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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第一章~少年編~(全47話)

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【第19話】8才の誕生節

「ニクス、お前そういえば誕生節は春だったよな。」


「はい、なので今度の誕生節の登録日はお休みをいただくことになります。」


『誕生節』と『登録制度』とは、「アプロディア」に住まう者たちが『初めて住人として認められる』という大事な行事である。

基本的に毎年の誕生のお祝いと年齢を重ねるということは春夏秋冬の各季節の真ん中に設定されている『誕生節』を過ごすことで初めて迎えることが出来る。


僕は春の誕生節の生まれであったので、正確に言えば1週間と少しの後にある春の誕生節を迎えることで初めて『8才の誕生節』となり正式に8才になる。つまり今は8才とは言っているがあくまで数え年で言っているだけである。


それに『8才の誕生節』は人生で最初の大きな意味を持っている。

それが『住民登録』であり、『住民登録が済んでいない8才未満の子どもは人数に数えられていない状態』なのであった。

なので、『住民登録』をすることで初めて、この世界の住人として受け入れられるということであった。

なぜ生まれた瞬間から人数として数えられていないかと言うと単純に8才まで生きて過ごせる可能性は5割以下という生存率が低い状態なので8才までは人数として数えないということらしい。


実際、同教会で過ごしていた者たちでも数年前までは8才を迎える子ども達はおおよそ6割程度であり、葬式に立ち会ったことは片手で数えてもまだ足りないくらいであった。

しかしここ2年ほどは、僕が先生にお世話になり始めたことで先生からのお土産でかなり食料や物品が渡されることが増えたのでそのお陰もあってのことか、ここ2年で葬式があがったことはない。


