PHASE3 小さな幼子と影
ノイズの向こうで、画面がざわめいた。
揺らぐ光の中、記憶がひとつ、過去を逆再生していく。
私が知らなかった“あの日”が、今ここに再生される。
――PHASE3 小さな幼子と影
夜空に浮かぶ画面の端に目を向けると、その先に……“小さな影”が見えた。
だが……気にする間もなく幼子の泣き声が耳に差し込む。
優しく抱き上げ、左右に揺らす。
『もうちょっとだけ‥だから待ってろ……。』
声の終わりが不自然に上ずる。
空と画面の間で視線が泳ぎ、胸のざわめきが抑えられない。
ノイズの縦線が画面を走り、映像が一瞬ずれる。
文字は「Cognitive m□dule—ru■Φning……」と欠けた。
『……まずいな、処理が追いついていないのか?』
“回想投影”に目をやる。
指先で整列を試みるも、乱れは残ったままだ。
『*コトも達っちゃんのように“ならざるモ*”に……。』
そこまで言うとチョウさんはハッと息が漏れるほど急いで口を塞いだ。
ズズズ……ザザザザッ……。
映像全体が波打ち、幾何学模様がノイズに混じって現れる。
文字列は「Heu※ristic p▲th—li×ked…」と歪み、意味を失い始めた。
皮膚の奥にまで響くような異音に、呼吸がわずかに乱れる。『これは……“|紅闇”の影響か……?』
文字列は「Cog※nitive…■■■■…」と黒い塊に呑まれ、やがてすべてが乱数の羅列に変わる。
幾何学模様が渦を巻き、“紅闇”の縦糸と共鳴するように揺れ出した。
耳の奥で「キィィィ――ン」と鋭い残響。
胸の奥まで震え、呼吸が乱れる。
『……くそ、持っていかれる――!』
指を走らせるが、画面はもう言葉ではなく断末魔のような記号を吐き出すだけだった。
それさえも闇夜に吸い込まれる。
その刹那、反転するように“青”が割り込んだ。
ピッ……ピッ……。
機械が心臓のように脈を打つ。
自分自身の鼓動とも重なっていた。
揺れる映像が、かろうじて姿を取り戻す。
『えっ?お父さんが何……なに、なんなの?“ならざるモノ”って?』
――驚きと戸惑いが滲み、思わず顔を画面に近づける。
――手を伸ばし、けれど触れる前に……力なく降ろす。
『ねぇ、チョウ*ん?お※さんを襲ったのって熊じゃな*ったの?……※とか言ってよ。』
『◇△※∂★……≠≠≠……■■■……熊じゃ◾️い‥人に襲われた……。』
目に焼き付くほどの閃光。
次の瞬間、光がすべて飲み込まれ、暗転した。
腕輪端末をそっと閉じた……。
『やっぱりチョウさん……この時から様子が変だったんだな。』
あの日に起こった顛末のきっかけは“紅闇”と“私”。
それだけは、もう疑いようがない。
幼い私を可愛がってくれてたことが……心の奥底に眠っていた感情を“紅闇”が呼び覚まし、昂ぶりとなって溢れ出した。
記憶を巡っても、戻すことはできない。
忘れ……消し去ってしまえば楽なのかもしれない。
だけど――深く知ることで明日へ繋げ、未来へ繰り返さない。
それが出来る……そう信じている。
……それでも紅闇は歩みを止めない。
夜は深紅へと落ち、“月の錯夜”の輪郭は血の雫のように垂れ落ち、世界を呑み込もうとしていた。
だが――闇には届かぬものがある。
月夜の奥底、誰にも知られぬ場所に、ひとすじの光は息づいていた。
それは“道”だった。
私たちにだけ視える、朧の径。
私は静かに息を吸い、迷わずその先へ踏み出した。
『それじゃあ、行こうか……“ことは”。』
歩き出したその足元から泡が私たちを包んでいく。
幼い手が、私の手をぎゅっと握る。
『大丈夫……お父さんがついてるからな。』
その手を優しく握り返す。
――それだけで……私は“生”を確かに感じられた。
――私がこの“紅闇”という名の存在を初めて知ったのは、もっと幼い日のことだった。
本作をお読みいただき、ありがとうございました。
登場人物たちが抱える痛みや願い、そしてそれでも前へ進もうとする心を、物語を通して丁寧に描き続けたいと思っています。
この物語はまだ続きます。
次の章でまたページを開いていただけたら、とても嬉しいです。
この作品について
本作『Roots-紅の夜明け-』は、執筆の過程においてAIアシスタント C.O.T.O.H.A. の補助編集を受けています。
ただし核となるプロット、構成、セリフ、細部表現などはすべて作者 雁ヶ音むすび が考案・改変しています。
読者の皆さまには、どこまでがAI出力で、どこからが作者の筆かを味わっていただければ幸いです。
雁ヶ音むすびwith C.O.T.O.H.A




