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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第一章~少年編~(全47話)

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【第17話】ニ年

「ニクスはアッシェさんにどんなことを習ってたの?」


先生が帰った後、やるべき雑務を終えあっと言う間に夕食の時間になり皆と会話をしながら食事をしていた。


夕飯は昼ほど豪華ではないが、それでも先生から貰った材料で傷みが早いものから消費しようということで献立が決まる。


「そ・・・、それは・・・。」


思い出される地獄の行進に思わず言葉が詰まる。


「どうしたの?大丈夫?」


自然とリリーは僕の心配をしてくれるが僕は「大丈夫、ありがとう。」といつものように返す。


「ここでは体験できない、想像もできないことをやってるよ・・・。」


そう言葉を濁し、思い出さないようにした。


「リリー達はなにか変わったことはあるの?」


そう話を振ると、待ってましたと言わんばかりにリリーが一番に手を上げ勉強の成果を自慢する。


「本が少し読めるようになったし、字も少しずつ書けるようになったよ!」


リリーも僕に負けじとシスターに時間を見つけては勉強を教えてもらっている様子であった。


「リリーだけじゃないぞ!俺達だって最近は頑張ってるんだ!」


そう言い出したのはいつも「ブラン」といじめてきていたアレクとカッツェ、それに他数名の同教会の子どもたちである。

どうやら僕が訓練に出てからというもの、対抗心からか一大勉強ブームが起きているらしい。


「読み書き算術が出来れば色々な将来が考えられますからね。嬉しい限りです。」

シスターは満面の笑みを浮かべている。


基本的にこの教会で育った孤児の扱いというのは教会があるこの村の村人という扱いにはなるが、やはり孤児というだけで扱いや待遇は決して良いとは言えない。

大抵は幼少期より主に農家の手伝いをさせられ、そこで仕事を覚え成人後は正式に農家の手伝いになるのがお決まりのコースである。


無謀とも言える野心から教会を飛び出し冒険者になるものも若干名いたらしいが、その名は音にも風にも二度と聞こえてくることはなかった。つまりはそういうことなんだろう。


当然育ての親となっているシスターはそんな現状を憂い、教師だったことから子どもへの教育、特に読み書き算術に力を入れてはいたが、興味を引く子どもは今までほぼ僕以外いなかった。


読み書き算術が出来れば農家の手伝いだけではなくそれこそ他の職業への道も開けるし、仮に農家の手伝いとして入ったとしてもそこで今までとは扱いが明確に差が出ることは容易に想像できた。


そのため、この一大勉強ブームはシスターからすれば夢のような光景だと考えられた。


皆での団らんを久しぶりに味わい、次の日はほぼ丸一日シスターと教会のお手伝いで消え、あっという間に先生の家に帰る日が来る。


リリーがこの前のようにくっついて離れなくなるかと想像していたが、一切そんなことはなかった。


「私はニクスのおねえちゃんだもの!次会う時は更に勉強してるんだから!」


そう言いながら胸を張っている。


「ははは・・・。」と笑っていると「お前は人気者だな。」と先生がからかって来る。


「いってきます。」


「お預かりします。」


そう僕と先生が声を掛け、再び教会から送り出される。


帰りの荷車は行きとは違う道具が入っていたが、量はそんなに多くはない。

どうやら狩りで得たものをこちらで様々な日用品などと交換をしたようだ。


「お前、泣き言の一つも言わず付いてきたが大丈夫なのか?」


先生が何を聞きたいのかは良くわからなかったが「はい?大丈夫ですよ?」と返す。


先生は「そうか。」と短く答えどこか嬉しそうな雰囲気を出していた。わからぬ。


その後帰宅してからは、いつもの様に地獄の行進と新しい食事メニューの研究、そして教会への一時帰宅を繰り返し2年の歳月が経っていた。


---2年後---


僕は8才になっていた。


「ここに来てからもう2年か。大変だったがあっという間だったなあ。」


染み染み思っていると先生から「随分余裕ができたじゃねえか?」と睨まれる。


「お前、最初はものの数分でへばってたくせに今じゃトレーニング中にそんな会話を楽しむぐらい余裕があるくらいなのか?」


先生は怒っているような呆れたような複雑な表情をしている。


「物事に慣れるのは得意なんで!」そう元気よく答える。これが良くなかった。


「ほお?」と静かに先生が言うのを聞き、やばいと思ったが後の祭りだった。


「では今後、特訓メニューを更に改変しよう。」


その言葉に僕の頭は真っ白になる。


「立て」


そう端的に先生に言われ、シャキッと背筋を伸ばし直立不動になる。


「ふむ・・・。」と先生は僕の身体を見つめながら考えている様子であった。


「な、なんですか。そんな見つめられると恥ずかしいのですが?」


そんな風に少し照れていると「目をつぶって片足立ち。」と短く言われ、渋々その体制になる。


直後、「どんっ」っと右肩を押された。


「ん?」っと思って目を開け先生を見ると先生は顎髭を撫でながら若干嬉しそうな笑みを浮かべている。


「ほお、これも難なくこなせる様になったか。」


そう言われ「ハッ」っと思い出す。そう、訓練初日の体幹と重心の訓練をした時の出来事で、当時は軽く押されただけだったが、思い切り尻もちを付き、お尻を強打していた。


「8才とは思えないような良い身体付きになったじゃねえか。」


先生に言われ、そういえば最近服のサイズがかなり大きくなったことや筋肉のラインが明らかに昔とは違うことを思い出す。

訓練内容も先生のように汗一つかかず、ということは無理だが、それでも若干の会話をしながらでもこなせる程度のルーティーンワークになっていた。


「そろそろ本気で次の段階に入るか。」

先生は目を伏せながら一人で考えている。


「良し、明日からは今までの工程に加えて基礎格闘術の訓練を開始するか。」


そう言われたことで僕は全身の鳥肌が一気に立つのを感じる。


「はい!お願いします!」


そうして今後は今までの基礎トレーニングに加え格闘術を教わることとなる。

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