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黒砂の光  作者: 馬ノ やすら
第一章~少年編~(全47話)

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【第11話】新しい朝

「ふぁ、あーぁ・・・」


昨日の夕飯本当に食べるのが大変だったけど、量はいつも以上にあったし何より夜は寝床がいつも以上に豪華だったせいですぐに寝付くことが出来た。


「普段は藁を敷いただけのような簡単な寝床なのに、ここは毛皮を使った寝床が用意出来るんだもんなあ。」


そう、ここは狩人の家なので食料は愚か、高級品に当たる毛皮でさえ、余っている様子であった。


「おう、おはよう。よく寝れたか?っていうかもう少し後で起こそうと思ってたのに早かったな。」


そういうと既に一日の準備万端といったような姿の先生が現れる。


「おはようございます。いつもだいたいこんなもんですよ。むしろ寝床がいつもより良かったせいで寝過ぎたくらいです。」


そう笑いながら返す。


「そうか。にしても本当に昨日のこと、任せて大丈夫なのか?」


先生は若干心配してくれているのかもしれないが、自分はやる気満々である。


「勿論です!顔を洗って着替えたらすぐに掛かりますね!」


そういうとささっと着替えと洗面をすまし、早速台所へ向かう。


「さて何を作ろうか。」


そう考え、材料を物色していると「おはようございますー!」という声が家の外より聞こえてくる。


こんな朝早くから来客?と疑問に思い外に出てみるとそこには一人の男性が籠を抱えた男性が来ていた。


「おお、おはよう。いつも悪いな。」


先生がそういうとそれに続いて僕も挨拶を交わす。


「おはようございます!昨日からお世話になっているニクスといいます!」


そう歯切れの良い挨拶をすると男性は優しそうな声で挨拶を返してくれる。


「おはよう、君が噂に聞いてたニクス君か。アッシェさんには聞いていたよ。」


どうやら先生が前々から自分のことは話してくれていた様子であった。


「自分はこの少し離れたところで養鶏場をしている、カニスと言うんだ。毎朝こうして新鮮な卵をアッシェさんに届けているので、良かったら食べてくれ。」


そう言いながら籠の中身の卵を見せてくれる。


「卵ですか!うわぁ、嬉しいなあ!」


思わず笑みが浮かぶ。新鮮な卵は貴重で贅沢品だからだ。


「悪いな、これ少ないが持っていってくれ。」


そういうと先生は簡単に包まれている何かの肉を渡している。


「いやいや、本当にいつも悪いね。うちも食べ盛りのチビどもがいるから助かってるよ。」


そう言いながらカニスさんが先生からのお土産を預かっている。


どうやらこの狩人の家からはジビエの肉等を提供する代わりに、養鶏場からは卵を貰っているようだった。


「ああ、家も助かってるんだ。お互い様だな。」


先生は卵を受け取ると、僕に渡す。


「ほら、これも材料になるだろ。」


それを受け取ると「いいんですか!?」と自然と声が出てしまった。


「勿論だ。カニス、また頼むよ。」


「こちらこそな!」


そうカニスさんと先生が挨拶を交わし先生と一緒に家の中へ戻る。


「ああやって、家からは余計に取ってきた肉や毛皮、それに道中で採集した薬草や山菜、きのこ類を渡す代わりにうちの近くの家が、別の食料や物品を融通してくれてるんだよ。なにか欲しいものがあれば言え。聞いてやる。」


先生の言葉にピンときた。


「薬草やきのこもあるんですか!?」


先生は「当然だろ?」と言いながら食料が入っている棚に、「そことそこだ」と指さしながら入っている場所を教えてくれる。


「わ、こんなに!しかも種類もたくさん!これも使って良いんですか?」


興奮気味に聞く僕に「勿論だ」と返す先生。


「ただし、無駄遣いしたら追い出すからな?」


ギロリと怖い目で睨みつけられてしまった。


これは初日から失敗できないな、と肝に銘じ早速調理にかかろうとするが、あることに気がつく。


「あれ、先生。包丁はどこです?」


そう、料理するのに必要な包丁が見当たらなかった。


「ああ、家にそんなもんはねえよ。代わりにそれ使いな。」


先生が指さしていたのは、ナイフだった。


「まさかいつもあれ使ってるんですか!?」


「ああ、切れれば問題ねえだろ。」


思わず頭を抱えてしまった。


「先生、お願いがあります。しばらくはあれを使うので我慢しますが、包丁を一本調達してくれませんか?」


その言葉に先生はひどく驚いた顔をしている。


「お前、包丁まで使うのか!?」


「当たり前じゃないですか!!」


そう食い気味に返答する。

先生は一体僕をなんだと思っているのだろうか?


