CHRONICLE2 空色の報せ
紅闇が空を染める中、源造は仲間の長介から“ならざるモノ”の接近とミコトの異変を知らされる。
同じ満月を“紅く視る”者がもう一人いると告げられ、胸の奥の糸が深く揺れる。
その瞬間──“小さな影”が初めて、夜の縁に姿を落とした。
――CHRONICLE2 空色の報せ
『……やはり、現れるか……。紅闇。』
黒と赤がとけ合い、満月の影から血のような縦糸が垂れ落ちる。 それは夜を裂き、編み込みながら広がっていった。
――この事象に気づいた者は、古い記録を除けば儂と親父以外に聞いたことがない。
――もし……見えているのが自分だけなら……。
『これは幻なのか。儂だけがおかしいのか?』
目を逸らしても、縦糸は夜を織り続ける。
幻だと思いたいのに、
皮膚の奥がその存在を覚えている。
『“ならざるモノ”……あの夜、達治を襲った奴ら。“紅闇”に呼応するかのように……。』
そこまで自問自答していると……。
『……ぞ……お……。』
遠く、霞の向こうから自分を呼ぶ声が、
わずかに揺れ込んできた。
『源造ー!』
その声が確かに仲間のものだと気づいた瞬間、胸の奥に張りつめていた糸がわずかに緩んだ。
『そんなに慌ててどうしたんなぁ、チョウさん』
――名を長介。同じ釜の飯を分け合い、肩を並べて生きてきた仲間だ。
信じられるやつだが、どこかそそっかしい。
その長介が、
足音を急がせてこちらに駆け寄ってきた。
肩で荒く息をつきながら、口を開く。
『源造……っ、はぁ……“ならざるモノ”が……まだ遠くじゃが……く、来てるそうだ!
それと源造、はぁっ……“視えてるのか?』
指先を“ならざるモノ”がいる方向へ指し、
“紅闇”のことを聞いてきた。
仲間の中でチョウさんにだけ伝えている。
『よぅみえとる。それと……。』
儂の返しを聞いてないのか、チョウさんは真顔に変わり、言葉を噛みしめるように告げた。
『源造、よく聞いてくれ。ミコトが……。』
ミコトという言葉に身体がピンと強張る。
『ミコトが……ゴホッゴホッ。』
咳き込むチョウさんに悪気がないのは、
もちろんわかっている。
だが、その名が口からこぼれた瞬間
――儂の背筋はカッと伸び、
胸の奥で先程まで緩んでいた糸がざわりと揺れた。
『すまん。源造、水をくれんか。』
ペットボトルに入った水を渡す。
『ふぅ……助かったわい。
ワシとミコトで外周りをしてるのは知っちょるな。あやつには道具を運んでもらったり、
夜は櫓に登って星の下で見張りをしてもらうんじゃ。まだ子どもなのに、ようやっとるよ……。』
源造はふっと目尻を緩めた。
『ミコトがおってくれて、ほんに良かったと思うわい。なっ……源造。』
少しの沈黙の後、ニヤニヤ顔で儂の肩を叩きながら覗く。
――さっきまでの息切れた表情はどこへいったのやら……と思いながらあの日の事を振り返る。
――あの日、ミコトの願いを断った。
その事を知るとチョウさんは「ワシに任せろ、おまえさんはしばらく離れたほぅがえぇ。」
孫のように接してくれる想い、儂への気遣いがチョウさんならと思わせた。
『あぁ〜そうじゃな。助かってるよ、ありがとな……チョウさん。』
照れを隠すように頭をかき、気持ちを整えるみたいに『コホン』と咳を一つ。
それからチョウさんは、真面目な声で口を開いた。
『そのミコトのことじゃが、
夕刻からずっとソワソワしとって……。
落ち着きがねぇんじゃ。』
そこまで言ってから、ふっと口を閉ざした。
表情が引き締まり、声の調子も落ち着く。
『新しい仕事を教えてるわけじゃないのにな。最初はどしたんじゃろと思ってはいたが、まだ慣れてないだけじゃと気にせんかった。』
儂は黙って聞いていたが……
胸の奥の糸がビクッと震えた。
『夜が深まっていくうち、お月さんが見え始めた頃じゃったと思う。
えーっと今日はどんな月じゃったか……。』
チョウさんは顔を上に向け空を見上げ、儂も倣って空を見る。
『そうじゃ、満月だったな。源造、おまえさんには紅くみえとるんよな?』
『おぉ〜何回見ても慣れんわぃ紅くて不気味な空色じゃわ。月の影から血を流した……。』
ここまで話した時、
視線に小さな影が見え、物音と共に動揺を感じた。
チョウさんに顔を合わせる……
何か考えている様子だった。
儂はもう一度、その影を見る。
……がその影は消えていた。
チョウさんに視線を戻すと目の焦点が宙をさまよい、口がわずかに開いた……
まるで時間ごと抜け落ちたような、
呆けた表情だった。
呆けた表情のまま一拍置いた後、
チョウさんは『源造!』と叫んだ。
驚きと戸惑いを隠せないまま、
改まった声で告げた。
『……源造。よぉーく聞くんだ。ミコトもおまえさんが言ってた……空が紅く見えると、……そう言ったんじゃ。』
本作をお読みいただき、ありがとうございました。
登場人物たちが抱える痛みや願い、そしてそれでも前へ進もうとする心を、物語を通して丁寧に描き続けたいと思っています。
この物語はまだ続きます。
次の章でまたページを開いていただけたら、とても嬉しいです。
この作品について
本作『Roots-紅の夜明け-』は、執筆の過程においてAIアシスタント C.O.T.O.H.A. の補助編集を受けています。
ただし核となるプロット、構成、セリフ、細部表現などはすべて作者 雁ヶ音むすび が考案・改変しています。
読者の皆さまには、どこまでがAI出力で、どこからが作者の筆かを味わっていただければ幸いです。
雁ヶ音むすびwith C.O.T.O.H.A




