエレキテルについてのことが書いてあり、様々な実験の内容やその成果なども書いてありとても入門とは思えないような内容であった。


「ドワーフ族の方はこれが入門になるなんてすごい頭がいいのね・・・。」


リリーは唖然としていたが、それは僕も同意見だった。


「それにしても雷属性ってエレキテルの知識を入れると色々使い道がありそうに思えるなあ」


エレキテル入門書をパラパラとめくりながら言う。


「私もただビリビリするだけかと思ってたわ。」


以前先生が『属性魔法』で重要なのは『応用』させることだと言っていたのを思い出した。


「ニクスは特に気になるのはあった?」


リリーから聞かれたので僕は「うーん・・・。」と考えながら答える。


「やっぱしこの『磁力』の事かなあ?そういうリリーは何か気になるものはあったの?」


「私はこの『振動』っていうのが見てみたいかな?」


リリーはそう言いながらページをパラパラとめくり、「これ」と指さしてくれた。


確かにそのページには、エレキテルと『振動』の実験のことが書いてある。


実験かー。


「そうだリリー、一緒に教わった黒砂の採集に行かない?」


幸いここには黒砂を取るために適した場所である川辺が近くにあった。


磁石はないがそれはレビンで代替するればいい。


「それ良いわね!早速シスターに言ってくる!」


そう言うと一目散にシスターに「実験がしたい!」とこちらにも聞こえるような声でシスターにお願いをしていた。


シスターがリリーに説得された様子で、「あらあら」と近づいてくる。


「実験ですか。懐かしい響きですね。私も興味があるのでその黒砂が取れたら私も参加させてください。」


そう言いながら了承を得、更に黒砂を収集するための革袋まで貸してくれた。


善は急げと翌日朝一番でまだ眠そうなレビンを連れ近くの川辺まで行く。


川の水は冷たいため、身体を濡らさないよう気をつけながらレビンに少しのマナを流してもらい、集まった砂を回収し、またマナを流してもらいという作業を繰り返す。


お昼になる頃には革袋いっぱいになるくらいの黒砂が手に入った。


レビンの身体には取り切れなかった黒砂が毛にくっついてしまっているので、教会に帰ったらリリーがレビンをブラッシングするのだという。


「僕にはブラッシングなんてさせないのに、リリーは良いのかよ?」


そう聞くとさも当然のようにレビンは答える。


「なぁーお(男からのブラッシングなんて鳥肌が立つね。)」


お前、猫だろう?


そんなことを言いながら村まで戻ると何やら物々しい雰囲気を感じた。


リリーと二人で顔を見合わせ「何かあったのかなあ?」と言いながら教会に戻った。


「ただいま帰りました、シスター。」


いつものように挨拶をするとそこにはシスターは少し考え事をしていたようであった。


「どうかしたんですか?何か物々しい雰囲気がしていましたが。」


そう聞くと「ああ、帰りましたか。」と少し安堵の顔を見せるシスター。


「どうやらここから比較的近い村が盗賊に襲われたようなのです。」


「なるほど、盗賊さわぎだったんですね。でも村を襲ったってことは冒険者ギルドか騎士団の管轄ですよね?」


盗賊はなどは決して珍しいものではなく窃盗は勿論、強盗、誘拐、傷害、そして殺人に至るまで比較的よく聞く話だったが、一個の集落を襲ったと言うならばそれは話が違っていた。


集落を集団で襲った『盗賊』等はそれだけで懸賞金が掛かり、主に冒険者や騎士団の討伐対象となるからだ。


あまりに盗賊側からしてもハイリスクな行為なため、集落などを襲うことは滅多にない。


「その様です。既に討伐依頼が発出され、冒険者達が派遣されたようですが、一応気をつけるようにと村長よりお達しがありましたので、対応を考えていたところです。」


「それなら一応、冒険者訓練の一環として夜通しの番の訓練も受けていますので僕が夜は寝ずの番で見張っていましょうか?」


先生からの激しくなったシゴキで身体が最初の内は悲鳴を上げていたが、本を餌につられた最近では再び以前のように普通にこなせるようになってきており、先生から引いた顔で見られることが増えていた。


「本来子どもに、特にニクスにお願いするべきものではないのでしょうが、今日から明日の夜だけの1日だけお願いしましょうか。」


「僕だとなにか不都合が?」


なにか引っかかる言い回しだったので思わず聞いてみると無言で「むにっ!」とほっぺをつねられる。


「理解してないようですね?」とシスターからの笑顔の圧が強まったので「理解しています!」と返す。


そうして僕とリリーと先生は夕飯の準備までの時間、集めた黒砂を使い気になっていた『磁力』や『振動』について初歩的な実験をする。


夕食中にシスターより先程の盗賊のことが注意点として話され、暫くの間は決して一人で行動しないようにと厳命が下る。


僕はと言うと、食後すぐに寝ずの番に備えいつも訓練していた短時間睡眠を使用し皆が床につく頃にシスターに起こしてもらう。


「では本当に気をつけるのですよ。何かあったら思いっきり大きな音を出して警報を鳴らしてくださいね。」


シスターは優しく僕の頭を撫でてくれる。久しぶりな感触な気がした。


「さて、じゃあ気合を入れて頑張りますか。」と教会の塔に登り毛布にくるまりながら上からの監視をすることにした。


相変わらず鮮明に夜になると闇のマナが鮮明に『視える』。


お陰でまるで昼のように物事が見通せる。


「本当に不思議だ。これで魔法が使えれば最高なのにな。」


そう言いながら教会から村を見通していた。


その夜は異変は特に起きず、朝を無事に迎えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