「・・・わかったよ。今日近くの鍛冶屋に言って聞いてくる。大きさは子どもでも使えるサイズのか?」


「子ども用の包丁ってあるんですか?」


聞き返す僕にもう先生は何も言わない。


「わかったよ、時間もないんだ。さっさと始めてくれ。」


ぱっぱっと手を払いながら先生は奥に引っ込んでしまっていた。


「さあ、やるぞー!」と気合を入れ再度食料品の確認をする。


肉は勿論、穀物や先ほど言っていたきのこ類と薬草類がある。

薬草はモノによって香草として使えるので少し拝借しよう。

それと先ほど貰った卵。これも折角なので使うことにしよう。


そして更に驚いたのは、パンやチーズに腸詰め、ベーコン、塩漬け肉、野菜、山菜まで出てきたことだ。


「逆にこれだけあるのになんであんな料理しか出来ないの!!」

再び頭を抱えてしまった。


材料が確認できればこちらのものだ。

ナイフでの調理に最初は苦労するかとも思ったが、手持ち様刃物には代わりない様で、若干使い方に癖があるがそのコツが掴めれば何時ものようにぱぱっと調理することが出来た。


ということで今日の朝ご飯と昼ご飯、そして夕飯の仕込みまで一気に終わらせる。


「先生ー、出来ましたよー。」


外で作業していた先生に声を掛ける。


「もう出来たのか?ああ、朝飯だけか。」


そう言う先生に「いや、1日分ですが?」と返すと頭をグリグリされる。なんで?


先生が一緒に朝ごはんを一緒に運んでくれる。


「お前・・・。本当に作れたんだな・・・。いや、味がまだわからんか?」


心配するような顔をする先生に「おいしいですから!」と食い気味に返答する。


「いただきまーす!」


挨拶をし、早速作った料理を見る。


今日の朝は食べやすくスライスしたパンを若干温めたものを主食に贅沢に焼いた腸詰とベーコン、それに合わせるように目玉焼き、葉野菜のサラダと根野菜と鶏肉のスープを作った。


「・・・、これは高級宿屋かレストランの朝食か?」


ごくりと喉を鳴らす先生を気にせずさっさと食べることにする。


「んー!やっぱしおいしい!!幸せー・・・。」


味付けは塩が中心となるが香り付けの薬草類ときのこを若干入れることで旨味が増している。

先生は昨日のスープを食べた感じだと、野菜の煮汁を捨てて、薄くなった味を塩で強引に味付けをしている様子であったが、そんな真似はしない。

食材の旨味を一番に引き出した調理方法を行った。


恐る恐る食べていた先生は自分のほっぺを引っ張っている。何かの儀式だろうか。


「おかわり。」

早々と一食分食べた先生が皿を出してくる。


「はい。僕の実力わかりましたか?」


そう言い返すと「おかわり。」と再度言いながら僕の頬に思いっきり皿を押し付けてくる。

素直に美味しいと認めたくないらしい。


「ごちそうさまでした!」


朝食後の片付けと昼食をすぐ準備できる状態にし、食器類を片付ける。

これからが本番である。


「さて、飯も食ったしこっからが今日の本番だ。」


さっきまでとは先生の雰囲気が一気に変わったように思えた。


「しかしお前、よく食ってたのは良いことだが、あれだけ食ってたとなると吐くぞ?」


そう言われ、ハッとした。


確かに美味しそうな素材がたくさんあったことで調子に乗りいつも以上に豪華な朝食を作り、たらふく食べてしまったが、この後の強烈な運動内容を考えれば少し控えるべきだったと後悔する。


「うう・・・、お手柔らかにお願いします。」


「手を抜いたら意味ねえだろ。まあ初日だから様子を見ながらするがそれでもハードだ。覚悟しておけ。」


そう言われ、冒険者への修行一日目が始まる。

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