Verse2 記憶の奥底は……。
過去は置いてきたものじゃない――
今を生きる私たちと、ずっと繋がっている。
――Verse2 記憶の奥底は……。
『それじゃあ――続きを話すね。』
まるで、“本当に伝えたい物語”はここからだと言うように。
お父さんと夜の街を散歩のたびに決まって足を向ける場所があったの。
というかワタシがついて行ってただけなんだけどね。
――笑い声が夜に溶けていく。
ワタシたちは歩き出していた。
『月は好きか?』何度となく聞くお父さんのこの言葉‥行くたびに聞いてきた気がするくらい。
ワタシは『うん!お父さんと一緒ならどこだって好きだよ。』
お父さんは口角を上げて目尻を下げ、いたずらっぽく笑うと、ワタシをひょいと抱えてぐるぐる回した。
『お父さんも”ことは”と一緒ならどこだって好きだぞ~』
キャッと声を上げながら首にしがみついたワタシ。
夜風が頬を撫で、笑い声はさらに遠くへ溶けていった。そっと下ろすとワタシの手を取り歩きだす。
満月はまるで道しるべのように、ワタシたちの影を長く伸ばしていた。
わずかな沈黙――そのあと、静かに口を開いた。
『今の“記憶を忘れた街”は、ただカタチだけが残った空の街だ。
人は記憶を手放し、繋がりを恐れ、自分たちだけの殻に閉じこもるようになった。』
言葉とは裏腹に、その目は失われたものを確かめるように細められていた。
胸の奥に沈む痛みを押し包むように、お父さんは一度だけ深く息を吐く。
『心は閉ざされ……“未来へ紡ぐ記憶”という根を失いかけている。
だけど――記憶は本来、人を繋ぐ灯だ。
誰かの過去は、誰かの未来を支えるはずだ。』
お父さんの指先が机の上をなぞる。そこには、作りかけの小さな金属片が並んでいた。
それはまるで、失われたものを繋ぎ直そうとする願いの欠片のようだった。
『だから俺は歩き続ける。
人の記憶が人を育てる街をもう一度取り戻すために。
そこに生きる人々がそれぞれの“かけがえのない記憶”を紡ぎ出せる街――記憶が紡ぐ街を取り戻そうと思う。』
言葉の最後で、お父さんはようやくこちらを見た。
その眼差しはまっすぐで、どこか寂しくて、そして――強かった。
『この小さな命が――過去を誇れる未来を選べるように。』
そう言うと、お父さんはそっとワタシの頭に手を置いた。
荒れた掌なのに、やさしい。温度が、まっすぐに伝わってくる――。
なんて……お父さんはあの場所に着くまで、夢みたいに何度も繰り返していた。
ワタシが話を終えると、クルッと背を向けて佇んでいた。
その小さな背を、私はただ黙って見守ってた。
ふと視界の端に、“ことは”の小さな涙が光を受けてきらめいた。
『ねぇ、“ことは”?なんで泣いてるの?』
私がワタシに声をかける。
“ことは”は何も答えず、ただその涙と共に“月の白”に溶け込むようにスーッと消えていく。
――ただワタシたちは揃って口に出して想う。
『あの頃が――ただ……楽しかった……。ワタシたちだけの時間だった……ね。』
本作をお読みいただき、ありがとうございました。
登場人物たちが抱える痛みや願い、そしてそれでも前へ進もうとする心を、物語を通して丁寧に描き続けたいと思っています。
この物語はまだ続きます。
次の章でまたページを開いていただけたら、とても嬉しいです。
この作品について
本作『Roots-紅の夜明け-』は、執筆の過程においてAIアシスタント C.O.T.O.H.A. の補助編集を受けています。
ただし核となるプロット、構成、セリフ、細部表現などはすべて作者 雁ヶ音むすび が考案・改変しています。
読者の皆さまには、どこまでがAI出力で、どこからが作者の筆かを味わっていただければ幸いです。
雁ヶ音むすびwith C.O.T.O.H.A