『住民登録』は8才を迎えた子どもたちは強制参加であり、なぜなら登録されることにより税の徴収対象者となるためだった。

またこの登録の際に使用される魔道具を使用した際にとある事が起き、そこで初めて自分の得意な『魔法属性』がわかるということであった。


「魔道具を使って登録するんだから、お前のことだ、ワクワクして眠れません!とか言うのかと思っていたが随分と面倒くさそうだな。」


そう意外そうな顔で先生が聞いてくるがそれは当然である。


「だって僕、ブランですもの。反応なんて無く、ただ徴税対象として登録されるだけですよ?それの何が面白いっていうんですか?」


「ああ、そういうことか。」と先生は納得していた。


ブラン、つまり魔法適性が全く無く、どの魔法も使えない僕にとってみれば税だけ搾り取られる対象になるという非常に腹立たしい儀式でしかなかった。


「確か、この村で登録は出来ないんだよな?」


ここでの住民登録を見たことがなかったらしい先生は確認する。


「はい、隣の少し大きめな村に近隣のいくつかの村の対象者が集まって、一斉に行うらしいですよ。なのでその期間お手数ですがお休みをいただきますね。」


そう言うと先生は短く「了解した。」と言ってくれた。


住民登録等の確認が終わればいつものトレーニング再開である。


格闘術の基礎についてはしばらくは立ち方や、握り方、振り方を体幹と重心を考えながら行うということが課題となった。

欲を言えば自主トレーニングをしたいとも考えていたがそれは先生が一切許してくれなかった。


「下手な癖が付くとそれを治すのにとんでもなく時間がかかる。だからだめだ。」


とのことで納得はできる理由だったので我慢することにした。


あっという間に時間が過ぎ、『8才の誕生節』と『住民登録』の日の前日となる。


教会で今回の誕生節を迎えたのは僕とリリーの二人だけである。


実は以前からシスターに相談しており何かリリーにプレゼント出来ないものかと考えていた。


そこでシスターから提案されたのは色糸を使って結った細い腕飾りはどうかと勧められていた。

簡単にできるうえに形に残るのでプレゼントに良いのではないかと言われていたので、作り方だけを教えてもらい、先生の家で自由時間に少しずつ作っていた。


「お前、本当に器用だな。そんなもんまで作れるなんてな。」


作っている際、先生は感心したように覗いてきた。


「まあ、この程度でしたら全く問題ないですよ。教会での仕事でも似たようなものは多かったですし。」


そう言いながら、リリーが好きな白や赤を中心とした色糸を使い、腕輪を用意していた。


教会へ出発する前、先生がまた珍しい表情をしていたので何かあったんですか?と聞く。


「これは俺からの8才になるお前への祝だ。取っておけ。」


そう言いながら1本の短剣をプレゼントしてくれた。


「うわぁ!!!信じられない!良いんですか!?」


「ああ、新品でなくて悪いが、それは以前冒険者時代に好んで使っていた短剣の内の一本だ。ここらじゃ手に入らない上物だぞ?」


そう言われ、下手な新品よりも先生が冒険者時代に愛用していたという所が非常に気に入り大切にすることを約束する。


「ありがとうございます!!」


「ああ、だが今日は置いていけ。祝の日に刃物だなんて物騒なもの必要ねえだろ。」


「ええー!?」と不満を漏らしてみるがデコピンが飛んできそうだったので即、自室に大事に起きに行った。


教会に着くなり皆が暖かくお祝いの言葉を口々に迎え入れてくれる。


「ニクス!お誕生節おめでとう!」


そう言ってリリーがお祝いしてくれる。


「リリーも。お誕生節おめでとう。二人で8才になれて良かったね。」


そう返すとシスターからも祝いの言葉がある。


「ニクス、リリー。本当に8才のお誕生節おめでとう。二人は私達の大事な宝物です。これからも健やかに育ってくださいね。」


そう言われ、リリーと声を揃え「はい!」と答える。


「アッシェさん、ニクスのこと本当に感謝しています。ありがとうございます。」


先生がシスターから言われると少し照れている様子であった。


「いえ、これからも、むしろこれまで以上に絞っていくつもりなんで。あ、それとこれ、誕生節祝ってことで皆で食ってください。」


そう言うと、いつも以上に一際大きい袋でお土産を渡された。


「ええ!?こんなにですか?」


さすがのシスターも驚いた様子であった。


「本当にいつもいつも・・・。こうして子どもたちがここ数年一人も書けること無く過ごせているのはアッシェさんのお陰です。」


シスターがそう言い頭を下げると、教会の子どもたちもアッシェに向きながら「ありがとうございます!」と一斉に頭を下げた。


「よ、よしてください!」


耳まで真っ赤な先生を見るのは初めてかもしれない。


折角なので今日もまた、先生から貰ったお土産を使って何か誕生節らしい特別な料理を作ろうと言うことになり僕とシスター、そしてしっかりとこの2年で腕を上げお手伝い枠を卒業したリリーと厨房へ向かうことになる。


「今日はそば粉をメインに貰った野菜とお肉等使って包み焼きでも作りませんか?」


そう、僕が提案すると「それは良いですね。」とシスターもリリーも賛成してくれる。


決まれば早い。三人でそば粉、塩、水を混ぜ生地を作った後、シスターはそれを薄くフライパンで大量に焼き、僕は卵や肉類を包みやすい大きさに切ったものを味付けしながら大量に焼く。

リリーは野菜をメインに処理をしながら生で食べるものと火を通して食べるもので処理をしていく。


そうして豪華な食卓を皆で囲むことになる。


「「「おいしー!!」」」


今回も大変好評だったようで満足である。

先生もいつも以上に食が進んでいたように見えたので喜んでくれていたんだとは思う。


日が暮れ、夜になってからリリーと二人で話をする機会があった。


「リリー本当に料理上手になったね?」と若干笑みを浮かべながら言うと「当然よ!」と自信たっぷりに返してくる。


シスターから聞いた話によると今では勉強もかなり進み、村の外の仕事よりも教会でシスターの手伝いを中心にしているそうだ。


「私は大人になったらシスターみたいな人になりたいの。」


決意を固めたようなリリーの表情はとても凛々しく、また子どもながらに美しいと思えるほどだった。


「そっか、僕も頑張らなきゃね。あ、そうだ。これリリーにお誕生節のプレゼント。」


そう言い、リリーへのお誕生節のプレゼントとして作ってきた白と赤を基調とした色糸の細い腕飾りを渡すと、リリーはすこぶる驚いた様子であった。


なんとリリーも同じ色糸の細い腕飾りを用意していたようで、こちらは僕の髪色と目の色に合わせ、黒と黄の色糸で作られたものだった。


それを見てお互い顔を合わせ笑う。


「ふふふ。シスターに言われたわね?」


「ははは、シスターにはしてやられたね!」


二人でそんな事を言いながらお互いに交換しあい、左手首に巻き付けるのであった。

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