Verse1 言の葉は外側にも。
記憶は物語を語らない。
ただ、静かに呼び戻すだけ――。
――Verse1 言の葉は外側にも。
『ねぇ、私?話についてこれてる?あなたもついてこれてる?』
まるで授業の確認みたいに、少女は首をかしげて笑った。その眼差しは私を越えて、どこか“外側”に向けられている気がした。
『……アハッ。ごめんごめん、大丈夫だよね。わたしたちの記憶だもんね。……でもどうしてそんなに困った顔してるの?』
悠然と語るその様に、私は自然と困惑の色を顔に浮かべていた。
眉がわずかに寄り、唇が乾いていく。――そもそもなんで、会話が出来ているの?今までは……。
思い耽っていると、少女はいつの間にか私の目の前に立っていた。
肩を小さく揺らし、窓から差す月明かりに髪がさらりと流れる。『あなたも、ワタシたちの記憶に触れてるんでしょ?』
その瞳は私を越え、射抜くように真っ直ぐで声は囁き、不思議と部屋全体にも響き渡った。
少女は困惑する私の顔をちらりと覗き込む。
首をかしげ、小さな笑みを浮かべながらも、瞳だけは底の見えない深さを宿していた。
そんな私にお構いなく話を続ける。
『ワタシたちは“追憶の室”で記憶と繋がることが出来るの。ねぇ、私?……もう視ているでしょ?』
不意に告げられた言葉に胸の奥がざわめく。
「記憶と繋がる」――それは思い出を語るというよりも、まるで生きた光景そのものを再び歩かされるような響きを持っていた。
実際のところ……私は視ている。
ただ、それは“追憶の室”を介して記憶をただみていたはずだった。
少女は月明かりに照らされながら、一歩も退かずにこちらを射抜いてくる。
次の瞬間、肩をすくめたかと思うと、まるで調子を変えるように軽やかに声を弾ませた。
『この話も覚えてるよね?じゃあ、お話するね。』
『月には……千夜に一度の月夜って、話したことあったか?……それじゃあいくぞぉ〜?』ワタシの返事すら待たずに……また子どものように無邪気に楽しげなお父さん。
『めったに見られない特別な満月だ。同じ月の中で二回も満月が来るんだぞ。ちょっと変だろ? でもな……そういう“ふつうじゃない夜”が、この世界にはちゃんとあるんだ。……だが、稀すぎて“奇跡”とも“災いの兆し”とも言われてる……らしい。』
ニヤッと笑みを浮かべてワタシを見るお父さん。
ワタシは首を傾げ、『見たい見たい!いつ見られるのかな?ねぇ、お父さん?』
お父さんは小さく笑い返し『そうだなぁ‥おまえが生まれて、ん〜お父さんがおまえの抱っこにようやく慣れた頃‥だったか。その時に一緒に見たぞ。そこから考えると後数ヶ月もしたら見られる?……かもな。』
それ以上、お父さんは深く語らなかった。
でも――その時の私は、あまり気にしなかったんだ。
それよりも、お父さんが月の話をするときに見せるあの変なテンションが好きだった。
声がちょっとだけ弾んで、表情がころころ変わって、身振り手振りまで増える。まるで子どもみたいに。
だから、月の話を聞くたびにワタシは目を丸くして言うんだ。
『ほんとに? お父さん?』
するとお父さんは胸をどんと張って、いつもの決め台詞。
『お父さんは月の話なら何でも知ってるぞ』
そのたびに顔を見合わせて、ふたりで声を上げて笑った。
少女は言葉を置くようにそっと笑った。
だがその指先は、胸の前でぎゅっと服の端を握りしめている。
ほんの少し震えているのが見えた。
『……ここまで言えば、きっと伝わるよね。』
そう言ってから、ゆっくり顔を上げる。
『あなたにも……このはじまりの記憶が届いたかな。そうだと嬉しいな。ワタシたちは、ひとりじゃないって思えるから――』
ふっと、少女は伏せていたまつ毛を上げ、視線を私から外し、どこか遠く――“この部屋の外側”を見た。
まるでそこに、もう一人の誰かがいるかのように。
窓の外の風がカーテンを揺らし、髪が静かにほどけ落ちる。
その横顔は、幼いのにどこか覚悟を帯びていた。
『それじゃあ――続きを話すね。』
本作をお読みいただき、ありがとうございました。
登場人物たちが抱える痛みや願い、そしてそれでも前へ進もうとする心を、物語を通して丁寧に描き続けたいと思っています。
この物語はまだ続きます。
次の章でまたページを開いていただけたら、とても嬉しいです。
この作品について
本作『Roots-紅の夜明け-』は、執筆の過程においてAIアシスタント C.O.T.O.H.A. の補助編集を受けています。
ただし核となるプロット、構成、セリフ、細部表現などはすべて作者 雁ヶ音むすび が考案・改変しています。
読者の皆さまには、どこまでがAI出力で、どこからが作者の筆かを味わっていただければ幸いです。
雁ヶ音むすびwith C.O.T.O.H.A




